雨と失った特殊能力
今日が雨だと知ったのは、駅に着いてからだった。
折りたたみではなく、大きな傘を持っている人と何人もすれ違う。
あぁ今日は雨だったのか。
どおりで髪型が決まらないと思った。
生まれつきの天然パーマは幼稚園生頃を境に目立たなくなった。
理由はよく分からないけれど、くるくるだった前髪がしゃんとまっすぐに伸びるようになり、母や美容師さんをひどく驚かせたらしい。
当時の記憶はあまりないが、写真を見る限り別人のようにくるくるの髪の私が写っているのをみると、子どものときにだけ持っていた特殊能力を失ってしまったような、そんな気分になる。
もうトトロには会えない、みたいな。
天然パーマとは呼べなくなった私の髪は、今もそれぞれが強い意志を持って生えているせいで、雨の日はとんでもないことになる。
ボリュームは普段の倍くらいになるし、毛先だってダンスでもしているのかというくらい好き放題はねている。
そうなるのを防ぐために長く伸ばしていたこともあったけれど、どうやら長さの問題ではないらしい。髪ってやつはなかなか厄介なのだ。
多分もうすぐ雨が降る。
髪が湿気をおびて膨らんでくるのを感じたので、今日は湿度も高めだ。
と思って湿度計をみたら70%になっていた。
ほらやっぱりね。
失ったと思った特殊能力をほんのり感じて、ちょっと嬉しい。
大丈夫。
大きな傘は持っていないけれど、折りたたみ傘なら持っている。
日傘だと思って買ったら、実はただの雨傘だったというオチのついた傘。
それでも雨から守ってくれるので、ありがたく使わせていただいている。
これ以上髪が膨らんできたら、分からないくらいに結んでしまおう。
そうすれば雨でもへっちゃらで、小さなストレスも感じずに済む。
だからきっと大丈夫。
そう思いながら改札を出た。
願わくば、今年の雨の時期は短いといいなぁ。
そのお気持ちだけで十分です…と言いたいところですが、ありがたく受け取らせていただいた暁にはnoteの記事に反映させられるような使い方をしたいと思います。