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母との対話〜処暑編

母、80歳。
母の風格は一言でいうと、静寂。
森に湧き出る深い湖のような透明感を
いつも全身から放っている。 
だが病気で生と死の狭間をさまよい、
恐れ、あきらめ、死への切望を体験し
それでも何度も生き返る母が
わたしには闇をそのまま抱く菩薩のようにみえる。



わたしの性格は一言でいうと、自由奔放。
若い頃は自由すぎて、
しらすしらずに人を傷つけていたように思う。
大好きな夫が逝ってから、
深い哀しみ、傷、数々の問題とむきあい、
原因と結果の法則が身についてからは
本来の自由奔放さと謙虚さがブレンドされた性格になりつつある。




これは
遠い地に住み、なかなか逢えない私と母の
ある処暑の日の対話である。




【母】
変わらない?直美ちゃん。



【直美】
展開はいろいろあるけどー、
現象的には直美は問題だらけ。



【母】
お互いさまね。
でも、もどれる場所があるからね。
バランスもとれてるんだと思うわよ。



【直美】
お母さんは、気持ちが揺らぐときってやっぱりある?



【母】
あるある!あるわよ。
死ぬほうが楽だなーって実際は思うよね。
生きるほうが大変。
生きるってことは、すごーーーく努力がいるなーと思うわよねー。



【直美】
どんな努力?



【母】
生きよう!と思うと自分の調整しなきゃいけないし。いろんなバランスとらなきゃいけないし。
現象にも惑わされるしね。
死んだらそういうことは一時的になくなるしね。
それぞれの魂の課題は、永遠だけど
死んだら一時的には解放されるしね。
でもそれぞれの課題からは逃げることはできないわ。



【直美】
現象って、いいこと悪いこと必ずあって
自分がどう反応するか、
人生ってそこがコツなのかなって
直美は思ってるんだけど。



【母】
そうねー。それもね、
自分でもう揺らがない、もう確立して動かない!って思ってても、辛いことが極まってくると
もういいわ……、あっちに逝けば解放されるかなってついなるわよね。



【直美】
お母さんは、たとえばどんな時に
解放されたいって思うの?



【母】
やっぱりね、人を通して辛いことがあると
しんどくなるわよね。
一生懸命、手放そう手放そうと思うんだけど
やっぱりつかんでしまう。
そうすると、もうどうでもいいやって気持ちになってしまうね。解放されたいけど、かえって生きたい!と思うと努力がいるわよね。
体操しなきゃだし、
じっとしてたら身体が動かなくなるし、
体重も気をつけなきゃいけないし、
前にくらべたら嘘のように良くなってるけど
あたりまえに歩けないし、
大変だなと思う。
しあわせって人にはわからないのよね。
人にはわからない。
あの人、しあわせそうだなーって思っても
その人からするとやっぱり問題抱えてる人いっぱいいるのよ。
あの人みたいにきれいで、なんにも問題ないってみえてても、他の面ですっごいつらいこと抱えている人もいる。その人じゃないとわからない。
皆、何かを抱えて生きてるのよ。
なんにもない人はいないと思うねー
本当にそれを卒業して、人のために動こうとするとそれはそれで努力しなきゃね。
とにかく生きるってことは、
大変なことなんだわって実感してる。



【直美】
家族がいて、お金もあって、
外からは羨ましい環境にみえてても
義務とか常識にとらわれて
重荷をかかえてる人もいるしね。
女性は、正しさを超えた愛を求めるから
いま寂しい女性がいっぱいいるんじゃないかな。
正しさなんてどうでもいいから、
とにかく愛して!
っていうのが女にはあるじゃない?



【母】
そうねー
男性は、愛したい!って気持ちが強いけど
女性は、愛されたい!っておもうのよね。
それがしあわせよね。



【直美】
人には、見えない困難があるよね。



【母】
女性自身が、なんでも善悪で判断すると
そういう男性をひきつけるの。
善悪の判断や、罪悪感でお互いに苦しむのは
確かね。そうすると人生をこころから楽しめないわねー



【直美】
それは、だれか特定な人達だけじゃなくて
直美達みーんなの潜在意識にためこまれてきたものだよね。
お母さんがもう楽になって、
死にたい、あっちにいきたいって思うのは
どんな時?



【母】
人とか、外が原因じゃないのよ。
人が原因でその人から逃げても、
もっと他のことで同じような状況を味わうから。
人じゃないのよね、結局。
自分自身が今いる場所で安らかな心境になる、
なってると思ってるんだけど、
現象はいろいろでてくるから
さとるどころか、こんなんだったんだわー
なんだったろうと思うこともあるしね。
執着しないで、いつも死んだ気持ちでいるわ。
いつでも死ねるって覚悟でいるからね。
もうこの頃はかえって楽よ。
生きようと思うからつらくなる。
死んていいんだわ、と思うとすごく楽なの。
いつでも死ぬ用意はある。
悪い意味じゃなくてね。
何でも手放して、らく。
でも実際はまだまだ生かしてもらってるからね。
感謝してる。
生きてるから、直美ちゃんとこうやって話もできるしね。



【直美】
お母さんとまた話せるなんて
しあわせーーー♡



【母】
こうなるといいなーって思うことも
手放して、おまかせよ。
いちばんいいようになる。
だから直美ちゃんの問題も、
いちばんいいようになるって信じてる。
直美ちゃん、もうすぐ誕生日ね。



【直美】
そうなんだよ。
よくここまで生きてきたなあ。



【母】
まあ!直美ちゃんはまだ若いしこれからよ。
90代でハイヒールはいてる人もいるし。
外見だけでも元気に見えて現役で仕事してる人いっぱいいらっしゃるわよ。
90からレストラン始めたって人もいるし、すごいバイタリティーよね。
お母さんは、62歳ごろはハワイにいて
バリバリで仕事も踊りもして
盛りのときだったわよ。
強いときだったわねー



【直美】
ひぇーー、すごっ。



【母】
本当にたのしかった。
どこも体は悪くなかった。
肉食はしないけど、
何でも食べれてたし、
何も問題なくて。



【直美】
直美も子供と一緒にハワイに遊びにいったよねー
お母さんきれいで元気だったよね。60代だったんだ!すごい!
直美は53、このままひとりで歳とって死んじゃうのかなっておもう。



【母】
お母さんなんて、いま歩けないし、
一歩も外にでれないのよ。
ずっと家の中にいるのよ。
直美ちゃんは歩けるんだし、よく歩いた方がいいわよ。歩くと気分がちがうわよー
お母さんはとにかく、人にはこう言ってるわ!
きれいな景色はiPadとかで見れるけど、
実際に行くと全然ちがうからね。



【直美】
お母さんは、世界中に住んでたから
きれいなところいっぱい行った体験があるから。
直美を連れていってくれたし。



【母】
なつかしいわ。
香港にも住んでたし、
直美ちゃんといろいろ行ったわね。



【直美】
いつかいろんなコトが手放されて、
また家族で逢えるときがくるよね。



【母】
あのね、どこかでゴーン!とぶつかって
腕に濃いあざができて二ヶ月以上消えなかったの。それが徐々に中心から消えていってね、
今ようやくうっすらとなってきてるの。
本当にすこーしずつ確実に消えていってるの。
こういうことって象徴で、なんでもゆっくりゆっくり消えていくんだなあ、確実に元に戻るようになってるんだなあ、と手を見るたびにおもってる。おもしろいのよ、見ていたら。
時間が経つと消えるのよ、
そんなものだと思う、なんでも。
時間がかかるけどひとつひとつほぐれていってね、永遠の時間からいうと大したことないわ。



【直美】
そうなんだよね。
ひとつの人生は、夏休みくらいかな。



【母】
人生は、永遠の生からすると、またたきくらいよ。命は生き続けるから元に戻るしかないの。



【直美】
直美は特に、女性性を大事にしていて
今生理がなくなって更年期でラクだけど
生理があった時は休むときと動くときのリズムがあって。でも今は男性みたいに毎月一定の体調で
自分が女じゃないような気になるの!
生理がある女性のリズムって大事だったんだなあ。出血はつらかったけど。
いまは体がらく!
男性は生まれた時からこんなにラクな体だったんだね!



【母】
そうねー
でも男の人は歳とってくるとおしっこがでにくくなっと苦しむ人が多いのよ。出血じゃないから女性みたいにデトックス的ないい面はないの。
ただ、痛いだけ。
更年期の痛みがあるみたいよ。



【直美】
それも、先祖代々からの男性の哀しみが
再生されてるんだね。



【母】
生きるってことはそういうことなのよ。
女性も男性もみんな違う困難があり、
魂の夜明けっていうのかしらね。
夜が明けるチャンスの時期があるのよね。



【直美】
人の気持ちを優先するとか、
恩に報いるとか、
今まではそれが素晴らしいことのような洗脳があるけど、直美が実践してることは自分の気持ちを最優先にすることなの。
無理して他とおつきあいするより、
正直な気持ちで生きると、
どうしても申し訳ない感情がでてくるけど
これはプログラムされたデータだなってわかってるから。
お母さんはどう思う?



【母】
やっぱり自分に正直にならないと。
ムリしたら後悔するからね。
あとは、おまかせ。
直美ちゃんがムリしなくても、めぐりまわってお相手にも他からいい話がくるのよ。
あまり、しばらないことね。
波長が合わないと、したいと思ってもできないし
お願いしてもできなくなる状況になる。
波長の問題よね。
直美ちゃんがムリしないことね。
正直になったうえで、あとはおまかせ。
自分でこれでいちばんよくなるんだって確信もたないとね。直美ちゃん自身が後悔しないような選択がいちばんよ。



【直美】
自分で決めたことだから後悔しないって思っても、なんであの時ああきめちゃたんだろうって
自責に囚われたり。
でもわかったのは、愛を選択すれば
良い悪いを超えた結果が必ずある。
それは、期待していたことよりも、もっとすごい直美にピッタリな予感がする。



【母】
そうだと思うよ。
直美ちゃんは性の問題、お金の問題、子供のこと、手放すことができてる。



【直美】
お金がなくなっていくのが怖かったんだけど。
やっとお金を手放す覚悟ができてきたような。



【母】
全部手放したあと、
自然にもどってくるものだと思うのよね。
手放したあと、
それでも自分を生かす力、
めぐり巡って生かされるのが本物。
それが思っていた方向じゃなくても、
やっぱり戻ってくるものが必ずあるから。
生かされるから。
これは、体験して実感しないとわからないことよ。
普通、怖いもの。
無くなってしまったら。
それが当たり前の感情
手放して、それでも生かされてるって実感できると強くなる。
必ず必要なら生かされるってシステムになってるみたいよ。この世のシステム。




【直美】
なんかの道が開くってことー?



【母】
なくなっても、生かされるっとことね。
なくなったら終わりじゃなくて、
それでも生かされる。
それは、断言するわ。
ものすごく贅沢できるってことじやないとしても
必要なものは必ずもたらされるわよ。




【直美】
お母さん以前、自分自身が花であれば
環境がどこでも花になれるって
言ってたじゃない?
でもすっごく暑い場所で自分がきれいな花でいられるのは難しいよ。
やっぱり涼しくて気持ちいい空気、
環境は大事だよね。
体がすごーくらく。
自分が花でも、過酷な環境で花は咲かないよ。



【母】
もとがあると、環境は変わってくるよね。
自分が花になると、環境がついてくる。
皆さんおっしゃってくれるのよ。
お母さんが居るところは天国のようだって。
前は身体を維持できなくて
できなかったことが
今少しできるようになって
心の内側から悦びが溢れてくると
暑さが気にならないの。
蚊に悩まされなくなったし、
お天気にも蚊にも感謝ね。
悟ってるからとかではなくて、
本来の姿が現れてるんじゃないかしら。
本来の地球は天国なのよ。
でも自分が波長を合してないだけで
自分があわせれば自然とでてくるの。
もともとの世界が。



【直美】
お母さんは、この過酷な地球で天国の波長にどうやってあわせてるの?



【母】
そうね。調和と、感謝ね。
外の空気にも感謝だし、
ひとつひとつに感謝するの、ありがとうって。
空気、風、お花、
難しいことはわからないけど
当たり前のことに感謝してるの。
トイレのティッシュにも感謝!
ないと困るわよ!
ないとこまるものばっかりよ!
何ひとつとしてムダなものはない。
トイレもないとえらいことになるのよ。
だから感謝よー
体にも肌にも感謝。



【直美】
当たり前のような気がして、ついわすれちゃう。




【母】
ポノ(ハワイの伝統医療)の難しさはそこにあるのよ。忘れちゃうの。当たり前になってしまうから。ヒューレン博士もおっしゃってるわよね。
いちばん簡単なことが、いちばん難しいって。



【直美】
直美は心からポノにやりがいを感じるの。
単純なのに、ふかい。
ポノしてるだけでひと仕事だよー
今はS(息子)が、前向きに仕事でイキイキしてくれてるのがすっごくうれしい!
直美はもう陰でポノしてSが表舞台で輝いてくれたらいいなって。




【母】
S君がイキイキしてるのは、いちばんの親孝行ね。
でも直美ちゃんも若いんだからどう変わっていくかわからないわよ。
すべて明け渡して、ゆだねてるんだから大丈夫!おまかせね。
執して執さずっていうけれど、
そうなんだと思う。思いはあっても、執着しない。



【直美】
なおみは何がいちばんしたいかって、
女性であることの悦びを体現したいの。
女性に生まれてよかったなって
たくさんの人に思ってほしいから
直美がそう思ってなきゃね。
だっておっぱいがあって、
すごくやわらかな曲線のお尻とか
そんな体をもって生まれて最高じゃない?
お母さんは女性に生まれて良かった?




【母】
そう思うわよ。
男だったらつまらないなーと思うわ。笑
生まれかわったらまた女性がいいわ。
今度は、もっともっとお父さんの愛に応える可愛い女性になりたい。
直美ちゃんは、洋一郎さんに充分に愛されたわね。(夫は他界)



【直美】
愛されたよね。
直美はじゅうぶんに愛したかわからないけど。



【母】
そういうものよ、女の人は。
男の人は愛することで悦びを感じる。
どれだけ女性を幸せにしたかがいちばんの幸福感らしいわよ。女の人はどれだけ愛されたかで幸福感がある。




【直美】
そうそう、そこを直美は体感したから
この悦びを伝承していきたい。
女性は愛して尽くす、
のが幸せのような刷り込みがあるけど
それは後からついてくることで
入り口はまず、男性の方から無条件に愛されてる実感がないとね。その女性としての悦びがないと何も開花しない。でもそこに至るまでは女性が無であること。だって期待してるような男性からは愛されるとは限らないから。



【母】
直美ちゃんは見たことある?
プライムビデオのバチュラー。
あれを見たのよ!
しょうもない軽い番組かなあと思ってたら
すごーーーく男女の愛が深いの!!
ものすごく考えさせられたわ。
少しみたらすごく深かったから
最初から全部見たわよ…



ここから30分ほど、母が見た番組への想いを興味深く聴いていた私。来世の勉強になるわ、と
いきいきと話す母がとても可愛らしかった。



母と話すと、
わたしは幼子に戻ったような開放感で
いろいろ聴いてみたくなる。
答えは全部自分の中にあると思っているけど
母と対話することで、
母を通して
もう一人の自分と対話して
未知の自分を知る旅にでているような気がする。


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