見出し画像

2月の読了

シフトが何であれ7:30には出勤して、勤務開始まで職場で読書するという朝活を始めました。
「時間が空いたら読む」じゃなく、先に読書を枠を確保したことで先月よりも多く時間を費やせて嬉しい。今月は3冊ご紹介します。

本noteのAmazonリンクは、Amazonアソシエイト・プログラムを使用しています。

カラフル(森絵都)

HOMESTAY(ホームステイ)というAmazon制作の映画が話題。なんとあの不朽の名著「カラフル」が原題とのこと。
学生の頃、大好きで何度も読んでいた本。また久しぶりに読み返してみた。

死んだはずの「ぼく」が、あるきっかけで自殺を図った男子中学生の身体に入り、彼の自殺の原因を探る物語。

中高生向けにおすすめされることが多いので爽やかな青春小説かと思いきや、大人が読んでも考えさせられるメッセージ性の高い作品。

登場人物は主人公、家族、周囲の人間それぞれが何かしらを抱えている。そしてそれをうまくごまかして隠して生きている。

「ほんとは長生きしたいけど、一日おきにしにたくなるの。ひろか、ほんとに変じゃない?」

人はみんな二面性があり、“こう思われたい自分”と“本当の自分”を使い分けている。そして自分で定義している“本当の自分”はたいていネガティブなものらしい。

みんな綺麗なんかじゃない。嫌な部分や卑しい部分があるのは当たり前で、それも含むから自分である、その面だけが自分の価値ではない。

「みんなそうだよ。色んな絵の具を持っているんだ。きれいな色も、汚い色も。」
「この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。どれがほんとの色かわからなくて。どれが自分の色かわからなくて。」


三体(劉 慈欣)

ついに手を出した「三体」。
いやーーーーー、面白い。死ぬほど(?)面白い。

これに関しては、「三体」とはそもそも何なのか?ということを知らない方が絶対おもしろいので触れずにいようと思います。
半分くらい読み進めたところでやっと少しずつ、何が起こっているのかが見えてくるので挫折せずに頑張ってほしい。

天文や物理学、力学の考え方が散りばめられていて、難易度は少し高め。
懇切丁寧に全ての事象の理由まで解説してくれるわけではないから、「今の状況はこの原理が働いているからゆえのことなのね」とふわっとでも納得しないと世界観は掴みきれないなという印象。
だけど知識があればあるほど情景を思い浮かべられるし、納得しながら読み進められる。ある種、読者にフィルターをかけているのか?とすら思う。

例えば「光年」を知っていれば、なぜ話中のような時差になるかがわかる。

例えば「宇宙背景放射」を知っていれば、話中の”宇宙背景放射が可視化される”という状況を想像でき、いかにヤバいかがわかる。

これまで読んできた小説のなかでも圧倒的面白さだし、スケール段違いだし、これでまだ三部作の第一部とかビビる。
これからどうなってしまうのか全く想像出来ない。新しい価値観を滝のように浴びせてくれそうで、残り二部もとっても楽しみ。



フラットランド(エドウィン・アボット・アボット)

「三体」を読んだあとに、高次元について興味がもこもこ湧いてきて、次元の話といえば、という本書を読んだ。

この作品の初版はなんと1884年で、ヴィクトリア朝時代のイギリスで出版された。
あからさまな女性蔑視の表現は当時の歴史を鑑みて目を瞑るとして、とても約140年前に書かれたと思えないほどの主題とストーリー。緻密に練られた設定や二次元世界ならではの事情、彼らが考えることの出来ない“三次元”から、それを見下ろしているという自分の状況がとても面白かった。

高次元は折りたたまれている、という表現をよく聞く。
“超ひも理論”では10次元のうち、6次元がコンパクトに折りたたまれていて私達には認識できない。

次元が折りたたまれているって意味がわからない。わからないのだけど、フラットランドを読んだことでこの表現に少し納得することができる。

3次元の立体は折りたたむことが出来て、それは2次元の平面になる。
2次元の平面は折りたたむことが出来て、それは1次元の線になる。
(正確にはわずかでも厚みがなければ線として認識できないのだけど、極限まで細い線とする このパラドックスは物語中でも言及してある)
同様に、1次元の線を究極まで縮めていけば、それは1つの点=0次元になる。

こう考えれば、4次元を折りたたんだ結果が3次元であり、もっと上の高次元も折りたたむこと自体は可能なんだろうな(見えないしわからないけど)となる。

自分が生きている世界を超える次元を想像することは困難を極める。

この本は読者の次元よりもひとつ下の2次元をベースに物語を進めることで、「自分の世界の当たり前のその先」を想像することの面白さや存在の可能性を教えてくれるなと感じた。

4次元は「時間」であり、私達は次に存在するものが分かっているという点では特殊かもしれない。だけど、時間を行き来したり自分で伸ばしたり縮めたりできない以上、4次元目はまだ人間の手中には入っていないんだなと思う。

過去→現在→未来と一方通行するだけの私達を見て、「つまんないでしょ〜そんなの」と鼻で笑う存在がいるんだろうか。想像すると怖いようなわくわくするような。

あなたが、多くの円が一つになった、フラットランドの全ての図形より優れた存在であるように、多くの球が一つになった、あなたよりもう一つ上の、スペースランドの立体さえ凌駕する至高の存在があるはずです。

頂いたサポートは書籍購入費を中心に、発信に関わる使い方をさせていただきます!