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本は雑に読んでいい

読書の秋ですね。本、読んでますか?

国語の授業で「精読」ばかりやってきたためか、私たちは本を読むとき変に固くなって初めから終わりまで真面目に読み通そうとします。でも小説にはつまらない部分もあれば面白い部分もあり、実用書にも必要な部分とそうでない部分がありますよね。

私は、youtubeで動画を見るときのように、読書ももっと雑くやっちゃっていいと思っています。というわけで本記事は雑読書案内です。

○つまらなかったら別の本へ

他人にとっての名作が必ずしも自分にとっての名作とは限りません。夏目漱石『こころ』、村上春樹『海辺のカフカ』、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』などなど古典的な名作長編は数多くありますが、趣味で読むなら無理して読み通す必要はないでしょう。

最初の30ページくらい読んで面白くなかったらいったん別の本へ移ってしまうのもひとつの手です。あるいは長ったらしい部分は飛ばしてしまいましょう。いわゆる純文学的な作品は急激に状況が変化することが少ないので、数ページ飛ばしてもあまり問題ありません。

あるいは短編から入るのもよいでしょう。短編をひとつかふたつ読んでみて、その作家が自分に合うか確かめてみましょう。

○中身をつまみぐいする

新書や実用書は、自分の必要とする部分だけ読むという手もあります。目次を参照すれば、だいたいどこになにが書いてあるかわかります。

「いや、意外な部分にものすごく面白い情報が載っているかも……」と考えてしまうかもしれません。たしかにその可能性はゼロではないでしょう。しかし次の本に移って、また目次から関心にあった箇所を探すほうが確実です。1冊の本を読み通す時間で何冊の本を参照できるのか考えてみましょう。

これは学術書でも同じです。1冊全部読み通すのは勉強になるのでいいことですが、レポートや論文の締切があるときには思い切って次の本に移ったほうが賢明です。いま必要な情報とあとからでもいい情報、読書に優先順位をつけましょう。

つまみ食いはなにか特定の情報を得たい時に有効ですが、別に小説でこれをやってダメという法はありません。かの夏目漱石も『草枕』で次のように言っています。

「西洋の本ですか、むずかしい事が書いてあるでしょうね」
「なあに」
「じゃ何が書いてあるんです」
「そうですね。実はわたしにも、よく分らないんです」
「ホホホホ。それで御勉強なの」
「勉強じゃありません。ただ机の上へ、こう開けて、開いた所をいい加減に読んでるんです」
「それで面白いんですか」
「それが面白いんです」
「なぜ?」
「なぜって、小説なんか、そうして読む方が面白いです」
「よっぽど変っていらっしゃるのね」
「ええ、ちっと変ってます」
「初から読んじゃ、どうして悪るいでしょう」
「初から読まなけりゃならないとすると、しまいまで読まなけりゃならない訳になりましょう」

私たちは読書のことをマジメに考えすぎています。趣味で読む分には終わりから読もうが途中から読もうが好きなキャラが出てくる箇所だけ読もうが文句を言われる筋合いはないのです。国語科的な読み方から抜け出しましょう。

○何冊かの本を並行して読む

スイーツパラダイスという店に行ったことはありますか。要するにお菓子の食べ放題です。食べ放題だからまずいものばかり、というわけでもなく、どれもなかなか美味で楽しい場所です。

ところで、ここで一番美味いのはカレーと唐揚げです。お菓子ばかり食べていると口が甘ったるくなるので、辛いものが恋しくなるのです。

本も同じです。一冊の本を何時間も続けて読もうとすると、だんだん飽きてきて集中力が失われてしまいます。3時間でも4時間でもぶっ通しで読める本に出会うことは稀でしょう。

読書にもカレーや唐揚げが必要です。固めの新書を読んでいるときには休憩に小説を読んだり、文豪の小説を読みながらあいだにライトノベルを読んだり。同じ味のものばかりじゃ、いくら美味しくても食べきれません。

長めの移動のときや喫茶店でゆっくり本を読もうというときは、別々のジャンルの本を2、3冊もっていくといいでしょう。別にストーリーが混ざってしまったりはしません。大丈夫です。

そんなにたくさん買ったらお金が……。という人は、積極的に古本屋やとそ書館を利用しましょう。他人がベタベタ触った本はいやだという人がいるかもしれませんが、幸か不幸かこうした情勢になったおかげでしばしば図書館には除菌用の機械が置いてあります。利用してみてもよきですね。

○あらゆる読書は雑である

『読んでいない本について堂々と語る方法』という素晴らしい本があります。タイトル通り読んでいない本についての本かと思いきやちょっとひねってあり、この本では「そもそも完璧な読書なんてないよね」という話がされています。すべての本が多かれ少なかれ「読んでいない本」なのです。

たしかに「読んだ」本でも細かいストーリーとか用語とかは忘れてしまっていますよね。この記事は雑読書の勧めですが、ある意味あらゆる読書が雑な読書なのです。

研究するとかレポートを書くとかじゃなければ、本をパラパラ読もうが内容の理解が不十分だろうが誰に文句を言われる筋合いもありません。肩ひじをはりすぎて読書が苦痛になる方が損です。

雑に読んでいるうちに、ちゃんと読み込みたい本に出会う機会もあるでしょう。書物の世界は広大でありますから、自分に合う本がきっと見つかります。

それまではまあ、読んだり読まなかったりしてのんびり待ちましょう。

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