獣医師ふー『ペットに中毒を起こす物質,獣医さんとやってみよう自由研究』

獣医師ふーです。ペットが気をつけるべき中毒をご紹介しています。。自己紹介:http:/…

獣医師ふー『ペットに中毒を起こす物質,獣医さんとやってみよう自由研究』

獣医師ふーです。ペットが気をつけるべき中毒をご紹介しています。。自己紹介:http://vet-foo.sakura.ne.jp/portfolio/portfolio.html

最近の記事

犬のポリエチレングリコールの安全性

【犬のポリエチレングリコールの安全性】本日はポリエチレングリコール(PEG)についてご紹介します。犬猫に毒性がい高エチレングリコール(EG)と名前が似ていますが毒性はとても低いです。 PEGは体内でEGに変換されることはなく,EGのようにシュウ酸等を形成せず腎毒性はないと考えられます。 PEGはエチレンオキシドと水の付加重合体でマクロゴールという名前でも医薬品として用いられています。軟膏や座薬の基材などのほか,溶解補助剤として注射剤にも用いられます。分子量により固体から液体

    • 犬のアボガド中毒【中毒】【解説】

      【犬のアボカド中毒】 アボカドは人間以外の様々な動物に中毒を起こします。コンパニオンアニマルでは犬,猫,ウサギ,ヤギ,鳥類に対する毒性が知られています。 従来はペルシンが毒性物質と言われていましたが,放牧中に地面に落ちたアボカドの葉または実を食べた馬が心筋障害を起こし死亡した馬の検体からAvocadene 1 acetateが検出され,心筋の繊維化に関連している可能性があると2022年に報告されました。このAvocadene 1 acetateがどのように心筋の線維化を引き

      • 犬のブドウ中毒【中毒】【解説】

        【犬のブドウ中毒】 ブドウは中毒を起こす原因物質は同定されていませんが,時に犬に重篤な急性腎不全ARFを起こす植物です。※現在はより定義が明確になった急性腎障害AKIという言葉の方がよく用いられますが,ARFを用いた文献もまだ多く存在するため便宜的に急性腎不全ARFを使っています。 ■原因物質 どの物質が毒性を発揮しているのかは不明です。 ■臨床徴候(症状) 初期には嘔吐など消化器に関連した症状がでますが,続いて腎機能障害による症状を呈し始め重度の場合は死亡する場合もあり

        • 犬のプロピレングリコールの影響【中毒】

          【犬のプロピレングリコールの影響】比較的安全な物質として化粧品や医薬品など広い用途で用いられている。名前が似ているがエチレングリコール より安全性が高い物質。大量に摂取すると犬に中毒を起こす。猫では赤血球に異常を起こすことから猫用ペットフードへの利用は禁じられている。 ■原因物質 プロピレングリコール(PG) ■症状(徴候) 安全性が高いとみなされるPGだが大量に摂取し中毒を起こした場合に徐脈, 運動失調, 肝機能低下,発作,意識障害,電解質異常(代謝性アシドーシス),高

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        • 獣医さんとやってみよう自由研究
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        • 獣医師ふーちゃんのやりなおし感染症
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        • 獣医師ふーのうんこクイズ
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        記事

          犬に桜の葉と種子は食べさせないようにしよう

          フォロワーの方のわんちゃんが仔犬の頃に桜の葉を食べて入院したとご報告いただいたので,調べられる限りまとめてみました。 ■原因物質 アミグダリンAmygdalin(種子):バラ科の植物の種子にはアミグダリンAmygdalinという物質が含まれています。アプリコット,桃,桜,プラムなどです。桜と一口に言っても実際には様々な属,種類があるため日本でよくみられるソメイヨシノに具体的にどの程度含まれるかは不明です。 ソメイヨシノ自体は自家不和合性の性質があり,自分と同じ遺伝形質の花粉

          犬の殺鼠剤(ワルファリン)の中毒【中毒】

          【中毒】ネズミが増える春は駆除もよく行われます。殺鼠剤は様々な化合物が用いられますが,日本でも汎用されるワルファリンやその仲間のジフェチアロールは貧血を起こす可能性があります。小麦粉など使用されているものもあるので,拾い食いなどに注意が必要です。 ●殺鼠剤(ワルファリン) 建物に出没するネズミが増える春や秋はネズミの駆除が活発になる時期でもあります。海外の教科書では春や秋に殺鼠剤を食べた犬や猫の中毒例が増えると記載されています。 殺鼠剤にはさまざまな物質が使われていますが,

          中毒17:犬のカフェイン中毒【中毒】

          カフェインは犬に中毒を起こします。チョコレートに含まれるテオブロミンよりも早く吸収され,中枢神経を興奮させ落ち着きがなくなったり,高体温,頻脈などがみられるようになります。軽度の症状は1kgあたり20mgから出始めます。コーヒー100mlにはカフェインが60mg含まれますので注意しましょう。 ■原因物質 カフェイン。中枢神経を興奮させる作用があります。カフェインは植物由来のメチルキサンチンというアルカロイドの仲間です。カフェインはコーヒー( Coffea arabica)や

          中毒16:犬のマカダミアナッツ中毒【中毒】

          【マカダミアナッツ中毒】 犬にマカダミアナッツを与えるとふるえや元気消失などを起こすことがありますので与えるのはNGです。原因物質は特定されておらず,カビ毒や同定されていないナッツの成分,混入物など色々と仮定されています。誤飲例では犬の体重1kgあたり2.4g程度から症状が出始めると報告されています。 ■原因物質 不明ですが,候補としてナッツ自体の成分,製造過程での混入物,マイコトキシンなどが原因ではと言われています。 ■症状 多いものから順に元気消失weakness,

          中毒15:ペットのヒキガエル中毒

          もうすぐ啓蟄(けいちつ)。冬眠していた亀やカエルが目覚める頃,という意味だそうです。我が家の亀は高齢のため今年は冬眠させませんでした。みなさんのお宅はいかがでしょうか? さて,お散歩などで犬や猫がカエルに遭遇して食べちゃったらマンソン裂頭条虫に気を付けよう!と大学では教わりました。が,ヒキガエルの場合は毒液にも注意です。ヒキガエルの毒は心臓に毒性がある物質が含まれています。毒はヒキガエルの仲間全てが持ちますが,毒性は種類によって様々です。 ヒキガエル中毒はヒキガエルの種類

          犬の食塩中毒【解説】【中毒】【物によっては異物】

          海外の文献では手作り子供用粘土(play dough)による犬の食塩中毒の報告があります。日本で懸念されるものとして,おつけものや梅干しがあります。梅干しは塩分濃度が高い上に種は凹凸が多く消化管壁にはまりやすい形をしています。梅干しを誤飲した場合は食塩中毒と種による消化管閉塞の2つの危険があります。日本では小型犬が多いので,腸管が細い小型犬では種が詰まる可能性も高く注意が必要です。 ■症状 食塩は消化管を刺激しますので最初に嘔吐など消化器症状が見られます。その後に昏睡など神

          球根で育てる春の花!ヒヤシンスのペットへの影響は?

          概要:球根で育てる花といえばヒヤシンス。小学生の時育てた人も多いのでは。ヒヤシンスには接触性皮膚炎のアレルゲン になるチューリポシドAおよびB,物理的刺激のもとになるシュウ酸カルシウムが含まれています。ペットが誤食しないようガーデニングやお散歩中はご注意ください。 ■原因物質 シュウ酸カルシウム,tuliposide AおよびtuliposideB。tuliposideは花,葉,球根すべての部分に含まれます。tuliposideもシュウ酸カルシウムも球根に特に高濃度に含まれ

          球根で育てる春の花!ヒヤシンスのペットへの影響は?

          犬が接着剤を摂取するとどうなる?

          概要:犬は接着剤を誤飲・接触するとどうなる? ポリウレタン系接着剤は体内に入ると元の4〜8倍の体積まで膨らみ,消化管を閉塞させる可能性があります。家庭用の木工用ボンドでは酢酸ビニル樹脂を使われているものも多く,これは閉塞の危険は低いですが皮膚や眼の刺激があります。DIYの際はお気をつけください。 詳しく:ポリウレタン系接着剤とは分子中のイソシアネート基の反応を利用した接着剤です。プラスチック・金属・セラミック・木材など様々な物質に接着し耐寒性,耐候性,耐油性があることから建

          どの種類の電池もペットの周りには置かないようにしましょう

          どの種類の電池も危険!ペットの周りに置かないように 概要:電池は誤飲するとペットの消化管に強い炎症や潰瘍を起こし穴があくこともあります。特にコイン型リチウム電池は危険で,3Vの電池だと15〜30分以内にわんちゃんの消化管粘膜に壊死を起こし始めます。 催吐は禁忌ですが,状況によっては実施する可能性もあるので獣医師の指示に従い治療を行います。 詳しく:2015年に公益財団法人日本中毒情報センターが10年間に犬の中毒に関する動物病院からの相談事例1,623件を分析したところ,

          どの種類の電池もペットの周りには置かないようにしましょう

          タマネギ中毒を起こしやすい犬種は?

          概要:タマネギ等のネギ類は犬猫に溶血性貧血を起こすことがあります。日本犬では遺伝的に高カリウム/高グルタチオン赤血球を持つ個体がおり,中毒物質による赤血球の酸化が起こりやすいです。加熱しても発症するので,ネギ類を用いた料理の誤食に注意です。犬では1kgあたり15~30gが中毒量と報告されていますまたペットへの投薬補助で人間のベビーフードを使うのも避けたほうがよいと思われます。 詳しく: タマネギをはじめとしてネギ類は人間の様々な料理に用いられることもあり,犬での中毒の中で

          中毒9犬はタバコ一本の誤食で中毒を起こす可能性がある?【中毒】

          概要:タバコに含まれるニコチンによる中毒は1kgあたり1mg程度から発現するといわれます。タバコ一本には銘柄により約7〜24mgのニコチンが含まれています。小型犬や中型犬ではタバコ1本の誤食でも中毒を発症する可能性があります。タバコを漬けた液体はニコチンが高濃度に溶出するのでペットの周りには絶対に置かないようにしましょう。 詳しく:タバコはペットの誤飲の中でも比較的よくみられます。アメリカのタバコの誤飲の報告では約94.4%(全848例中801例)が犬であり、特にわんちゃん

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          中毒8 ツツジはペットが食べても平気なの?【中毒】

          概要:ツツジ属の一部の種にはグラヤノトキシンなどの毒性のある物質が含まれているため,犬猫だけでなく広く動物に中毒を起こします。実験では犬1kgあたり7μgのグラヤノトキシンの非経口投与で嘔吐が起こります。人間ではツツジの蜂蜜による中毒も報告されています。飼い主の方もツツジの摂取には注意が必要です。   詳しく:日本では4月から6月頃にレンゲツツジ(Rhododendron japonicum Suringer)の花が開花し目を楽しませてくれます。ツツジ属の花にはアザレア(