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中毒7:犬のスイセン中毒【解説】【中毒】


スイセンにはアルカロイドやシュウ酸カルシウムが含まれ犬や猫の中毒例がある

■概要:
毒性学の父であるパラケルスス (1492ー1541)の残した言葉に「全ての物質は毒であり,毒でないものはない。服用量が毒物と薬物を分ける」というものがあります。何事も適正な量を守るべきですが,本日はその具体例としてペットが中毒を起こす可能性のある観葉植物の一つ,スイセンを取り上げます。

スイセンは冬から春にかけて黄色い花を咲かせる美しい植物です。
人間ではニラと間違えての誤食による中毒事例があります。スイセンはヒガンバナ科の植物であり,有毒なアルカロイドを含みます。そのため誤食した場合は人だけでなく動物にも毒性があります。

スイセンは犬や猫で中毒事例があります。特に球根部分に毒性のあるアルカロイドが含まれていますが根や葉にも毒性があります。散歩中や枯れた草の保管にも注意が必要です。有毒物質の一つガランタミンは人間の認知症の治療薬として活用されています。催吐NGな中毒もありますが,スイセンはOKなので誤飲したらすぐに受診して吐かせる処置が重要です。(スイセンは犬や猫で中毒事例があり球根部分に毒性のあるアルカロイドが含まれ,根や葉にも毒性があります。散歩中や枯草の保管にも注意です。有毒物質の一つガランタミンは認知症の治療薬として活用されます。催吐NGな中毒もありますが,スイセンはOKなので誤飲したら即受診して吐かせる処置が重要です)

■症状
ペットのスイセンによる中毒は犬に多いですが,猫でも中毒の報告があります。
症状は摂取後早期に現れ,嘔吐や下痢,腹痛,食欲不振(anorexia ),流涎(sialorrhea )などが見られます。中毒を発症した動物は運動失調(ataxia),元気消失(lethargy),低体温,徐脈(bradycardia)などを起こし大量に摂取した場合は昏睡することがあります。
猫がスイセンによる中毒を起こした症例報告ではアトロピン,デキサメタゾン,輸液,その他指示療法で摂取から6日後に回復したと報告されています。

■原因物質
球根(bulbs)が有毒なアルカロイドであるガランタミンgalantyamineやリコリンlycorineなどを最も高濃度に含んでいます。アルカロイドは植物中に含まれ,副交感神経の働きが過剰亢進し下痢や腹痛などを起こすものがあります(コリンエステラーゼ阻害を介する作用)。

そのほかの有毒な物質としてスイセンはシュウ酸カルシウムも含んでおり,接触性皮膚炎を起こします。球根だけでなく花や葉も中毒を起こす可能性があるのでペットが接触しないようにします。

■中毒量
15gの球根の摂取が犬の致死量と考えられています。(原文は体重別表記ではなかったので,1頭あたりという意味で,体重別の詳細な中毒量は不明です。)

■なりやすい犬種

■催吐
吐かせて胃内から除去するのは有効です。

■治療
スイセン専用の治療はなく,対症療法を行うとともに摂取から短時間で受診できたのであれば催吐処置で吐かせることが有効です。

■注意すべきこと
中毒物質のアルカロイドであるガランタミンは人医療領域ではアルツハイマーや様々な記憶障害の治療に用いられています。レミニールという製品名で,ヤンセンファーマから販売されています。ガランタミンはアセチルコリンエステラーゼを阻害することで脳のコリン機能を増強させます。適切な量であれば有用な薬剤にもなるのです。

■参考 

・SEVERINO, L. Toxic plants and companion animals. CABI Reviews, 2009, 2009: 1-6.

・SAXON-BURI, Sharon. Daffodil toxicosis in an adult cat. The Canadian Veterinary Journal, 2004, 45.3: 248.

・レミニール添付文書https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00059343.pdf 2023/01/05参照


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ペットとの暮らし

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。