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ザルツブルクのクリスマス 《クリスマスを待つあいだ04》

この記事は2020年の投稿を加筆修正したものです。

12月のオーストリアで一番行きたかったのはザルツブルクだった。
モーツァルトや「サウンド・オブ・ミュージック」で有名だけれども、それよりなにより旧市街のクリスマスの雰囲気が見たかったのだ。

ウイーンに数泊してから、初めてオーストリアの列車で移動した。
車輌は綺麗で、座席のポケットにはどの駅に何時に停まるという、自分が乗っている列車の時刻表が入っていて驚いた。
遅れないで着けたらラッキーというイタリアの列車(当時)とは、えらい違いだ。

話がすこし逸れるけれど、
ザルツブルクに向う途中、「メルク」という駅名が耳に入った。
メルクといえば思い出されるのが、メルクのアドソ。
ショーン・コネリー主演で映画化もされた、ウンベルト・エーコ作の「薔薇の名前」に出てくる修道僧の名前。
映画のなかではクリスチャン・スレーターが演じていた。
残念ながら列車の外は真っ暗で何も見えなかったけれど
調べてみると、とても大きな修道院があって、メルクという場所がオーストリアだとこの時知った。

ザルツブルクでは駅前のホテルを予約していたので、その日は丘の上の旧市街には行かず、ゆっくりすることにした。

翌朝、バイキングの朝食会場になっている部屋に行ってびっくり。
広い窓は旧市街の丘のほうに向いていて、雪をかぶったホーエンザルツブルク城が正面の山の上に見えた。
朝の光があたって、それはもう絵のように美しく、その時すでにヨーロッパをあちこち旅していたにも関わらず、こんなに美しい景色は見たことない、と思ったくらいだった(残念ながら、なぜか写真が無い)。

朝ごはんを食べて、さっそくバスで旧市街のほうへと上がる。

旧市街の目抜き通り、ゲトライデガッセ。鉄製の看板がそれぞれ綺麗。

こじんまりとした旧市街のあちこちにクリスマスマーケットが出ていて、気の向くままに歩くのが楽しい。

ただ、前夜に降った雪が残っていてとにかく寒い。でも、外の写真を撮るのが目的なので、夢中になって歩き回る。

ちょっと路地に入ると、そこにもまた飾りつけがされている。

幼子イエスを担ぐのは聖クリストファーかな?
旅の守護聖人
カフェの出前?


クリスマスの飾りのお店もあって、絵が描かれた卵がいっぱい。
いろいろな色があって、かわいい。

ホーエンザルツブルク城からの眺め。

外を撮影して、身体が冷え切って膝が痛くなるほどになるとカフェに入って温まる。お店のなかは暖かいので、ダウンの中も着込んでいる私は暑くて汗をかく。そんなことを繰り返して、よく風邪を引かなかったものだと思う。テンションが上がっているので、ほとんど気力のみで動いていた。

12月のザルツブルクは宝石箱のようにキラキラしていた。

夕方、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」の合唱が聞こえてきた。街角で合唱団が歌っていて、思わず立ち止まって聞き入ってしまう。
モーツァルトはあまり好きではないのだけど、この曲は大好きなのだ。

古代ローマでは、キリスト教が広まる以前から、ローマ暦の冬至にあたる12月25日に太陽神ミトラの祭りが行われていたそうだ。
キリスト教信者たちは、聖書のなかで「世の闇を照らす光」「義の太陽」にたとえられるキリストを、古代ローマが大切にする太陽と関連させて、この日をキリストの誕生に結びつけて、祭りを共有するようになった。

万物が枯れ果て、闇の時間が一年で最も長い冬至を境に日が長くなり、死から再生へと移り変わる時。クリスマスは光が勝利する喜びの祝祭なのだった。

*photo by photofran(フランチェスカ), 2003



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