ア・ゴースト・ストーリー
スタンダードサイズで映し出された映像美とルーニー・マーラに魂を奪われた作品。
日本でいつ上映されるのかと楽しみしていたのだが、待ちきれずにさっさと鑑賞することにした。
予告を観て、どうせデミ・ムーアの「ゴースト」を「オシャレに作り直してみました」的な作品だろうと舐め腐った態度で本編に臨んだ。
事故で死んだ夫が、シーツをかぶったオバケになって家に戻って妻を見守るというストーリー。
これだけ聞くと、完全に〝オォー、マァァイ、ラァァァァアヴ、マァァイ、ダァァァリィィィイイン…〟とライチャス・ブラザーズの「アンチェインド・メロディ」が流れてきそうだがそこはまるで別物。
とにかくセリフが少ない。
そして長回しが半端ない。
特に某シーンでは、本気でディスクが壊れたのかと思い、思わず再生時間をみてしまった…ちゃんとカウントされていっている…画面に目を戻す、完全に静止している…あれ?おかしい…大丈夫か…本当に壊れていないか…長い、長過ぎる…と思ったら、いきなりドキッとさせられて…思わず「うぉっ!!」と声を出してしまった。
このたった1箇所驚かされるホラー的演出以外は、本当に静かでゆっくりで美しい映像と空気が流れる映画界のECM…素晴らしきかなA24。
円環構造で描き出される実存的な叙事詩。
人は「なぜ」そして「何のために」生きるのか。
神は無機質な時の流れの彩りとして人を創ったのか。
人からすればこんな迷惑なことはない。
神の目を喜ばせるための彩りとして受動的に生きるのか、それとも己の人生の彩りとして主体的に生きるのか…。
そんなことを思い巡らす静寂のひとときを与えてくれた作品である。
途中、オバケの感情をポルターガイスト的に演出しているが、そんなことしなくてもシーツオバケのまなざしと佇まいだけで、十分すぎるほど雄弁に語っていたと思う。
この作品の前に鑑賞していた「カメラを止めるな!」が、あらゆるジャンルを包含していた作品だとすれば、こちらは、あらゆるジャンルに当てはまらない作品だといえよう。
★★★★★
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