ラストレター
岩井ワールド全開で、岩井俊二監督らしからぬまとまりの良さとエグみの少なさで仕上げられた良作。
こちらは原作よりも映画の方が良かった。
私の読解力の乏しさから登場人物がごっちゃごちゃのカラマーゾフ状態に陥っていたので、出演者陣の演技に助けられた
自殺したミサキの高校時代とミサキの娘のアユミを演じた広瀬すずは、ところどころ棒になりながらも良い演技だった。
ミサキの妹役である松たか子の高校時代と松たか子の娘役の一人二役を演じていた森7は、可もなく不可もなくこなせていた。
しかし、松たか子のDV夫役の庵野監督は、「風立ちぬ」とほぼ変わらぬ味わい深い棒だった。
そのおかげもあってかどうか、原作のDV案件シーンもライトなコメディタッチに描かれ、岩井監督あるあるのエグみがなくマイルドな仕上がりになっていた。
福山雅治は「マチネの終わりに」よりマシではあるものの、所詮、福山はマシャ以外何ものでもないことを確認できた。
この映画の中で一番良かったのは、マシャが使っていた銀塩カメラ「ローライ35」だ。
久しぶりにフィルムで撮りたい衝動に駆られてしまった。
後半はローライが気になって気になってマシャはローライのおまけだった。
さてマシャの高校時代を演じていた神木隆之介氏は、どんなに頑張って大人になってもマシャになれそうになかった。
しかし、広瀬すずにラブレターを書く時に使用していたペリカンのスーベレーン緑縞がそんな憂慮を消し去った。
この映画の主役は松たか子。
あいもかわらず素晴らしい女優だ。
松たか子の演技力によって主人公ユウリの心情が原作以上に伝わってきた。
岩井俊二監督といえば、和製テレンス・マリックの異名を持つ映像美作家である。
お約束の逆光を生かした柔らかい映像がたまらなく美しい。
それにしても岩井作品は曇り空が似合う。
そして女子高校生を撮るのがやたら上手い。
だいたい広瀬すずが起用されると、非現実的な可愛さをもつ女子高生に仕立て上げられるのだが、岩井作品はリアルな空気感を纏わせるのが上手い。
そしてこの映画には忘れてはいけない二人が出演している。
「Love Letter」のトヨエツと中山美穂だ。
二人のドクズっぷりにおもくそ笑った。
★★★★☆
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