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ゲーム会社で働きたかった

まごうことなきフリーター、親の脛齧りの私である。
私はゲーム会社で働きたかった。
早くひとりで自活もしたかったが、未成年で就労するほどバイタリティもなければ行動力もない。
ただ悶々とする青春を無為に過ごし、大学に進学した。
ひとり暮らしのためである。
幸せだった。納税という義務を放棄したモラトリアムという死語が生まれたばかりの頃だった。
日々の講義を平坦に過ごしながら、初めて自分だけの力で他人にコンタクトする連続だった。
高揚した。
浮き足立った。
現実に戻れば技術も経験もなくただ借金で時間を買っただけだった。
人が自然に身に付けている技術を、付け焼き刃で揃えるためだけに時間は費やされてしまった。
残ったのは中年まで残る債務だけになった。

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