関田溶心

稚拙素人文字書き悪癖の螺旋思考で散文他感想など"好き勝手にやる"を…

関田溶心

稚拙素人文字書き悪癖の螺旋思考で散文他感想など"好き勝手にやる"を実践中 本・DVDの感想はこちら⇒https://booklog.jp/users/vintch

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最近の記事

不幸自慢は何も産まないが誰にも読まれないボトルメッセージは数多存在する

Netflixで俺の家の話を再視聴した。宮藤官九郎脚本、長瀬智也主演のドラマだ。それを初めて見たのはちょうど認知症が進んでいた祖母を家もろとも焼失した後2021年ごろだったか。2023初旬。再視聴できたのはNetflixのおかげだった。ありがとうNetflix。 嫌なことも多くて滅入りそうな時に限ってトラブルは重なる。引き寄せの法則に則ればこれらも私自身が引き寄せているからなのだろうか。無理矢理ポジティブに変換して考えたり言い換えたりしてなんとか乗り切ろうとした。苦しみ余っ

    • 私は"ここ"に住みたい

      どこにでも住めるとしたら? たとえば、雲の上、都会、田舎、宇宙、バックパッカーみたいに世界中どこでも、イギリスのロンドン、フランスのパリ、アメリカのニューヨーク、南国、極北、絶景の目の前。 いろんな理想がある以上、多種多様な答えが存在するだろう。 私が個人が住めるとしたら、その条件は「安心する寝床があるところ」となる。どこだろうと構わないが、それが最低条件になるだろう。だから私は三十路になっても大きなぬいぐるみを手放せない。立派な"こどおば"の自覚はあるがそう育ったんだから

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      • 寝るのは好きだけど得意じゃない

        私は私のことが嫌いだ。嫌悪感が背中を這って落ち着かずに床に着くことがままある。診断された精神病の人に比べれば雨露がごときなことだろうが、私にとっては一大事な危急的速度を持って蝕む。

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        • ただ誰でも良いから私の話を聞いて

          身体の調子は悪くないのにいつになく胸がつかえるのはなぜだろう。この前行った飲み会で愛想笑いをし続けたせいか、頭の中がぐちゃぐちゃしている。付き合いで参加したし昔は飲み会が好きだった。常日頃関わりのある人と長く話をできる時間を持てることは興味深くて楽しかったと思っていたはずなのに、大人になるにつれ好き好んでではなくて、付き合いという半強制イベントに変貌したせいか、余韻は心地よいものから後悔に変わった。人と詳しく交流する、という場から、酒を飲むと饒舌になる一部の人間のために笑顔と

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        不幸自慢は何も産まないが誰にも読まれないボトルメッセージは数多存在する

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        • 青鹿
          1本
        • 苔生す残照
          13本

        記事

          一年経ってからリングフィットを買いました

          くそだるい記事だろうけど備忘録兼散文としてここに記す。 安くない学費を奨学金という借金までして心理学を専攻したのは、自己が他者に比べて心理的に脆弱だと予感していたからだ。内申書を出す指導教員には「これからの時代に必要な知識ナノデ」みたいな高校生のくせして馬鹿みたいに偉ぶった理由を述べていたけれど、さすがに自分の本心まで言語化する勇気と社交性は持ち合わせていなかった。 実際、心理学をまがりなりにも専攻した四年間を経て提供された真新しい知識は凡人からしたら目を張る内容だったし

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          一年経ってからリングフィットを買いました

          実家、燃ゆ

          芥川賞受賞作の『推し、燃ゆ』宇佐見りん作(敬称略)は応援する対象、いわゆる推しが炎上する話らしい。気になりつつ読めてはない。 まさか実家が燃えるとは、物理で。 人生には3つの坂があって、下り坂上り坂まさか、それを教えてもらったのはドラマ『カルテット』だったっけか。

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          実家、燃ゆ

          記憶という呪い

          人間の記憶というものは都合よく作り変えられるものらしいということを聞いたことがある。

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          記憶という呪い

          ゲーム会社で働きたかった

          まごうことなきフリーター、親の脛齧りの私である。 私はゲーム会社で働きたかった。 早くひとりで自活もしたかったが、未成年で就労するほどバイタリティもなければ行動力もない。 ただ悶々とする青春を無為に過ごし、大学に進学した。 ひとり暮らしのためである。 幸せだった。納税という義務を放棄したモラトリアムという死語が生まれたばかりの頃だった。 日々の講義を平坦に過ごしながら、初めて自分だけの力で他人にコンタクトする連続だった。 高揚した。 浮き足立った。 現実に戻れば技術も経験もな

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          ゲーム会社で働きたかった

          青鹿、痴漢について考える

           叶わないことであるなら、初めから願わなければいいのだと、何度言い聞かせたことだろう。青鹿はブランコの冷たさを臀部に感じながら、空を見上げてあの人を待っていた。きっと今日も泣きながら帰ってくるに違いないあの人を、まだこれだけ会いに来ているのに家の合鍵は決して渡してくれないあの人を、待っていた。  部屋に電気が灯る。  公園の正面にあるアパートの三階角部屋だ。携帯を見ると午後十時半だった。  今日は早いな、と思いながら、軋むブランコの鉄鎖を手放して、青鹿は脇に置いてあった通学鞄

          青鹿、痴漢について考える

          記憶の化石

           私は飛行機に乗ったことがない。だから私の交通手段はもっぱら、列車である。国外に興味がないわけではない。『インドなんて二度と行くか!ボケ‼―...でもまた行きたいかも』(アルファ文庫、さくら剛著)や『奇怪紀行』(KADOKAWA、佐藤健寿著)を読んで異文化への好奇心はそれなりにある。ぜひともタイやベトナムといった近しいくせに日本とは異なる空気感の国へ訪れ『食べて、祈って、恋をして』のような日常生活では決して手に入らないようなエボリューションを夢見ている。

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          記憶の化石

          《苔生す残照⒀》完結

           ひょっこり顔を出したのは荒木田大司だった。

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          《苔生す残照⒀》完結

          《苔生す残照⑿》

          「さっき話したあの写真、裏の詞はね、はじめは、私は朱音を思って書いたんだ。朱音の天下が続きますようにって。あの頃の朱音は私にとっては憧れの的みたいな感じだったから」 「天下って」 「だってあの頃は、みんな朱音に夢中だった」 「それは言いすぎじゃない? 俺はそうとは感じなかったけど」 「どうだか。あの頃は、あの小さな教室が私たちの全部だった。朝登校して下校するまで、どれだけの時間をあの校舎で過ごしたと思う。それに、親類以外の関係を特に知らない自我が芽生えだした子供が、ほとんど初

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          《苔生す残照⑿》

          《苔生す残照⑾》

          「そういえば、懐かしいものを見つけたんだけど。ちょっと見てくれないか」  朱音は不思議そうに頷いてから、梯子を降りはじめた。腕まくりをした手で、肩にかけてあったタオルをとり滲んだ汗を拭う。  降りてきた朱音に写真を手渡すと、彼女は目を細めそれを凝視した。 「門馬さんってどこに映ってんの。面影だけじゃ、雰囲気違うからわからない」 「これ」  指でさしたのは門馬朱音の隣に立つ薄い笑みを浮かべた少女だった。 「あと、ひとつ聞きたいんだけど、これ、門馬さんが書いたものじゃないかって」

          《苔生す残照⑾》

          《苔生す残照⑽》

           ある日の放課後、大司と共に秘密基地に向かった。  その後、板をつぎはぎにした小屋の中でカードゲームをしたり漫画を読んで時間を潰してから、夕暮れごろには帰った。その時、偶然次の日の宿題で必要なものを忘れたことに気付いて、大司と別れて教室に向かった。生徒がみな帰った校舎は人気がなく不気味だったから、駆ける足はいつも以上に急いだ。窓枠の影が濃くなるにつれて、長い廊下が果てしないように思えた。  教室に入り、自分の机へと向かう。  引き出しの中にそれはあるはずだったが、そのときの章

          《苔生す残照⑽》

          《苔生す残照⑼》

           いったい誰が、という疑問もよぎったが、おおかた話しを振った大司だろうと見当づける。そのおかげで掘り返すことには苦労はなかった。トランクに入れておいた園芸用のスコップで数分もしないうちに菓子の空き缶を掘り当てた。土を払ってそれを開ければ、その中には意外なものが入っていた。粉々になっている白い一輪ざしの花瓶と、くしゃりと握りつぶされたような手紙だった。  手紙にはこう書かれていた。  加絵へ  お元気ですか。私も元気です。  春も過ぎて夏の暑さにまいっています。そちらは大丈夫

          《苔生す残照⑼》

          《苔生す残照⑻》

           校舎から出て、裏に向かうと、門馬朱音が梯子に登って何やら作業をしていた。校舎裏の壁全体を使って、ペンキで塗りたくっている。彼女がいま取り組んでいるのは、波の先端だった。 「葛飾北斎、だっけか……?」  集中していた朱音は驚いてひとたびアルミ製の梯子を軋ませてから、章二の方を見た。 「知ってるんだ」 「見たことあるよ、日本人ならわかる」 「神奈川沖波裏っていう木版画で、葛飾北斎の連作富嶽三十六景のひとつなんだって。模写だから完璧とまではいかないけど」 「そうなのか。迫力がある

          《苔生す残照⑻》