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まだ誰もそれを「コンビーフ剥がし」とは呼んでいない

先日、きこぺんアロハさんがこんなつぶやき。

へぇ! アメリカのコンビーフはまだこの鍵式なのか!
小学低学年だった頃、これをクルクルしたいがために、開けなくてもよい缶まで開けて叱られたな。

こんな鍵がついてた缶詰はコンビーフくらいだけど、なぜ?

国産コンビーフは昭和23年に誕生し、その2年後からおなじみ・台形の缶に充填されるようになったという。
この形、コンビーフの缶としては世界共通らしいが、日本では江戸時代の枕に似るので「枕缶」と呼ぶのだとか。

そして枕缶を開けるために付属したのが特別な鍵「巻き取り鍵」。
きこぺんアロハさんの写真にあった鍵だ。
この鍵を缶側面の爪に引っかけてクルクル巻き取り、上下に開ける。
形を崩さずに中身を取り出すため、この方式が採用されたようだ。

しかしこの巻き取り式、日本では大人の事情で2020年に惜しまれつつ姿を消し、「パッカーンと簡単に開く」(きこぺんアロハさん談)タイプに。

大人の事情は酌まざるを得ないが、開けたい!と手を挙げるお手伝いの少年少女が減っただろうことは残念だ。
楽しくて、開けなくてもいい缶までつい開けてしまう少年少女が減ったのは、親としては嬉しいかもしれないが。

ところで。

コンビーフをクルクル開けることはもう叶わない夢だが、ケーキさえあればいつでもクルクルは楽しめるから大丈夫。

幼い頃からずっと、ケーキの側面のフィルムをフォークで巻き取ってきた。
勝手に「コンビーフ剥がし」などと命名して。

母からは、はしたないからやめろとたしなめられた。
でも、手でビーッと剥がして指についたクリームをチュパッとし、大きく広がったフィルムをどうしたものか考えあぐねた挙げ句、フィルムについたクリームさえもフォークでこそげ取ってペロッとしてから畳むけどまたすぐボワッと広がってしまう、というほうがよほどはしたなくない?

フォークで巻き取ればペロッとしたくなる衝動は生まれず衛生的で、巻き終えたらケーキの下の銀紙と皿の間に挟んでフォークをスッと抜くだけ。
実に美しい。

ネットでも「ケーキのフィルム剥がし」「ケーキのフィルムを上手に剥がす裏技」などと賞賛され、中にはそれをテーブルマナーと紹介するものまで。
さすがにマナーではないだろうと思いつつ、ほらねと亡き母に伝えたい。

でも、まだ誰もそれを「コンビーフ剥がし」とは呼んでいない。
さぁ今日から「ケーキフィルムのコンビーフ剥がし」と呼ぼう!
…いや、どうかな。

(2023/3/25記)

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