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僕はしまむらの袋をぎゅっとカバンに隠した

近所の商業施設がリニューアルし、なかなかの賑わい。
ハードが変わるだけでこんなにも人の流れが変わるものなのか。

よく見れば、今ふうのしつらえに。
個別のレストランだったところが低価格のフードコートになったり、テラス席や小上がり席が拡充されたり。
着席したままスマホでオーダーできるシステムも導入された。
ハードだけでなく、オペレーションも含めて一切が変わったのだ。

グループや家族で外食すると、みんなの「口」が揃っていることのほうが珍しく、ラーメン気分の人もいればドーナツ気分の人もいる。
昔も百貨店の食堂やファミレスでなんとか「口」の違いをごまかしたが、同じ厨房で作られたうどんとカレーはどこか似た味に思えるから不思議だ。

フードコートがここまで市民権を得たのは、座席はいっしょだけど厨房は別という造りがいわゆる「多様性」を満たしているからかもしれない。
なんでもかんでも多様性という風潮こそ多様性がない気もするけれど。

飲食店のみならず、アパレルショップもリニューアル。
しかしあまりの混雑ぶりに嫌気が差し、僕はそこをスルリと抜けて、数百メートル先の別の商業施設へ。
そちらでも対抗セールを開いているだろうと思ったからだ。

初めて〈しまむら〉に入ってみた。
ちょうど欲しいものもあったので店内を物色してみたら、なんという安さ。
安い店とは知っていたが、まさかここまでとは。
同じようにプチプラで鳴らす〈ユニクロ〉が世界規模の展開を見せるのに対し、〈しまむら〉はどこか泥くさい(個人のイメージです)。
だからこそこれまで〈ユニクロ〉には行っても〈しまむら〉には行かなかったのだ。

でもちょっと見るだけのつもりが、いつのまにか激安価格に目が眩み、失敗しても懐も痛まないと、欲しかったものを買ってしまった。
久々に欲しいものをあまり悩まずに買えた喜びが芽生える。
買い物に行って何も買わずに帰る虚しさは誰しも経験があるだろう。
お、しまむらはレジ袋も無料なのか!と小さなことにも感動する。
意気揚々とその袋をぶら下げて帰る。

途中、リニューアルなって賑わうくだんの商業施設の前を通る。
入口の入場制限も解かれ、混雑は先ほどよりましになっている。
なら少し見てみようかな。
おぉ、館内はちょっとハイグレードな輝き、新築に似た香り。
あ、あそこの店でちょっと見てみよう。

僕はしまむらの袋をぎゅっとカバンに隠した。

(2023/10/20記)

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