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デジタルはあらかじめ意図的に情報を劣化させている

先日、ドット絵をモチーフに、ギザギザがデジタルの証と記事にした。

記事中、デジタルが現実より汚いことについてまた書くと宣言したので、そろそろと思い、まずは自分の過去記事を検索したらデジタルに関する10年前のエッセイがヒットした。
(300字の短篇なので、この際読んでいただければ嬉しい)

今日はこの記事から引用しつつ、少し説明を補ってみよう。
デジタル化にもいろいろあるが、話を簡単にするために音声に絞る。

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下図のように、原音をそのまま聴くのが理想だ。

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音はもともとアナログ信号。
滑らかな線で表され、0と1の間に0.5や0.743など中間値は無限にある。

この原音を忠実に記録し伝えることはできるのだろうか。
上述の過去記事より引用してみよう。

アナログは元々100%の情報を持っているが、劣化しやすく、伝えている間に情報が変化して雑音や色にじみを生じる。

これを図示するとこうなる。

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アナログの特徴である中間値が無限というのが逆に弱点となり、0.5だった値が何かのきっかけで0.51や0.49に変化しやすくなるのだ。
アナログ方式を採る限り信号の変化は必ず起こり、雑音となる。
それがアナログの宿命だ。

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デジタルはどうだろう。
同じ記事から引用する。

対してデジタルは劣化しにくいから、いつも鮮明。

デジタルを図示すればこうだ。

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デジタル録音は、原音からとびとびのデータを作って記録する。

デジタルは中間値が有限だ。
たとえば0から1までを10段階で表すなら、0.1、0.2はあっても0.15はない。
また、0.2で記録された情報が伝送中に0.21になりかけても、そんな値は許されないから0.2のまま。
つまり、情報量が小さく効率的、かつ劣化もない。

なら万々歳か?

しかしこのデジタルの気にくわないところは、劣化しにくいようにあらかじめ情報を間引いておこうという考え方。

そう、デジタルがあらかじめ信号をとびとびに間引いて情報量を減らしていることを忘れてはならない。
アナログの場合やむを得ず情報が劣化してしまったのに対し、デジタルはあらかじめ意図的に情報を劣化させているのだ。

もちろん下図のようにメッシュを細かくすれば、より原音に近づけることはできる。
「ハイレゾ」と呼ばれるものだ。

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CDは「44.1kHz/16bit」、つまり約4万4千分の1秒ごとに約6万5千段階の信号で記録するが、これに対し「192kHz/24bit」のハイレゾなら、19万2千分の1秒ごとに約1,677万段階の信号で記録する。

このあたり、「走る走る、ギザギザの僕が延々と走り続ける」の記事で実験した、メッシュを細かくすればドット絵が原画に近づく話と同じだ。

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しかしどんなに細かくデジタル化しても、ギザギザは永遠に消えない。

世界の技術力は、情報を劣化させずに伝えることをあきらめ、あらかじめ少し劣化させておく方法を採ってしまった。

ギザギザがデジタルの証であり、現実より確実に汚い、というのはそういうことなのである。

(2022/2/26記)

サポートなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!