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飛び込もう、手に取ろう

毎年この時期になると、わりと大きな力を傾けるものがある。
32年間、1年も休まずずっと続けている名簿作りだ。

僕は大学時代にテニスサークルに所属し、その代表を務めていた。
メンバーはみんな仲よしで、卒業後も同回生だけで同窓会を組織し、僕は永年幹事としてメンバーの名簿を毎年作り続けいるのだ。

名簿といっても単なる住所録ではなく、毎年メンバーに原稿用紙を送って近況を書いてもらい、それを印刷製本してみんなに送る会報だ。
僕は毎年、その名簿のおもて表紙とうら表紙で完結する2コマ漫画のようなイラストを描いている。

テニスサークルの名が〈キャロット〉だったこと、同窓会の名が〈にんじん倶楽部〉であることから、イラストには必ずウサギが登場する。
その時どきの世相や僕の個人的な思いを代弁する、顔を見せないウサギ。

昨年は、長年続けた安定の会社勤めに別れを告げ、自ら選んで茨の道を歩み出した自分をウサギに重ねた。

さて今年。

昨年の名簿を出してすぐ体調の異変を感じ、入院・手術となったため数か月は身動きが取れなかったが、そのどん底から復活して開業届を提出し、晴れてフリーランスとして歩みはじめた。

自分の信じる道を心の赴くまま歩く幸せを今、噛みしめている。
たとえそれがゴツゴツの道なき道であったとしても。
そして僕は、その道すがらいくつもの小さな芽を見つけた。

岩山に迷い込んだウサギたちもどうやら見つけたみたい。

おもて表紙

こ、こんなところにもニンジンってあるの?
引き返さなくてよかったよ!
いや、でもこれは幻を見ているだけかもしれないよ?

うら表紙

幻かどうかは見ているだけでは分からない。
大鍋でグツグツ煮てみよう。
僕たちにとってニンジンは食べて初めてニンジンだからね

見落とす人もいっぱいいる中で、その芽に気づいたということは少なくとも自分の眼鏡には適ったということだ。
しかしその芽が自分にとって有用なものか、本当に必要なものかは、ただ遠巻きにして見ているだけでは分からない。

飛び込もう、手に取ろう。
そして一歩一歩、前へ、また前へ。

(2023/12/10記)

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