◎虚空◎

鏡の国のカルテ。 いつか自己の深い場所を巡り、そして遠い宇宙のどこかまで辿りつけます…

◎虚空◎

鏡の国のカルテ。 いつか自己の深い場所を巡り、そして遠い宇宙のどこかまで辿りつけますように。

最近の記事

スティッキーズの文章から

マンションの向かいの部屋に住んでいるおうちの人と、猫たちと一緒にいる。自身の残酷な一面を自覚しているので、それらを傷つけてしまう事が恐ろしく思う時がある。猫たちがわたしの腕や腹に眠たげに、安心と信頼を表すように身をあずけている姿を見せてくれている際にも、ふと狂気めいた感情に溺れる事がある。それはリーフエッジの外のディープブルーへ潜っていくような感覚、水中で呼吸を我慢している際の鼻から少しずつ息が漏れるように、自身の狂気が漏れ出やしないかという考えが思考を支配するのだ。 確

    • 雪原の中

      窓から望む一面の雪景色、この豪雪地帯では、どうも半月から新月に向かっている時は晴れる日が多いような気がする。今は午後で朝の雪の煌めきは無く、雪はほのかに空の青を薄く受け止めてながら山の影の色と白が心地よく混ざり合っている。 この地域では、冬季鬱になる人が多いらしいのだけど、虚空はこの季節が、雪が、山々の稜線が、この上なく美しく、物静かに寄り添うように在ると感じている。都会に暮らしていた時には考えもしなかった感情を噛みしめる事ができる。 夜遊びの時間はTattooのデザインの

      • 頭を丸めるとは

        禊だの病気だの憶測が横行する中、こちらに答える義務も無く、淡々と伸びた髪を刈り続け数年が経つ。ネガティブな反応は相変わらず少なくはない。フランスの身体改造アーティストが言っていた事を思い出す。文明人に毛は要らない。だ。当時は自分が坊主にする事があるなんて思いもしなかったから、彼の存在も言葉もすっかり忘れていたが、最近ふと思い出した。 寒い日は至極気持ちの良いストールを頭からスッポリとかぶり、暑い日は極上の薄手のストールをフワりとかぶり、風の流れのままに任せ歩く。短く刈った髪の

        • 人間界への旅の始まり

          3輪の赤いハイビスカスの咲いている寺院の一室、まだ早朝の爽やかな空気が涼しげに残る時間に、虚空という者が産まれた。胎内から窺い知っていた外の世界に行くのは恐ろしかったが、是と云うシグナルを受け取ったから仕方がなかったのである。外での初めての記憶は、自らの産声でも産湯でも乳の香りでもなく、甲高い沢山の音と声、ジョリっとした初めての感触、それは心地い良いとは言ず、控えめな表現でも不愉快極まりない感覚であった。まだ目も見えない虚空に触れる無遠慮な世界が始まってしまったのである。虚空

        スティッキーズの文章から

          虚空は静寂を愛す。

          平手打ちをくらった後に鳴るキィィーンと云う音を飼っている。まだ親しくはなっていないけど、確実にわたしはそれを認識し、飼い慣らそうとしている。 子供の頃から聴こえていたその音は、他の誰にも聞こえて無いようで、幻聴なんだと思っていたし、それが普通だったし、何か嫌な感じ。で、 聞こえないふりをして過ごしていたんだと思う。 感覚過敏症について知ったのは最近の事で、わたしはこの現象にやっと名前が付いて安心する事が出来た。 蛍光灯やテレビの光や音は、集中力を奪い、わたしを疲弊させる

          虚空は静寂を愛す。