平手打ちをくらった後に鳴るキィィーンと云う音を飼っている。まだ親しくはなっていないけど、確実にわたしはそれを認識し、飼い慣らそうとしている。

子供の頃から聴こえていたその音は、他の誰にも聞こえて無いようで、幻聴なんだと思っていたし、それが普通だったし、何か嫌な感じ。で、
聞こえないふりをして過ごしていたんだと思う。

感覚過敏症について知ったのは最近の事で、わたしはこの現象にやっと名前が付いて安心する事が出来た。

蛍光灯やテレビの光や音は、集中力を奪い、わたしを疲弊させる。症状に名前が付いたおかげで、家の人の理解を得て幾分楽に過ごせるようになったのは、本当にありがたい。

相変わらず冷蔵庫は唸るし、近くの家の物音だって聞こえる。それに頭の中の音も頻繁に鳴る。
だけど虚空は耳が良いのだから、音楽だって聞き取れる音域も広い。それは悪い事だけでもないんだ。

時間もエネルギーも使うけど、集中出来れば静寂だって無い訳では無い。こくうは虚空だから、与えられたものを受け入れる事が出来る。

虚空は静寂を愛し、
こくうは虚空を愛す。

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