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祖父の薬と英字ビスケット

今は亡き父方の祖父は、明治生まれ。ハイカラな食べ物が好きだった。
毎週末、お昼のメニューは決まってスパゲッティだった。
昨今はどこのスーパーでも買えるが、昭和の時代はまだ珍しかったオートミールも好きでよく食べていた。

祖父には少々変わった習慣があった。薬を飲むときに錠剤と英字ビスケットを用意してから飲むのだ。しかも、錠剤1錠につき、一つのビスケットをセットにして準備をする。

1度に飲む錠剤は5,6錠はあっただろうか。それとももっと多かったかもしれない。正確な数は覚えていないが、結構な量だったのは間違いない。

薬の不味さと苦さを緩和させるためらしいが、子供心にも、1錠に1個じゃなくて全て飲み終えてから、1,2個のビスケットでもいいのでは?お腹がいっぱいになりそう、食後に飲む薬だし・・・と思っていた。

そんな心配をよそに、祖父は食後のテーブルに何かの儀式でも始めるかのように錠剤と英字ビスケットをうやうやしく並べていた。

昨晩、私は寝る前にふと祖父のその姿を思い出していた。

テーブルに並ぶたくさんのローマ字。

まさか、

祖父はランダムにローマ字を選んでいるようで、実はそれらを並べ替えて英単語にしていたわけじゃ・・・。

確かめたくても、それはもうできない。




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