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いじめられるのは、きみのせいじゃない。

中学生時代、ぼくはいじめられっ子でした。中1の終わり頃から、中3の前半くらいまで。最初から標的にされていたワケではなく、何がきっかけになったのか、だんだんと一部の人が話してくれなくなりました。一部の人というのは、まぁー、やんちゃな人達のことです。(あえていじめっ子とは書きません)

でも、独りぼっちではありませんでした。当時からアニメ好きだったんですが、アニメ好きのオタク仲間はずぅーっと仲良くしてくれていたので。それが唯一の救い。彼らがいなかったら‥なんて考えると、今でも恐ろしいです。

なんで学校に行ってたのか?仮病でもなんでもいいから、サボることだってできたのにと。

そんなことを言われそうな気がしますが‥

親に心配をかけたくなかったからなんです。

今回は、中学時代のいじめ経験をもとに「大丈夫。君のせいじゃないから」というメッセージを届けていきたいと思います。誰にも言えなかった当時のぼくに届いたらいいなぁ。もう、大丈夫だよって。


【それは突然始まった】

入学してからしばらくして、メールアドレス交換大会がありました。その頃はまだなんの問題もなく、その会に参加して色んな人とメールをしあっていました。

しかし、そろそろ暑くなってきたという頃。ぼくが喋るとクスクスされることが増えてきたんです。ぼくが「〇〇だよね」と話し出しても誰も答えてくれない。目を合わせてまるで「無視しようぜ」と言っているような雰囲気。でもまだぼくはそれが“いじめ”とは認識できていませんでした。

「え?なになに?なんで誰も答えてくれないの?だってほら、君も君もこのあいだまでメールしてくれてたじゃん。」

それから毎日のように人の目を見ながら‥いや、様子を伺いながら喋る日が多くなっていきました。変なことを言わないように、当たり障りないことしか言わないように、質問されたことだけに答えるように‥と。

誰でもできる喋るという行為。喋ることについて、それまでは何にも考えていませんでしたが、だんだん怖くなっていってしまったんです。

タイミングよく夏休みに入ったので、その変な空気は一旦収束。時間が経てばなんとなくなくなるだろうなんて思っていました。学校生活のことは忘れ、遊びまくる毎日。結果、宿題は全部終わりませんでしたが、あれだけ遊べたんなら成績くらいなんでもいいやー!といえるくらい楽しかった。


夏休み明けの学校。1か月ぶりに友達と喋るんだーなんて思いながらワクワクしていたら‥。現実は、変わりませんでした。夏休みに入って、喋れる機会がなくなったから止まっていただけであってまた再開。

卓球部に入っていたんですが、部活仲間もなんだかぼくと喋る時には歯切れが悪くなっていて。たぶん、ぼくと話しているところを見られでもしたら都合が悪かったんでしょう。


授業で何かを発表するときにもクスクスされて、変なあだ名をつけられて、廊下でむやみやたらに名前を叫ばれたりして。

あぁ、一部の人たちと一緒に授業を受けるのが嫌すぎて、トイレにこもってたことがあったっけ。何をするわけでもなく、窓から顔を出してただボーッと、少し涼しくなった青空を眺めていました。

チャイムが鳴ってから教室に戻り、先生から「どこ行ってたの?」と言われてたんですが「お腹が痛くて〜。ずっとこもってましたー」と何度も同じ嘘をついてたので、すっかりオオカミ少年に。素行は悪くない、大人しい不良になっていきました。


【どうしても許せなかった人】

だいたいのことは、心を殺して受け入れていればなんとなかったんです。我慢していれば、そのうち終わりますから。でも、1人だけどうしても許せなかった人がいた。

S君。S君は、ぼくのことをなにがなんでも孤立させようとしてきました。

当時、カードゲームが流行っていて「みんなであの店に集まろうぜー!」となったときに「え、その店どこにあるの?」と聞いたら、S君は無言でみんなに指図?合図?するかのような目線を送り「あー‥俺たちもわかんないんだよね」と言わせていて。

「いやいや!集まろうってことは知ってるでしょ?え、どこどこ。教えてよ」

というとS君は痺れを切らしたのか堂々と

「おいっ。有野に教えんなよ。来んだろ」

と言い切りました。本人を前にここまで言い切るのは清々しいです。

「え?あのさ、ぼくお前になんかした?何?なんなの?」

「は?うるせーよ。いいから来んなよ」

シュッとしていて、足も早く女子に人気があったS君。S君がぼくを嫌っているという理由で、S君を慕っている一部の同級生からも無条件に嫌われていました。


こんなこと、書いちゃいけないと思うんですが、当時の気持ちなので、時効ということで許してください。

もしまた次、理不尽なことをS君が何かしてきたら‥手を出そうと思っていました。

はさみやカッターなど、授業で使う範囲内での刃物は持っていたので、次きたら‥次来たら‥と待ち構えていたんです。

しかし、たまたまだったのか1週間くらい何もされない日が続きまして。さすがに1週間も経てば、だんだん怒りもおさまってきます。そのときふと

「あ、他にいろんなことができたはずなのに、ここ最近あいつのことばっかり考えてた。なんかもったいないな」

感じたんです。仕返しに時間を使うことの無駄さ。やり返すことに一生懸命になるのではなく、自分のやりたいこと、気持ちを休めることに時間を使う。そんな人に危害を加え、自分に前科がつくほど後悔することはありませんから。


【和希(かずき)の存在】

蛇口に指を当てて勢いをつけてトイレで水をかけられたり、ボクシングを習っているという体格の良い同級生に肩を殴られたり、野球部の大将に目のあたりに頭突き食らわせられてしばらく眼帯生活が続いたり、下駄箱から上履きがなくなることは当たり前の毎日。

一つ一つ、すっごく嫌でした。ある種の防御策だったんでしょうか。“無”になることにしたんです。何をされても、心を殺して淡々と反応する。

キモいと言われたらすいませんと言い、口の左側のホクロがどうのといわれたらすいませんと言い、何をされても謝っていました。自分1人じゃ何にもできない。それが自分で自分を救う、傷つかないようにする方法でした。


そんなとき、いつも助けてくれていたのが、ちょっとおバカな同級生、和希(かずき)です。

和希は、オタク仲間とも一部の人達とも両方を行き来できた人。誰にでも好かれるような愛嬌のある奴で、テストの点数が悪くても「ねぇ!見てみてー!5てーん!マジで全然わかんなかったー!あはは!」と平気で言えるような明るい性格。ぼくとは真反対でした。

「和希が話してるあいつら‥苦手なんだよね」

と訳を説明したら

「あっ、そうだったんだ。わかった!」

と言い、何がわかったんだろ?と思ってたんですが、一部の人たちがぼくの近くに来たら、背中を向けて立って、見えないように壁になってくれてたんです。

「行った行った、平気だよ」

「ありがとう」

‥嬉しかったんです。嬉しかったんですけど、なんでぼくがこんなコソコソしないといけないんだろと思ってしまって。ぼくはやられている側なのに、何もしてないのに。なんでぼくが気を遣わないといけないの?って。

でも、これ以外にやりようがありませんでした。

学年主任の先生もいろいろと助けてくれましたが、その話はこちらに。


SNS、友達付き合い、会社。いろんな人間関係がありますが、理不尽に対して一生懸命にならなくていいと思うんです。大丈夫、生活する術はそこだけじゃありませんから。理不尽は、本当になんでもないところから言いがかりをつけられます。

親に心配をかけたくない。その気持ちは今でもそうです。あ、親以外にも増えたかな。関わってくださる周りの人。大切にしたい事を見つけられたから、毎日なんとかやれています。ただ、折れそうになる日もありますけどね。

最初は向き合ってみる。でも、どうにも話し合ってくれなそうであればもう、いい。どっか逃げちゃいましょ。行った先で考えればいい。人付き合いも、仕事も、人生も。


次回「コンプレックスを武器に」


ナレーター
ありのひろき

シリーズ記事「僕には喋りの仕事しかない」

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