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声優になりたかったけど、喋ることに緊張する

声優になりたい!と志高く、演劇専門学校に入学にしたのもいいものの、肝心なことを忘れていました。

「やっべっ、緊張しいだ」

舞台やイベントではお客様の前、アフレコやナレーションではスタッフさんの前で喋る。

ここまで想像ができていませんでした。

お芝居をお仕事にしていくことは考えていましたが、誰かの前でやるという前提が完全に抜けていた。

「あの‥だれか、緊張をなんかする授業をしてください‥」


前回「言葉がつまってしまう」

【喋る以前に‥緊張しまくる】

とはいえ、見栄っ張りだった僕は「ん?緊張してませんけど?落ち着いてのぞんでいますよ?」感を出していました。同級生の目は誤魔化せていましたが、先生‥プロの目は、やっぱり誤魔化せませんでしたね。

「緊張してたでしょ?」

「ヒッ!そ、そうですね‥」

授業はなんてことないんですが、オーディションや外部の方が来てくださる特別講義内での発表(自己PR)では、ガチガチになってしまいます。なぜか、こういうときほど同期たちはいつものように発表できているんですよ。

「あの‥緊張って、どうしたらなくなるんでしょうか?」

「なくなんないし、なくさないほうがいいよ。緊張感のある現場のほうがいいもんができるから」

「いや、そりゃそうでしょうけど‥」

今の緊張のせいで困っているので、これをまずなんとかしてほしいんですよって。他力本願すぎですが。


ある日の舞台演技の授業。入学したての同期たちはまだ打ち解け合えず、慣れていないという緊張感がありました。

「有野優樹です!よろしくお願いします。特技は声帯模写で、趣味は散歩です」

『緊張してる?そんな慌てなくていいよ』

「え?いや、そんなに‥」

『ほんと?手、前に組んでるよ。それ、自分を守る仕草だから。ほら、また』

偉そうに見えていたのかもしれません。手を下腹部あたりで組んで、上品な店員さんみたいなポーズをしていました。

気持ちや表情は作れても、体の動きまでは作れません。後から言われて気づいたんですが、みんなの前で喋っている最中、頻繁に鼻を触っていたそうです。これも緊張の表れ。


【セリフ覚えの悪さを実感】

1番最初に辞めたのは、舞台でした。理由は、セリフ覚えが悪かったのとお金がなかったから。

経験のためにと舞台を何本かやりましたが、出番じゃないときには袖でいっつも次のセリフの確認をしていました。それくらい全然覚えられなくて。

「これ(舞台)を商売にしていくのは、難しそうだな‥」

演出家から

「ひろきは結構忘れるから、みんなもカバーするように」

と言われるくらい、公認の覚えの悪さでした。わかってもらえるのはありがたいですがツラくて‥。みんな、自分のお芝居で精一杯なのに、人の覚えの悪さなんてカバーしてる場合じゃないんですよ。
そりゃ不満も買いますわ。なので、とてもじゃないですけど、これでお金を貰っていくなんて事は、考えられませんでした。

たぶん、この感覚は僕だけなのかもしれません。たとえば、舞台の稽古中。最初のシーンから稽古していく中で演出家に

「あ、ストップ。ここのシーンはもっとこういう感じで。はい、じゃあ〇〇のシーンから再開します。どうぞ」

と、言われたとしましょう。はい、もうこれだけでセリフが出てこない。最初のシーンから順番にセリフを入れているので、いきなり「はい、このシーンから」と言われても、セリフがパッと出ないんですよ。

若手のうちは小劇場の舞台に(比較的)立てる機会はありますが、お客さんが呼べなかったので収入にならなかったんです。
舞台には(作品や団体・劇団によって違いますが)チケットノルマというのがあり、1人呼ぶ事にバック数百円(3000円のチケットだったら1人につき500円など)貰えます。稽古分の出費を考えたら赤字も赤字。気持ち的にも金銭的にも続けられませんでした。


【後輩達が活躍していく】

伸び悩んで、何をすればいいのかわからなかったとき、自分よりも遅く入学してきた後輩達がどんどんお仕事をとっていきました。

心のどこかで、励ましや慰めを期待していた。誰かに「大丈夫?」って、言ってもらえないかなって。

そんなことをしていたから、遅れてしまったんです。その間、積極的な受け身になっていました。捻くれたり、拗ねたりしていてもしょうがない。目の前にきたこと(オーディション、授業、課題)をとにかく一生懸命やろう。あばらの一本くらい折れたっていい。喉が潰れたっていい。

嫉妬や羨ましい気持ちをかき消すように、思い出す暇を作らないようにやり続けました。必死に。必死に。

、、、だめです。

昨日今日いきなり頑張ったからって、都合よく結果なんて出ないんです。でも、声優になりたい。だけど、なれないかもしれない。なれなかったら僕、どうすんだろ‥。頑張るけど、頑張っても何にもなれないかもしれない。

高校生の頃から、継続的に毎日頑張るのではなく、いっときだけガッと力を入れてなんとかしようとするクセがありました。

バイトやら趣味やらではそこまで影響しませんでしたが、今回ばかりは顕著に出る。やらなかったらやらなかっただけ、結果に出てしまいますからね。

今の頑張りと、将来への不安。

交互にやってくるこの二つ。これは、今でも感じ続けていることです。


次回「やりたいことは、早い(若い)うちからやっておいた方がいい?」


noteを通して書籍出版を目指します!タイトルは「僕には喋りの仕事しかない~いじめから脱却できたのは“喋りのおかげ”だった」



ナレーター
有野優樹(ありのひろき)

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