父親が癌で亡くなってから、自分の身体を信じられなくなってしまった。

痛みや違和感を感じていなくても、何か黒くて悪いものがいつの間にか体内を侵蝕しているイメージが一度浮かんでしまうと、心拍数が上がり、身体中が熱を持ち、チリチリとした感覚が皮膚にまとわりつき、それは子供の頃に図鑑を読んでいたら急に毛虫のページが出てきて、ここは家の中で布団の中なのに足元に毛虫が這ってくるような気がして、確認のため、また万が一毛虫がいた場合はそれを払うために足をばたつかせた、あの感覚に近い。

健康診断を受けても、その度に払拭されて透明になった強迫観念はすぐに曇りはじめる。次の健康診断までの日々は緊張の夜を過ごし、先月受けたばかりだけど明日診てもらおうかな、と内視鏡検査が辛くないと評判の北千住のクリニックのホームページを眺めながら就寝する。
しかし、朝起きると高まっていた恐怖は鎮まり、結局は何もせず夜を迎える。実際は大した不安を感じていないのかもしれないし、元来から備わっていた面倒臭がりが、元来ゆえに強さを発揮して不安をねじ伏せているのかもしれない。

恐怖と不精、矛盾する二つの感情は、ある一点で折衷する。
その一点とは、しじみ汁だ。

しじみ汁は体にいいと聞いたことがあるし、味噌汁は好きなので美味しく飲める。薬やサプリを服用し続けるような、健康目的だけの淡白な摂取ではないので生まれつきの怠惰な性格でも続けられそうだし、日常的に飲むだけで健康になれるなら、全部ではないだろうが、日々の不安は多少なりとも解消されるかもしれない。

しじみには疲労回復につながる栄養素が多く含まれている。オルニチン、タウリン、カルシウム、鉄分、ビタミンB類など。 カルシウムや鉄分が体に必要なことはなんとなくわかる。そしてこの中でも特に注目されているのが、オルニチン・タウリン・ビタミンB12。この3つの栄養素がそれぞれ肝臓にとっていい働きをしてくれる。これらの栄養素は水に溶けやすく、おみそ汁をはじめとする汁物でいただくのがおすすめ。 また粘膜を保護し、風邪予防を助けたり、動脈硬化を防ぐ栄養素や、骨を健やかにするカルシウムが多いのもうれしいポイント。オルニチンは遊離アミノ酸の一種で、体内のエネルギー生成をになっている。そのオルニチンが働く場所は肝臓だ。肝臓は様々な役目を果たしている臓器である。まずは代謝。食べ物から糖やたんぱく質、脂肪を取り出す。次にそれらを体内で使える形に変えて蓄えていく。そして、エネルギーの元として必要な時に届けてくれる。肝臓の働きでは解毒も大切。アルコールや必要以上に摂取した薬物、老廃物などの有害な物質を分解してくれる。体の負担にならないように無毒化してくれるのだ。また、肝臓では「胆汁」も作られており、胆汁は、脂肪の消化吸収を助ける消化液だ。このように様々な働きをしている肝臓の中で、オルニチンはアンモニアと結合する中間体として重要な役割をしている。たとえば、オルニチンは代謝の部分でアルコールの分解を助けている。具体的に言えば、二日酔いの頭痛や吐き気を抑えてくれるのだ。また、疲労回復効果も認められている。オルニチンを摂取した後に運動した場合、疲労感をあまり感じないという報告があるようだ。タウリンもアミノ酸の一種。また、肝臓の働きを活発にする栄養素でもある。その他にも、血糖値の上昇を抑えてくれる、高血圧の方の血圧を正常値へ下げようとする働きがある、脂肪肝を正常に戻そうと働いてくれる、などがある。オルニチン同様、疲労感を解消してくれる。ビタミンB12はビタミンB群のひとつ。正常な赤血球を作りだす、神経伝達物質を合成してくれる、などの働きがある。腰痛や肩こりの解消、肝機能を高める働きもあるとされている。ビタミンB12は人体にとってなくてはならない栄養素であり、ビタミンB12が不足すると、悪性の貧血、神経障害、慢性疲労を起こす可能性がある。人によっては、うつ病や認知症の症状が現れてしまうことさえ。一方で、たとえ過剰に摂取してしまっても体外に排出されるしくみがある。摂りすぎて副作用が出ることはありませんので積極的に摂取するようにしよう。インスタント食品は生のものと比べて、栄養素が失われているというイメージがある方もいらっしゃるかもしれない。加熱処理をすることで肝心の栄養素が失われている？乾燥させ水分を飛ばすときに栄養素も飛んでしまう？といった疑問を感じることもあるだろう。でもインスタント食品の中には必要な栄養素が多く含まれていることを特徴としている商品はたくさんある。中には生のものよりも多くの栄養素が含有されているものまで。しじみのお味噌汁も例外ではない。「しじみ100個分」「オルニチン入り」など、しじみ特有のオルニチンやタウリンなどの栄養分を人工的に摂取できるように加工されているものがたくさんある。オルニチンやタウリンといった疲労回復効果のあるものを気軽にとれるというのはありがたい。疲れているときでも、簡単に用意できるものであれば、飲んでみようという気持ちになれる。また、味付けにもこだわりがあり、だれでも簡単に美味しく取ることができるような工夫がされている。豊富な栄養素を手軽に摂取することができるのはうれしい。日本で昔からしじみが元気食として有名で親しまれているのは、こんなにも豊富で体に良い栄養素が含まれているからなのだ。しじみは年中販売されている食材。食事の頻度を上げて一層の健康を目指してみませんか？