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Pay money To my Pain“SUNRISE TO SUNSET”鑑賞記録②人と人の繋がりの美しい在り方とそれを具現化したバンド物語~未視聴の方へお伝えしたいこと~

2023年11月17日にPay money To my Painの活動を映画化した“SUNRISE TO SUNSET”が公開されて以降、30年生きた人生の中でも最大限に感情が揺さぶられる日々を過ごしていて、その感覚を言語化しアーカイブしておきたいと描き始めた鑑賞記録。初回となる前回は、公開初日に見に行った際の公開直前までを綴った。

まだ映画本編のことは一言も触れてない。そんな前置き段階にも関わらず9000字近い文字量になるぐらいには、この作品を観ることによって湧き起こる感情の大きさ深さ広さが果てしない。それゆえ何編かに分けて書いていくことにしているのだが、やはり迂闊に言葉にできないというか、覚悟がいるというか。またも時間がかかってしまった。

2回目となる今回は、映画本編を見た時の感情を言語化しつつ、ネタバレ的な要素を省いて、まだこの映画を見てない人・ひいてはPay money To my Painというバンドのことを特に知らないという人に向けて、という形で書いてみたいと思った(ネタバレありの、PTPファン同士や映画を見た人と気持ちを共有することを目的とした記事は次回に書く予定)。

この映画、及びPTPのことが少し気になっているという人に、勝手にプレゼンさせていただくような格好です。音楽に救いや魔法のようなものを感じ信じている人には絶対届くような作品だと思っているので、騙されたと思ってお付き合いいただければ幸いです。

・作品のあらすじと自分がPTPを知らない人に届いて欲しい理由

あらすじは以下、公式サイトのものを引用させていただきます

“10代、20代にはもはや伝説の存在となっている日本を代表するロックバンド“Pay money To my Pain”。2004年に結成され、2006年にメジャーデビューを果たすと、他を寄せ付けない、研ぎ澄まされた感性で唯一無二の存在へと上り詰めていく。

誰もが、彼らの未来にラウドロックシーンの希望を見出していた。その矢先2012年12月30日、ボーカル K が急逝。そして、2013年12月30日にバンドは活動休止となった……。

それから 7 年後、レーベル直系の後輩であり現在のラウドロックシーンを牽引する“coldrain”からの熱烈なオファーを受け、2020年に <BLARE FEST.> で一夜限り奇跡の復活を果たし、新旧のファンを熱狂させたのは記憶に新しい出来事である。

本作『SUNRISE TO SUNSET』は彼らの歩みと時代、その影響力を未発表の映像、メンバーと関係者の証言で世に問うロックバンドとしての人生を詰め込んだ 145 分の作品である。 なお、映画本編では“BLARE FEST.2020”での“Pay money To my Pain”LIVEパフォーマンスが全編ノーカットで初公開される。

― Pay money To my Painが遺したものとは?”

引用元 https://paymoneytomypain.com/

このように、PTPは実在したバンドで、今から10年以上前となる2012年にボーカリストのKが他界している。Kという稀代のカリスマ、圧倒的なライブパフォーマンスと表裏一体の繊細で美しい人間性、その尊さに惚れ込んだメンバーや周囲の仲間たちとの輝かしくも苦悩の日々。

最愛の存在を失って、バンドとしてはボーカリストの急逝という究極の痛みを抱えて、それでもその日々の愛おしさを大切に、そしてその先を行こうとする人たちの実直な姿。実在の人たちの実際にあった話なのに、それこそフィクションの映画より映画じみたエモーショナル極まった物語。それを見事に145分に封じ込めたのがこの“SUNRISE TO SUNSET”、というのがなるべく端的に表したこの作品への自分の見解。

そもそも何故PTPを知らない人にこの映画を見て欲しいかと言えば、自分があらゆる面において自分がPTPというバンドに心酔してきた理由である「人と人の繋がりの、純粋で美しい在り方」及び「現実の重みに対し常に嘘をつかず、ありのままの姿を見せ、その上で前を見ようとする姿勢」そして「そんな人たちが紡ぐ音だから聞き手の心に強く響く」という魅力を、この映画が完璧にまとめ上げ表現してくれていると感じたからだ。

先述した3点の魅力において、PTPは世界のどんなバンドより最強だと自分は思っている。正直に言えば他にも尊敬し愛するミュージシャンは沢山いるし、表面的な音楽性の好みでいうとPTPより好きなバンドはいる。それでもこの魅力においてPTPに勝るバンドは海外のバンド含めても知らないし、何よりその魅力こそ音楽という概念を信仰する自分にとっては何より強く美しいものだった。

自分は幸運なことに、Kがまだこの世界にいて圧倒的なライブを繰り広げていた姿をリアルタイムで追いかけられた身なのだが、その時点からもちろんそうしたPTPの魅力は間違いなく世界一だと思っていた。そしてその大きさはKが亡くなってからのこの10年の間にファンになったという沢山の人がいるという事実にも表れていると思う。ジャンルや好みといったものを超える圧倒的な普遍性は、そうした「魂を揺さぶる音楽である」という証拠に思う。

バンドといえど、規模が大きくなればなるほどビジネスパートナーとしての側面との兼ね合いは避けて通れず、脱退や解散といった結末を迎える方が常で、普遍で続けられることの方が奇跡に近い。そんななかでPTPは「このメンバーでなければ意味がない」という、他のバンドであれば理想論や綺麗事に終わってしまいそうな価値観を、言葉だけでなくあまりに実直な行動の数々で示していった。

そんな人と人の繋がりの究極を体現した事実が、この映画にしっかりと刻み込まれている。またKが亡くなって以降、PTPの尊さを間近で見てきた同世代や後続のバンドマンたちの想いが、その死の先の未来を紡いでいく姿もまた純粋で美しい(そうした一連の流れを踏まえて最後にフル尺で流れる、Blare Fest 2020での一夜限りの復活のライブ映像は、まさに後の世代へのバトンというニュアンスを帯びて実現したその意義深さを伴って、映画館の抜群の鑑賞環境も相まってまさにその場にいるような臨場感で堪能できる)。

だからこの映画は、音楽におけるそうした純粋な想いや在り方、それによって心が洗われて救われる魔法のような体験を知ってる人になら、誰にでも絶対届くものだと思っている(敢えて、言い切る)。

PTPというバンドのことを良く知らない、1曲も知らない、なんなら名前すら聞いたことなかった、という人にでも届くものだと思っているし、なんならそういう人にほど見て欲しい。絶対その人の価値観を変えたり強めたり、なんなら人生そのものを変えることだって有り得ると思ってる。

PTPがそれまで徹底して貫いてきたように、この作品においても脚色や綺麗事は一切存在しない。痛い想いも痛いまま描く、かといってただ感傷に浸らせるためのものでなく、Kがいつしかインタビューで言っていた「俺の歌詞は暗いけど、最後には希望が見えるように描いてる」を体現するように、最愛の人の死別という痛みをしっかりと受け止めた上で前へ向かうための温かさが残る。

・PTPを知らずに“SUNRISE TO SUNSET”を見た人たちの声

自分がこうして、「PTPを知らない人にほど見て欲しい」と思う要因は更に他にもあるのだけど、ひとつはこんな素敵なバンドがいたということの生き証人になる人が増えて欲しいということがひとつ(PTPのベーシスト・TSUYOSHIさんが「ここで語られてるエピソードも、こうして映画になることで初めて知って覚えてもらうことができて事実であり続けるけど、でなければ自分が死んでしまったら誰も知らない話になってしまう」と語っていた)。

それともうひとつは、この作品を見ることで気づいて大切にできることがある・その感性を持ち合わせてる人に届かないことはあまりに大きな損失だと感じるから。限りある命いう現実に目を向けて、後悔のないように物事を選んだり、その人にとって大切な誰かとの時間を大切にしたり。人は残酷な現実から目を閉ざしてしまうから、失くしてから初めて気づいて後悔することが多い。でもこのPTPに関わる人たちの生き様を見れば、そんな悲しい結末より前にできることに気づけると思う。


実際、PTPを全く知らないけど音楽に対するそうした感性を持つ友人数人に「見て欲しい」と依頼したら、全員「しっかり届いているなぁ。。。」と嬉しくなるようなリアクションばかりだった。「お互い長生きしよう、自分もそうするから」と簡潔な中に真意を言い表してくれた人もいれば、一緒に見て終始泣いてた人もいた。やはり、このバンドのことを知っていない人にでもこの作品のそうした本質は間違いなく届くということだ。

また、この作品を作った“茂木将”監督が「素敵なレビューでした」と紹介されていた、映画レビュー系YouTuberの方のこの動画はこうした感覚を裏付けるものだった。

なんとこの方、音楽好きではあるもののPTPのことは全く知らず、別の映画を見た際に予告編で流れた“SUNRISE TO SUNSET”が気になり、公開初日に鑑賞されたとのこと。にも関わらず涙が止まらなかったと。

また、この方曰く「公開初日ということで、周りはおそらくこのバンドをリアルタイムで(Kが生きていた頃)追いかけていたガチ勢の皆さんでいっぱいでした。開演前のただならぬ空気、固唾を飲んで見守る様子、ずっと泣いている人たち。そんな中で目撃できて幸せだと思いました。」とのことで。

それは長年のファンの身のこちらからしても、そのように言ってくださって本当に感謝しかない。初めて見る人にもそう感じてもらえるほど、この作品にはそうした力がある。茂木監督が、映画館をこの作品の公開の場に選んだ理由に「もうPTPを愛する人たちが、同じ目的でひとつの場に集まれる機会はない。でももう一度そんな集まる場所を作りたかった。」との仰ってて、純粋な願いは確かに叶えられたのだと思う。

・少しでも興味があるなら、見られる環境にあるなら、是非目撃してほしい

これだけの想いを抱かせるバンド・その歴史とその尊さに触れるおそらく最後の貴重な機会として、できることなら一人にでも多くこの作品に触れて欲しいと思っている。そしてそれぞれのその後の人生においてひとつでも公開をせずに生きることに繋がれば、PTPというバンドが・Kという男が人生かけて紡いだ歴史が活動を止めて尚その意義が更なる輝きを纏うことになると思う。

名も無い自分がこれを綴ったところで差したる影響力はないとわかっているが、書かないより書いて、たった一人でもきっかけになれば嬉しい。2023/12/10現在、徐々に公開終了する劇場も増えていて残り少ない期間のチャンスとなってきているけれど、追加で公開が決まった劇場もある。今後円盤化される可能性もあるけれど、是非映画館という環境の、迫力ある音と作品に没入できる空間で余すことなく受け取ることをお勧めしたいです。

次回は、作品の内容に触れつつ自分が感じたことを記録します。作品を見た人と何か共有できると嬉しいです。



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