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お気に入りの映画も、観られなくなる日が来てしまうかも

長いこと漠然と感じていた不安。
見ないようにしていても、それは影のように付き纏って暗さを増していく。今日はそんな不安の輪郭をより一層色濃くするような出来事があって、居ても立ってもいられず、この感覚だけは新鮮なうちに書き残しておこうとPCを立ち上げた。

朝、いつものように時事系のポッドキャストを聞き流しながら身支度をしていると、AIと映画業界の関係について話しているのが耳に留まった。

"映画業界はAIを恐るべきか?"

技術の進歩は、ほとんどの場合、より多くの機会を作り出す。
シアターでリアルにしか鑑賞できなかった演劇が、映画の登場によってより多くの人に観られるようになったように、また、ストリーミングサービスの普及によって映画がより身近な娯楽になり、その作品数自体が何倍にもなったように、新しい技術は決して悪いものではない。
今後、AIによって映画製作の工程を効率化し、少ない費用と手間で、より多くの人が手軽に映画を作ることができるようにもなるかもしれない。

しかし、ポッドキャストの討論の結論としては、より多くの人が機会を手にし業界の規模自体は拡大する一方で、現時点で儲かっている側に利益が偏るのを助長するだけという。経済観点のポッドキャストだったため、ここからは自分の解釈で言い直すが、要するに、人気のシリーズものやブロックバスターと呼ばれる大衆娯楽映画がより儲かるようになり、万人受けしないものは、たとえそれが一部にとても刺さる作品だったり良作だったとしても、注目を浴びる確率が格段に下がってしまうというものだった。
アルゴリズムによるレコメンドや口コミ、各ストリーミングサイトのトップに表示されるイチオシ作品はさらに多くの人に認知されるようになるが、それ以外は、もはや目にも触れない可能性が出てくる。

そんな脅迫にも近い情報に触れた後、たまたま目にしたのは、映画『ゴーストワールド』のリバイバル上映が決定したというニュースだった。Filmarksで確認してみると、やっぱり。TSUTAYAのアイコンだけ。どのストリーミングサービスでも観ることができない作品だった。
リバイバル上映が決まるようなカルト的人気を誇る作品でも、DVDを借りたり買ったりするか、期間限定で映画館に戻ってくるのを待つかしか鑑賞する方法がないのである。

自分が好きだと思う映画も、10人中8人が好きと言ってくれない限り、この世から観る手段がなくなってしまうかもしれない。
わたしにとって、それはとてつもない恐怖である。

アートは、鑑賞する人がいてこそ成り立つ。
映画も例外ではない。
誰かがそれを観て、心動かされ、
メッセージを受け取って、
友達とあーだこーだ議論して、
ひっそり心の拠り所にしたりして。
そうやって生き続けるものだと思う。
さらに、映画に限って言えば、
作品を再生するための手段を残し続ける必要がある。

いい映画を、死なせたくない。
でも、鑑賞する側が自分の意思をもって選び続けない限り、埋もれていって、気がついた頃には消え去っている映画も出てくる可能性がもはやゼロとは言い難い時代。そんな状況だからこそ、AIのおすすめとは違った映画の魅力の発信を、どんなかたちでも細く長く続けていけたらと思った、火曜日の夜でした。

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