voodoo girl

映画の色んな楽しみ方と後世に残したい ”名画” について。 好きな理由なんて、もっと自…

voodoo girl

映画の色んな楽しみ方と後世に残したい ”名画” について。 好きな理由なんて、もっと自由でいい。

最近の記事

  • 固定された記事

はじめに

こんにちは皆さま、 voodoo girl(ブードゥーガール)です。 これからたっぷりと大好きな映画について書いていきますが、その前に、noteを通してわたしが解きたい”呪い”についてお話しします。 その映画、面白かった? あなたの友達が、話題の新作映画を観に行ったと話しています。その友達に映画の感想を聞く時、あなたはなんと声を掛けますか? 毎回とは言わないまでも、「面白かった?」と聞いたことはないでしょうか。あるいは「どうだった?」と聞いた結果、「面白かった!」とい

    • 実はずっとキリアン・マーフィー推し

      今年のアカデミー賞で晴れて主演男優賞を受賞した『オッペンハイマー』のキリアン・マーフィー。 美しいブルーの澄んだ瞳に、 低くて質のよい、色気のある声。 繊細さ。脆さ。危うさ。ちょっとの狂気。 そんな雰囲気が似合いそうな顔立ち。 でも、妻役で共演したエミリー・ブラントに言わせると、実際の彼はとにかく「sane(良識があって正気)」な人間なんだとか。 そう、わたしはキリアン・マーフィーという役者が大好きなのです。 どちらかというと脇役として作品の質を格上げしたり、悪役に徹し

      • 映画#10 『哀れなるものたち』 / ノーフィルターで世界を見つめ直す

        いよいよ直前に迫ってきたアカデミー賞。 様々なかたちで映画制作に情熱を注ぐ業界人たちの努力が最高のかたちで報われる、あの瞬間。受賞スピーチを聴いていると、こちらまで夢を見させてもらったような気分になる。映画のようにドラマチックなこのイベントが、わたしは大好きだ。 今年のアカデミー賞の個人的大本命は、もちろん『哀れなるものたち』。ただ、評価されるであろう理由を並べると月並みな言葉の羅列にしかならなそうなので、ここではわたしが個人的に推している本作の魅力について、若干のネタバレ

        • 映画#9『ラストナイト・イン・ソーホー』/ “映画”というプレイリストを聴く

          この映画の主役は、 都会で奮闘する少女エロイーズではない。 主役は、間違いなく音楽だ。 監督のエドガー・ライトといえば音楽!というくらい、彼の作品では、音楽への愛やこだわり、通がクスッと笑えるネタが仕込まれていることが多い。 伝説的ゾンビコメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』では、迫り来るゾンビに対して、どのレコードなら武器として投げていいかを議論する主人公たちの会話から音楽オタク感が滲み出ているし、前作『ベイビー・ドライバー』ではThe Jon Spencer Blue

        • 固定された記事

          映画#8『シザーハンズ』/ 捻くれ者のファンタジーに夢を見る

          わたしはティム・バートンの大ファンだ。 小さい頃は、毎年クリスマスに『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』を観せてくれるのを指折り数えて楽しみにしていた。そこから『コープス・ブライド』や『チャーリーとチョコレート工場』など彼の映画はたくさん観てきたのだけれど、何よりも決定的だったのは、高校生の時に行った個展「ティム・バートンの世界」。彼が描いたキャラクター原画やその他作品の数々を見て、彼の美意識やメッセージ性にひどく共感し、そこでようやく、自分が昔からティム・バートンのファン

          映画#8『シザーハンズ』/ 捻くれ者のファンタジーに夢を見る

          映画#7『アメリ』/主人公の幸せがわたしの幸せになる

          「幸せになる。」 11月17日から始まったデジタルリマスター版上映のポスターには、真っ赤な、いかにもパリ・モンマルトルという雰囲気のある部屋と、アルバムを眺めるアメリと、このシンプルなキャッチコピーが収められていた。 こんなにも幸せが詰まった映画はない。 ザ・ハリウッド的な、キラキラした、誰もが憧れるような完璧なカップルが成立する結末とは違うけれど、むしろ、もっと普遍的なハッピーエンドがここにある。 自分と同じニオイをもつ人間と出会い、お互いに同類であることを直感し、

          映画#7『アメリ』/主人公の幸せがわたしの幸せになる

          お気に入りの映画も、観られなくなる日が来てしまうかも

          長いこと漠然と感じていた不安。 見ないようにしていても、それは影のように付き纏って暗さを増していく。今日はそんな不安の輪郭をより一層色濃くするような出来事があって、居ても立ってもいられず、この感覚だけは新鮮なうちに書き残しておこうとPCを立ち上げた。 朝、いつものように時事系のポッドキャストを聞き流しながら身支度をしていると、AIと映画業界の関係について話しているのが耳に留まった。 "映画業界はAIを恐るべきか?" 技術の進歩は、ほとんどの場合、より多くの機会を作り出す

          お気に入りの映画も、観られなくなる日が来てしまうかも

          映画#6 『インファナル・アフェア』/善悪の対立の行方を目撃する

          悪の仮面を被った善人と、善の仮面を被った悪人。対極の宿命を背負った2人の男たちが辿る道はあまりにも険しく、切ない。 本作は、洋画でも、邦画でもない、生粋の香港映画だ。ここまで洋画ばかり紹介してきたわたしが”名画”のひとつとして香港映画を並べることに違和感を覚えた人には声を大にしてお伝えしたい。 本作は、わたしのみならず、世界中の映画人が憧れて止まない正真正銘の傑作犯罪映画なのである。 その証拠に、巨匠マーティン・スコセッシ監督によって映画『ディパーテッド』としてハリウッ

          映画#6 『インファナル・アフェア』/善悪の対立の行方を目撃する

          映画#5 『メメント』/主人公の混乱を擬似体験する

          『インセプション』や『テネット』など、斬新な映像と難解なストーリーで日本でも知名度の高いクリストファー・ノーラン監督。本邦公開未定の『Oppenheimer』を除く全作を鑑賞したファンとしては、彼が世界から注目を浴びるきっかけとなった本作について語らずにはいられない。 鳥肌。そして、脳裏に焼きつくとはこのこと。初めて観た時の衝撃は大きすぎて、しばらくその魅力を触れ回っていたのを思い出す。今、改めて鑑賞しても至る結論は変わらない。 「この映画を作った人間は本物の天才なんじゃ

          映画#5 『メメント』/主人公の混乱を擬似体験する

          映画#4『マグノリア』/予想外の展開に目が点になる

          昨今、映画のネタバレから身を守るのは難しい。あまりに有名なシーンはSNSでふとした瞬間に画像が流れてきたり、口コミサイトは映画の核心に触れるような情報で溢れている。 まず初めにお伝えしたいのは、この映画は絶対にネタバレなしで観ていただきたいということ。ミステリーにありがちな“予想を裏切る展開”とか”大どんでん返し”とは毛色が異なるものの、3時間の果てに目撃する結末はあまりにも予想外なので、映画の中の登場人物たちと一緒になって「目が点になる感覚」を体験してほしい。 最近、驚

          映画#4『マグノリア』/予想外の展開に目が点になる

          映画#3『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』/カオスに身を任せてみる

          「これはどういう映画なの?」と聞かれると答えに困る。単純にコメディというにはメッセージ性が強くダークな一面もあるし、最近流行りのマルチバースのようなSF的要素もあれば、ハイクオリティなアクションもある。 でも、あえて一言で表すなら、普遍的な愛の話。 「ますますわからない」という人はとりあえずセーフティバーを下げて、EEAOという名のジェットコースターに身を任せてみることをおすすめしたい。遠慮なく笑って泣いてほしいので、隣の席にはぜひ親しい人を。 < voodoo gir

          映画#3『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』/カオスに身を任せてみる

          映画#2『ロスト・イン・トランスレーション』/異国の地TOKYOと出会う

          楽しすぎた旅の終わり。もう一度同じ場所を訪れた時にもしそれが楽しくなかったら、美しい思い出たちがその輝きを失ってしまうような気がして、その場所には二度と戻れなくなる。そのくらい意味のある時間を東京で過ごした2人のアメリカ人の物語。 正直、海外からの視点で見る日本はわたしたちが見るそれとは全く異なっていて、むず痒さを感じることが多い。本作でも、全力で言い訳したくなるシーンが多々ある一方で、東京で生まれ育ったわたしに異国の地TOKYOというこの街の違う表情を見せてくれるのも事実

          映画#2『ロスト・イン・トランスレーション』/異国の地TOKYOと出会う

          映画#1『プロミシング・ヤング・ウーマン』/シュガーコーティングされた毒を食す

          映画には、観客に伝えたいメッセージがある。 そのメッセージが社会問題や政治的なそれだとわかると、「現実から離れて楽しみたい気分」が台無しにならないよう、あえて選択肢から外すという人は少なくないと思う。仕事終わり、ソファに埋まってリラックスしたい時に、なんでそんな重たいことを考えなきゃいけないのか? 本作のメッセージも決して軽いものではない。それでもこの映画を強くつよくおすすめしたいのは、テーマとは不釣り合いなほど甘く彩られた映像とスクリーンから沁み出す毒の刺激に病みつきにな

          映画#1『プロミシング・ヤング・ウーマン』/シュガーコーティングされた毒を食す