ブランド品を同業者に売る「CtoBtoB」というコロンブスの卵~戦力外Jリーガー社長の道のり27
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2018年3月、バリュエンス(当時の名称は株式会社SOU)が東京証券取引所 マザーズ市場へ株式上場を果たしたとき、ビジネス的な“違い”として市場から評価されたのが、“コロンブスの卵”的発想のBtoBオークションの存在でした。
「買い取って、売る」のが当たり前だったリユース業界
質屋を見てもわかるとおり、当時のリユース事業者は顧客から買い取った商品を消費者に直接販売するBtoCのビジネスモデルを採用していました。今でもそのやり方が主流であることに変わりはありませんが、創業当初の『なんぼや』も、Yahoo!オークションを介してですが消費者に直接買取商品を売っていました。
店舗ではなくYahoo!オークションで販売する試みも当時は先進性があり、一定の成果を得ました。しかし、誰でも使えるプラットフォームだけに、すぐに先行者利益、優位性はなくなり、Yahoo!オークションから撤退した顛末は過去にこの連載でもお話ししています。
買い取った商品を誰に、どう売るか?
そのときの私には、買い取り品をそのまま『なんぼや』の店頭で売るという選択肢はありませんでした。
Yahoo!オークションから撤退したタイミングで考えたのは、買取商品を同業他社に売るBtoBモデルのビジネスです。
買い取った時計やアクセサリー、バッグなどのブランド品をtoBで販売するとはどういうことなのか?
簡単に説明すると、『なんぼや』などで顧客から買い取った商品を販売業者専用のオークションに出品し、同業他社に売る。それが私たちの売り上げになるというビジネスモデルです。
買い取った商品を同業他社に売るメリット
普通に考えれば、買い取った商品をいわゆる「仕入れ価格」で購入する同業他社に売るよりBtoCで直接消費者である顧客に販売する方が単価は上がります。しかし、私たちが扱っている「ブランド品」という商材は、ある意味で生鮮食品よりも“ナマモノ”みたいなところがあり、その価値は日々変動します。トレンドや市場在庫に左右され、新しい商品も次々に登場するブランド品を、いつ売れるかわからないBtoCで販売するよりも、BtoBでサイクルを短くして売るほうが効率がいいと考えたのです。
「ブランド買取専門店」に特化した理由
今思えばこの方向に舵を切ったことは大正解。在庫回転率を高めて得た資金で買取の窓口、顧客との接点となる実店舗を増やすことができました。
ビジネス環境の変化と私たちの進化によって現在はtoCビジネスも使い分けていますが、ブランド買取専門店『なんぼや』の出店フェーズだった当時は、中途半端に販売をせず、買取に専念することに大きなメリットがありました。
メリットの一つは先ほどもお話ししたように、古物商を営む同業者に対してオークション販売を行うため、商品の相場をリアルタイムに反映した、鮮度の高い状態で売ることができること。
もう一つは、店舗では買取しか行わないことで、鑑定士(現在はバリューデザイナーという名称で顧客のライフバリューをデザインする仕事として位置づけています)の専門性を高めることができることです。同じブランド品を扱うでも、買い取るのと売るのはまったく違うノウハウが必要です。人的リソースも限られていたので、鑑定、「商品買取の接遇」のスペシャリストを育てることに専念できる環境は、企業としても理に適っていました。
専門性を高めて深化したビジネス
もちろん店舗の造りやワークフロー、システムも買い取りに特化することができました。ビジネスがシンプルな分、改善頻度が増え、顧客の満足度を向上させることにもつながりました。
顧客目線でいえば、「お金がないから仕方なく来る」という後ろめたさや、「不要品を売りに来る」場所というイメージが一新され、「自分の大切なものを新しい価値に変え、誰かにつなぐ場」として利用してもらえる下地ができました。もちろん私たちとしても、それに相応しい店舗内装、接客クオリティにフォーカスしました。
このあたりの個別の“改善要素”は、すでにこの連載でも触れていますが、これらの実現を助けた仕組みがBtoB、もう少し詳しくいうとCtoBtoBのビジネスモデルなのです。
BtoBオークションという可能性と課題
2013年の4月には、自前のBtoBオークション「東京スターオークション(現STAR BUYERS AUCTION)」を立ち上げることになるのですが、それまでは当時すでにあった第三者が開催する業者専用オークションに参加し、買い取った商品を出品していました。
「とりあえず今あるものを有効活用しよう」と参加したオークションでしたが、そこはやはり「なかなか変わらない、変われないリユース業界」のこと。旧態依然とした非効率な運営が目立ち、早々に「自分たちでやった方がいいんじゃないか?」という結論に達しました。
とはいえ、硬直した古い体制があるということは、歴史も伝統もあるということです。
超後発の私たちが、自前で同業者を集めてオークションが成り立つのか?
新しい旗を立ててもすでにある「安住の地」を捨ててまで参加してくれる業者はいるのか?
経営者の先輩でもある兄からのアドバイスは、
「すでにオークションを行っているパートナーと組んで始めたらどうか?」
というものでした。
実際に、何社かと接触し、検討もしたのですが、なんだか乗り気がしない。
業界の旧弊を打破するにはやはり完全にコントロールできる形で始めたいと、自前でオークションを立ち上げることを決めたのです。
もちろん周囲からは無謀な挑戦に見えたでしょうが、この決断は過去の私の決断史上でも三本の指に入る、あの意志決定をした自分を褒めてあげたいと今でも思うほど、重大かつナイスな決断だったと思っています。
つづく
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