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「創業7年で上場」の真実。企業が上場する理由のリアル~戦力外Jリーガー社長の道のり26

21歳でガンバ大阪から戦力外通告を受けビジネスの世界に飛び込んだ私の物語も、私のキャリアと同じくサッカーよりビジネスに携わる時間が長くなってきました。
もちろん、Jリーガーとしての自分があったから、無心にボールを追いかけ、夢中になったサッカーがあったからこそという原点は変わりません。

今日は、企業にとって転換点となる大きな出来事、「上場」についてお話ししたいと思います。


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なぜ上場を目指したのか?

二人の兄にリユース部門を任されて以来、「業界の常識にとらわれない」ことを武器に成長を続けてきました。上場を目指したのもリユース業界の上場企業がほとんどなかったことが理由でした。

2007年になんぼや1号店を難波に開店したときも、2011年に株式会社SOUを創業したときも、私の思いの中心は「旧態依然、質屋然とした選択肢しかないリユース業界を変えて、顧客の問題を解決したい」という一点にありました。

Jリーガーから経営者にというと、アグレッシブを全面に押し出し稼ぎまくる、どちらかというと攻撃的な経営のイメージを持たれることが多いのですが、私は、ストライカーとしての嗅覚よりも、全体を見渡して必要なとき必要なだけ自分のテクニックを発揮するタイプのMFだった(プロでは周りのレベルが高すぎてその特徴を発揮することはできませんでしたが。笑)こともあり、若いときも「売り上げを上げるぞ!」という号令をかけた記憶がありません。

それだけ業界全体が変わっていくタイミングだったということもいえますが、顧客の問題を解決することがそのまま独自色、強みになって売り上げにもつながるいいサイクルができていました。

業界の不透明性を払拭したい

「上場を目指す」という経営判断についても、その時点で企業が株式を上場するということがどういうことかを正確に把握していたわけではありませんでした。

ただ、上場することで証券取引所が定めた一定の基準をクリアしているというお墨付きをもらえ、株主からも投資対象企業として認めてもらえるメリットは感じていました。

それまでのリユース業界は、実際はどうあれ、世間からはやはりまだまだ透明性という点に欠けている印象があり、利益を上げていても顧客からは「安く買い叩いて高く売っているのでは?」という懸念を持たれていました。

私から見ても古物、リユース業界の経営、特にお金のやり取りについては構造上、透明性が高いとはいえず上場することですべてがオープンになりそれが企業としての武器になるのではないかと考えたのです。

「7年で上場」の戦略的側面

世間に与えるインパクトが大きいというのも上場のメリットの一つでした。私自身は上場したからといって何かが大きく変わるとは思っていませんでしたが、わかりやすく認めてもらえる手段にはなります。
実際に「創業7年でマザーズ上場」というフレーズは、「元Jリーガー社長」との相乗効果もあって、多くのメディアに取り上げていただくきっかけになりました。

こちらについては、ある程度自覚的に「取り上げてもらいやすい、キャッチーなトピックを提供しよう」という意識はありました。

上場準備手続きを通して企業の制度、体制を整える

何度かお話ししていますが、上場の準備をする中で、家族経営的なところから企業としての規律や仕組み、制度、体制を整えるということも、当時の私たちには必要なことでした。

上場のためのさまざまな条件をクリアしていく中で、その部門の人たちがこれまで知らなかったことを知り、経験していく。
現在と比べて社員数も少なく、プロフェッショナルな視点からのアドバイスはもらいつつも自分たちでやるしかない状況だったので、当時のメンバーも「上場を経験した」ことはその後のキャリアの大きな武器になったと思います。

2018年3月、当時SOUという名称だったバリュエンスは東証マザーズへの上場を果たしました。

こちらも何度かお話ししていますが、東京証券取引所で古巣のガンバ大阪のユニフォームを着てセレモニーで鐘を鳴らしたとき、たしかにうれしかったですし、私も笑顔で写真に収まっているのですが、みなさんが想像する「達成感」のようなものはまったく感じませんでした。

「今後も淡々とやるべきことをやっていくだけ」「舞い上がるようなことじゃない」という冷静な視点で自分と会社を見ていたのは事実ですが、もしかしたらあの時、上場したことによって、世間の求める企業の価値を追求しなければいけない窮屈さが自分自身に襲いかかってくることを予感していたのかもしれません。

つづく

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