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NFT_#6:NFTの具体的な活用例 - NFT技術を適用する意義とは

NFTは標準化された技術であり、誰でもすぐに利用可能であるため、発行や交換だけでなく、これまでに様々な応用が試みられてきました。そのいくつかを紹介しながら、活用方法としての妥当性を考えていきましょう。


NFTの多様な応用

■証明書への応用

大学の成績証明書をNFTの形式で発行することが試みられています。しかし、NFTが当初その応用として想定していた土地の権利書などとは異なり、成績証明書は他人に譲渡できない種類の証明書です。

そのような証明書を作成する際にERC-721規格に則るといった、トークンの譲渡を含めたNFTの全機能を備えたスマートコントラクトが使用されると、仕様過剰、すなわちオーバースペックな応用となり、機能の一部を使用できないように制限しなければならなくなります。設計がいびつになり、後々問題を引き起こしかねないことを踏まえ、今そこにあるからといってNFTを応用するのではなく、譲渡機能の付いていない証明書のためのスマートコントラクトの仕様を考えていくべきでしょう。

■物品のトレーサビリティへの応用

NFTをワインボトルなどの物品のトレーサビリティに応用する事例もあります。しかし、トークン自体の所有権の移転は追跡できますが、それが物理的な実体に常に対応していることを確認するためにはハードウェアのサポートが必要であり、更にハードウェアの信頼性問題(例えば、改ざんを防いだり、改ざんが試みられた証拠を安全に残したりすること)を克服する必要があります。

また、流通経路などのように実際に所有が移転していない部分の物品の移動を追跡するためには、ERC-721に則るとすればメタデータを変更することになります。メタデータがオフチェーンで保管されているとすれば、検証可能性が損なわれます。かと言って、実際には所有が移転していない箇所について全て所有の移転で表現すると、設計がいびつになります。また、所有でないものを所有に見立てることになるため、例えばトークンを保有する物流事業者が物品の所有者として振る舞わないと信頼するなど、相手に依存した信頼性に基づくことになります。

NFTという仕組みを応用することのみを前提とするのではなく、トレーサビリティなど必要な業務に対して、仕様や仕組みを改めて考える選択肢も持つべきでしょう。

NFTとチケット

NFTは権利証やチケットとしても機能し、もともとそのために設計されています。これにより、チケット等の所持の証明や移転は、現在の所持者だけが可能です。しかし、例えば映画のチケットとしてNFTを使用するためには、現状ではガス使用料(ガス代)がチケット代に匹敵し、高すぎます。現在の電子チケットとは異なり、NFTには所持者がチケットを他人に譲渡できる利点がありますが、現時点ではそうした用途で使用するには費用がかかりすぎてしまいます。

応用と懸念

これらの事例を見ると、NFTの活用は多様化しつつありますが、その適用性や適切な使用方法については議論が必要です。NFTの特性を理解し、それぞれの活用事例がその特性に適しているかどうかを検討することが重要です。本来的には、NFTではないものにNFTの技術を適用するといったことは避けるべきでしょう。

次回の第7回では、NFTの活用方法の1つである資金調達について解説します。


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