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ブロックチェーン入門_#4:ブロックチェーンの種類 - それぞれのメリット・デメリット

市場では様々なブロックチェーンが使われています。中にはブロックチェーンとしては意味のないものもブロックチェーンだと主張されていることがあります。各ブロックチェーンの概要とどのように運用されているかを解説します。


パブリックブロックチェーン

パブリックブロックチェーンは広い意味で記録が否定できない公開台帳であり、誰でも参加して、送金等の「途中で止められてはならない処理(トランザクション)」の投入や検証を行える仕組みです。代表的なパブリックブロックチェーンにはBitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)などがあります。

■Bitcoin

Bitcoinは、2008年にサトシ・ナカモトを名乗る匿名の人物ないし集団によって発表された世界初のブロックチェーンで、2009年に実際に動き始めました。このブロックチェーンの目的は、暗号資産(仮想通貨)であるBitcoinを生成し、その移転を誰の許可も得ずに所持者本人が自由に行える仕組みを持続的に維持することです。しかし、膨大な電力消費といった課題を抱えています。

■Ethereum

Ethereumは、2013年にヴィタリック・ブテリンにより提唱され、2015年に初期バージョンが稼働を始めたブロックチェーンです。このブロックチェーンの目的は、コードやその状態を公開台帳に書き込むことで、「誰でも動作の正統性を検証できる形で実行できるプログラム(スマートコントラクト)」を実現することです。EthereumはBitcoinと同様な電力消費の課題を抱えていましたが、2022年9月の大型アップデートにより、その課題については解決できたと見られています。

Ethereumは、金融面においては DeFi のプラットフォームとしてよく用いられています。

■その他のブロックチェーン

その他のパブリックブロックチェーンには Polkadot (ポルカドット)等があります。Polkadotの目的は、様々な(必ずしも公開されていない)台帳システムのために相互運用の基盤を提供することです。

コンソーシアム型・プライベート型ブロックチェーン

これらはパブリックブロックチェーンとは異なり、参加者が限定された(許可制の)台帳システムです。そもそもブロック(情報のひとかたまり)のチェーン(連鎖)としては実現されていない例もあるため、ブロックチェーンと総称できるかは疑問です。Linux(リナックス)財団が推進するHyperledger(ハイパーレッジャー)の枠組みで開発されている台帳システムの多くは、コンソーシアム型・プライベート型の範疇に入ります。

これらの台帳システムは、企業や団体が自身のビジネスや業務に特化した形で運用できるため、一部で注目されています。しかし、単に耐障害性を提供しているに過ぎないものが多く、耐障害性を実現するための技術は古くからあります。新しい技術のつもりで採用しても、ブロックチェーンである必要性がないものには注意が必要です。

■コンソーシアム型ブロックチェーン

コンソーシアム型の台帳システムは、特定の複数の組織や企業が共同で運営・管理する台帳システムです。

こうした台帳システムのクライアントがコンソーシアムの外側にいる場合、内側の運用について知ったり確かめたりするための方法がないのであれば、プライベート型と同じになるため、プライベート型の台帳システムに対する批判がそのまま当てはまります。

複数の組織や企業が共同で運用することにより、それらの間での情報共有が確実にできることがこうした台帳システムの利点であるとする見方もあります。しかし、情報が真正に共有されていると確かめる術はあるのでしょうか。

例えば、他の組織が共有していて、自組織に対しては隠されているような情報が台帳に記録されていないことは、どうやって確認できるのでしょうか。また、コンソーシアム内で外向き用と内向き用の2種類の台帳が運用され、実は仲間はずれになっている自組織にはそのうち外向き用の台帳しか共有されていないかもしれません。そうした確認ができないのであれば、共通のクラウドストレージを使う等、同程度の検証性をもって情報共有できる技術は他にもたくさんあります。

■プライベート型ブロックチェーン

プライベート型の台帳システムは、一つの組織や企業が独自に運営・管理する台帳システムです。

1カ所が情報を管理するのであれば、何らかの方法で記録を否定することが可能なため、ブロックチェーンとしては無意味だと言えます。

パブリックでないブロックチェーンの問題点

ブロックチェーンは、データを記録する本人の意思が必ず反映され(自己主権性)、記録が差し止められず(耐検閲性)、障害によっても記録やその検証が止められず(耐障害性)、過去の記録を抹消・改変・捏造もできない(耐改ざん性)ようにするために存在します。

ベンダーが提供している技術がブロックチェーンとして意味があるかどうかは、例えばその台帳システムで「デジタル遺言書」を実現できるかどうかを問うことで確認できます。高額の遺産が関わる遺言書であれば、悪意の相続人がデジタル遺言書の保存・維持・検証に関わる運営者と共謀する恐れもあるでしょう。

許可制の台帳システムでは、遺言書を記録・更新したい本人の意思が反映できるとは限りません。また、限られた運営者の中だけでシステムを動かすため、故障といった確率的事象に対してはコンピュータを複数台動かすといった方法(冗長化)により対処できても、誰か(特に内側にいる人)が悪意をもって防御を回避して遺言書を抹消したり捏造したりすることには対処しきれません。改ざんを防ぐために、ブロックチェーンでは書き込みに大きなコストがかかるようにしていますが、参加者が少ない仕組みではコストを大きくできず、組織や人の共謀も容易です。

次回は暗号学的ハッシュ関数について解説します。ブロックチェーンの構造のあらゆる場所に登場する技術なので、ぜひ押さえておきましょう。


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