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戦略ってなんだろう?

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
さて、今週は「戦略」ってそもそもなんだろう?という点に触れてみたいと思います。ウェブ解析やマーケティングに携わっていると、常日頃から「戦略」というワードを耳にしますが、必ずしもその定義が毎回同じであるとは限りませんよね。なんとなくで使ってしまっている「戦略」という言葉について今一度考えてみたいと思います。


戦略はWhatとHowで捉える

物事を定義するとき、名詞で定義する(「〜のことだ!」)のか、動詞で定義する(「〜することだ!」)のかでだいぶ印象が変わりますよね。
戦略においても「戦略とは何か」という問いと、「戦略とは何をすることか」という問いに答えることで、ある程度定義ができるそうなんですよ。

戦略のWhatとは

と言うことで、Whatから見ていきましょう。
戦略って、実にいろいろな定義があるそうなんです。下の画像をご覧ください。

出典:Harvard Business Review

さまざまな書籍や論文で定義された「戦略」だそうですよ。これらの共通項を考えていくと、「特定の組織が何らかの目的を達成するための道筋」Harvard Business Review:琴坂将広氏による)というのが戦略の定義を支える骨格なのだそうです。

戦略のHowとは

目的の達成のための道筋を戦略と定義する一方で、その道筋の作り方を含めて戦略の定義とするという流れもあるそうです。
道筋の作り方も含める定義として特徴的なのは下記の定義です。

「企業が実現したいと考える目標と、それを実現させるための道筋を、外部環境と内部資源に関連づけて描いた、将来に渡る見取り図」

綱倉久永・新宅純二郎『経営戦略入門』日本経済新聞出版社

「外部環境と内部資源に関連づけて描く」というところがHowに該当しますね。
外部環境から戦略を導く手法として代表的なのは、ウェブ解析士の皆さんならご存じの5Force分析です。一方で、内部資源に着目して戦略を導いていく手法では「リソース・ベースド・ビュー」という考え方があります。

戦略の5P

さて、上記した定義だけでは治らないのが、広く使われている「戦略」という言葉です。特に、現場で耳にする「戦略」という言葉はもっと多種多様な気がしますよね。
そこで、参照したいのが、『戦略サファリ』の著者で経営学社のヘンリー・ミンツバーグ氏が提唱する戦略の5つのPです。マーケティングで登場するの4Pですが、戦略を考えるときには5Pだそうです。ややこしい…笑

Whatに関わる2つのP

1. プラン(Plan): 計画的な未来
計画は戦略の基本であり、組織が未来をどのように形作りたいかを明確にするものです。単なる目標設定だけでなく、方針や指針を含めたものを指します。

2. パターン(Pattern): 過去の経験から学ぶ
過去の成功と失敗から得られる知識が、戦略の習慣を形成します。過去の行動の集合とも言えますね。

この二つの違いは時間軸にあります。現時点から見て、プランは未来を見据えるのに対し、パターンは既に実現された過去を振り返ります。当然、二つにはギャップが生じますよね。
皆さんはプランとしての戦略を立てた時に、どれほどの確率で思い通りになっているでしょうか。実際は、予測不能な事態や環境の変化によって行動を変更せざるを得なかったということはよくあることです。パターンは、過去の時点で設計したプランとしての戦略(通りの行動)に加えて、現場で対応・改善してきた”意図しなかった”行動が合わさることで、実績としてのパターンとなります。
なので、私たちが実務で立てようとする戦略は「プラン」であるのに対し、書籍で紹介・解説される戦略は「パターン」なのです。なので、他所で成功した戦略(パターン)をそのまま輸入して(プランにしようとして)もうまく機能しないんですねぇ。

Howに関わる3つのP

3. ポジション(Position): 市場における位置付け
組織は他社との差異を理解し、独自の強みを強調することで、競争上の優位性を確立します。ポジショニング戦略という言葉はマーケティングをする上で必ず見聞きするものですね。

4. パースペクティブ(Perspective): 状況を客観的に捉える
パースペクティブは日本語にすると見取り図ですかね。要するに、グランドビジョンなどを指すものです。もっと言うと、事業ドメインと言い換えることもできるかもしれません。過去の記事でも、「事業ドメインの定義は戦略の出発点である」といったことを記してきましたね。(参照:https://note.com/waca_associates/n/nd607efa637aa

さて、このポジションとパースペクティブも対になるような考え方です。
思考者を基点として、ポジションはマーケットを俯瞰することです。すなわち製品と顧客の接点を見下ろしながら、外側(マーケット全体)に目を向けます。
一方で、パースペクティブは自組織の内側に目を向け、ビジョンなどを見上げる格好になります。「中の人」もビジョンやミッションといった組織の使命を「戦略”上位”概念」と呼んでいます。その使命を果たせるのか、描いているビジョンに辿り着けるのか、といった思考法がパースペクティブとしての戦略です。

5. 策略(Ploy): 戦術的な巧妙さ
最後に登場するのが、策略です。競合他社の裏をかいて出し抜くような計略としての戦略です。競合他社が特定のセグメントに焦点を当てている時に、自社は異なるセグメントに進出する。これにより、競合他社との競合を避けつつ、新しい市場でのリーダーシップを築き利益確保を行う。といったこともPloyに含まれます。

まとめ

「戦略ってなんなのだろうか」と言う素朴な疑問から執筆に至ったのですが、結局明確な「これだ!」と言うものは見つからなかったです。(笑)
ただ、さまざまな定義が存在することは明らかなので、チームの中で共通認識がないとダメだよね。と言う結論には至れました。
そこで、5つのPは役に立ちそうですよね。「あれ、今プランの話だよね?ちょっとパターンの話は置いておこうよ。」とか、「良いポジションは見つかったけど自社のビジョンに合致しているかな?」とかそんな会話があれば、共通認識が持てそうな気がします。
無意識に使っている言葉だけに、チームメンバーが同じ認識を持っているかには注意していきたいですね。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
実は、「中の人」は最近実務の中では意識して、「戦略」という言葉を極力使わないようにしています。
「戦略」って経営者にとってすごく耳触りがいいのではないかと思っているんです。抽象的な言葉なので、実態がないままに「やった感」を出してしまう可能性が高いなぁなんて思っていました。
逆に考えると、「戦略」を具体的な定義をすれば言い換えができるのではと思っての今回の記事なんですよ。結果として5つのPは当たりですね。
「プランを考えましょう!」「パターンを分析してみましょう!」「ポジションはどうです?」「プランをパースペクティブに検討しましょう!」とか言えば「戦略」という言葉を使わずに済みそうです。その代わり、これはこれでカタカナばかりでよくないですよ…
さて、それではまた来週お会いしましょう!

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