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このほんをよむひとへ

『子どもの美術1』現代美術社初版1980年  より

ずがこうさくの じかんは、 
じょうずに えをかいたり じょうずに ものを つくったり
することが めあてでは ありません。

きみの めで みた ことや、
きみの あたまで かんがえた ことを、
きみの てで かいたり、 つくったり しなさい。

こころを こめて つくって いく あいだに

しぜんが どんなに すばらしいか、
どんな ひとに なるのが たいせつか、
と いう ことが わかってくるでしょう。

これがめあてです。


確か小学校か中学校の図画工作で使用していた教科書の
1ページ目の文節だったはず。
思えば今の私の感性を作ってくれた文節のように感じます。

子どもたちにお絵かきを教えていた時は
“お受験”に通用する絵をとの指導のもと
子どもたちの絵を訂正させたり、助言したりしておりましたが、

「このままでもいいのに」とかすかに
かさぶたが大きくなっていく感覚を日々抱いておりました。

そんな中で、鉛筆の持ち方練習のお授業の時間、
鉛筆をグーっと固く握りしめ、ノートを真っ黒にしてしまう勢いで
グジャグジャと描き散らかしていた1人の男の子。

その子は日頃より乱暴なものの扱いが目立つ子で
お友だちや先生たちとの会話も非常に少ない子でしたが、
私はこの時フとこんな言葉をその子にかけてみました。

「今の〇〇君の鉛筆の動かし方は草原とか海とか描く時綺麗に描けそうだね」

すると○○君は数秒私の顔を不思議そうに眺めた後、
鉛筆を持ち直し素直に鉛筆の練習を再開しました。

彼はきっと
「やめなさい!そんなことをして!」
「なんでちゃんとやらないの!」
などと言われると思ったのでしょう。。

私も今まではそう言っていたと思います。

しかしこの「このほんをよむひとへ」のいう言葉の通り、
お絵描きは描きたい時に描きたいように描くのが
一番楽しい!間違いない!!!

しかし時にはやらなきゃならないこともあるのが「この世の中」
そんな中で少しでも嫌な気持ちにならずにやらなきゃいけないこともできるように、とそんなことを私は思ったのかもしれません。
…今思えば。

幸いにも以降彼の乱暴な態度は一変し、
お友だちとの喧嘩が起こりそうな時でも
話し合いでなんとか解決しようという姿勢が見受けられたり、
お友だちや先生たちとも楽しそうにお話したり、
お絵描きも楽しそうに描くことが
増えたように思います。

この一言で彼の心の何かを変えられたのだったら、
私もこんなに幸せなことはありません。

そんなことを思い出させてくれた
文節でした。



お久しぶりでございます。
超低速更新でもここまで読んで下さった方達に感謝✨

ではまた。

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