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蓄音機

『機械のある世界』(ちくま文学の森11)
蓄音機 / 寺田寅彦   より

蓄音機が完成した暁に
望み得られることのうちで私が好ましいと思う一つのものは、
あらゆる「自然の音」のレコードである。
たとえば山里の夜明けに聞こえるような鶏犬の声に和する谷川の音、
あるいは浜べの夕やみに響く波の音の絶え間をつなぐ舟歌の声、
そういう種類のものの忠実なるレコードができたとすれば、
塵の都に住んで雑事に忙殺されているような人が
僅少な時間をさいて
心を無垢な自然の境地に遊ばせる事もできるし、
長い月日を病床に呻吟する不幸な人々の神経を有害に刺激する事なしに
無聊を慰め精神的の治療に資することもできはしましか。





最近YouTubeで焚火の音や
小川のせせらぎの音なんかを
何時間でも聴いていられるように
やっぱり人間は本能的に
自然から離れてしまっては
いけないのですね

と、思った一文でした。


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