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小林泰三の新刊が出てますね~時空争奪: 小林泰三SF傑作選

小林泰三さんの新刊が4月30日に出ていたことに気がついて購入しました。まだ読んでいませんが、この方の短編は非常によくできているので楽しみです。2020年に50代の若さでガンで亡くなっているので既に他の短編集に収録済みの作品かもしれませんが、わたしはこの作家のホラーとミステリしか読んでいないのでかぶることはないでしょう。

小林泰三さんは角川ホラーで賞をとった「玩具修理者」で虜になった作家です。わたしはもともと小説は長編よりも短編が好きなのですが、「玩具修理者」は極めて完成度が高く、ホラーというからには多少グロな部分もありますが、怖いというよりは精密に作られた工芸品を見ているような美しさに圧倒されました。文庫には「散歩舎」も収録されていて、そちらも悪くないです。
続けて「人獣細工」を読みましたが、これもよくできた作品で感嘆しました。最後にあっといわせる展開的には「玩具修理者」に似ていますが、グロさはこちらのほうが上なので苦手な人はやめたほうがいいかも。文庫には「吸血鬼狩り」が収録されていて、この作品は三島由紀夫の「午後の曳航」を連想させる少年の話でこれも逸品です。グロくないので苦手な方も読めるはず。
「肉食屋敷」その他ホラーは大抵読みましたが、みなレベルが高いですし、グロいというよりはブラックユーモア的な作品も多いので個人的にはホラーという感じはあまりしません。短編が好きな人で「玩具修理者」が面白いと思った方はどれも楽しめるはず。

一方、小林泰三さんは、ミステリも書いていて、代表作は「アリス殺し」

アリス殺し

この後「○○殺し」シリーズが出ますが、途中から読まなくなりました。やはり最初の「アリス殺し」が一番面白かった、不思議の国と現実世界の両建てでミステリが展開するのですが、特に不思議の国でのやりとりがとてもお茶目でユーモアたっぷりなので楽しめること間違いなしです。もちろんミステリですから仕掛けもよくできています。

もうひとつこの間読み終わったのが「失われた過去と未来の犯罪」

失われた過去と未来の犯罪

これはSFなのかな?ジャンルがわかりませんが、突然記憶を10分しか保てなくなった人間たちのドタバタから始まる長編です。筒井康隆のドタバタばりに笑えるシーンも多いですが、発想と展開が奇想天外で傑作だと思います。

それから「殺人鬼にまつわる備忘録」。

記憶を保てないのは前作と似ていますが、主人公はその状況下で殺人鬼と戦っています。記憶を保てないので、繰り返しが多くなりますがこの手の仕掛けはお手の物。やはり筒井康隆を少し連想させるんですが、なんだろう、影響を受けているのかな?わたしは筒井康隆も大好きなので問題ありませんが(笑)。いずれにしても、これも傑作です。

小林泰三さんは、玩具修理者でデビュー以降、若くして亡くなるまでにホラー、ミステリ、SF、純文学のジャンルで多くの作品を残していますが、わたしは読んでいない作品がたくさんあります。読みたい本もたくさん。
ネフィリム、20秒と20年、未来からの脱出、海を見る人…

短編がとにかく上手い方なので、まず読んでいない短編集から読んでいこうと思います。

小林泰三さんの紹介でした。

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