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1ドル=150円時代のアメリカ


全てが笑えるぐらい高い。そうアメリカの話だ。ちょっとUBERで移動しようとすると1万五千円かかるし、確実に移動しようとハイヤーすると4万ー5万円かかる。このコラムにも登場した大好きなEREWHONのトートバッグは7500円だし。毎日飲んでいるヤクルトみたいな乳酸菌飲料は1000円だ。ダイニングで軽く食べてチップ払ったら15万円。クライアントが用意した部屋は一泊25万円と全てが異なる惑星でのエピソードと錯覚する。

一度日本の経済について語るなら、アメリカに来るのがいい。日本のデフレは半端ないことが分かるからだ。これは面白い現象なのは決して1ドル=150円だから高いわけではないということだ。現地通貨のローカルな感覚を取り戻すのは一旦為替という概念を取っ払って1ドルを100円にして考えてみるといい。日本人が100円の物価を常にドル換算で考えないのと同じ考えだ。

1ドル=100円で考えてみても米国の物価は20%-30%ぐらいは日本より高い。特に食品やフードビジネス系の内外格差が大きい。WAGYUMAFIAが極めて妥当な国際価格に近いと、改めて実感する。そこに1ドル=150円という強烈なディスカウントが働くわけだからとてもつもないことになっている。日本でもライドシェア議論がなされているが、重要なポイントはアディショナルコストを払えば綺麗でちゃんとしている車がすぐ来るということだ。おそらく日本人の考えは、もっと安くもっと多くのタクシーが来るみたいな発想になっているのだろうけどそれは違う。

UBER BLACKの運転手にどこから来たんだとん訊ねると、エチオピアだという。20代に恋をしたのがアメリカ人、その彼女と結婚して今に至っている。イルガチェフェのコーヒーが好きだよというと、なんてことだと頭を抱えて俺の両親はコーヒー農園だという。そんな彼は昼間は清掃会社を経営し、暇な時はUBER BLACKの運転手をしている。いつでも出来るからいいんだ、少し働いただけで400ドルの売り上げになる。UBERが25%持って行くが、75%が運転手の手残りだ。ドバイに会社を作る予定なんだ、まだ奥さんは説得できていないけどと熱く語る。優秀な人材が、タクシー運転手をしている。それはUBERが高い雇用を維持しているからだ。

高いコストを払うということは高い賃金を雇用者に払うリソースを確保することができる、そしてスキルの高い優秀な人材がそこに内外からやってくることになる。デフレ価格で安いが当たり前の昭和のサラリーマンみたいな感覚をしているといつかは国全体のクオリティが下がってしまうことを忘れては行けない。スタッフを連れてふらっと立ち寄ったバーガー屋は1万5000円だった、日本だったら5000円でも高いというだろう。コーヒーは先に飲みたいだろ?と訪ねてきて、カウンターまでコーヒー杯届けてくれとキッチンに叫ぶ。バーガー作りで反応できないキッチンスタッフの状態を認識するとすぐさま自分で取りに行く。キッチンスタッフもカバーありがとうと伝える。スタッフの動きは無駄がなく、そして人数もこの規模にしては多い。いいものはいい人材をもって高く売っていく、それがいい社会の回し方であるのは間違いないと実感する。

少しコントラストが効いた形で、日本人の矛盾した感覚を1ドル=150円のアメリカが教えてくれるのだ。

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