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地方演劇を真面目に考える会 番外編6 【演劇環境を良くしたい!! 間接的要因について考える編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

演劇環境を良くしたい!!

今回は、直接的な要因のその他について考えていきます。わざわざ個別に分解するほど、どうしようもないものもありますので、一つづつについて、ざっと考えていきます。

演劇環境の要素

直接的な要因
・観客数 ◎
・劇団数 ◎
・劇団同士のつながり 〇
・役者数 ○
・舞台スタッフの数 △
・劇場数 〇
・演劇の公演数 〇
・劇場の使いやすさ △
・稽古場環境 〇
・支援体制 〇
・地域の演劇史 △
間接的な要因
・学生演劇(高校・大学等)の状況
・演劇以外の文化状況(特に音楽・ダンス・自主映画)
・メディアの強さ
・役者としての仕事
・大学数
・地域の経済状況

・学生演劇(高校・大学等)の状況について

アンケートにもありましたが、学生演劇はおそらく非大都市圏に限らず、かなり劇団形成に関わりのある部分かと思います。学校のクラブやサークルで演劇を経験して、その後社会に出た後も演劇を続けるために劇団を形成するというパターンがかなり多いと思います。

学生演劇(高校・大学等)の状況を良くするためには
前にも書いたのですが、一劇団では、教育機関にアプローチするのは難しい部分があると思います。つながりがあれば教えてに行ったりという事ができますが、信用とコネがないと難しいです。
一番、可能性が高いのは、地域の演劇統括団体を作って、信用性を上げてみるとういうぐらいでしょうか。
また、学校の部活動では物足りず、外の劇団に興味を持つ学生がいれば、そういう人が気軽にワークショップを受けられる環境を作っておく、気軽に劇団に触れることができる環境があれば、良好になるキッカケにはなるかと思います。

学生演劇(高校・大学等)の状況はよい方がいいのか?
圧倒的にいい方がいいでしょう。ただ、だからといって積極的に何かできるわけでもないので、かなり長期スパンで考えないといけない事かなと思います。特に学生演劇はヒトの入れ替わりの周期が早く、関係性も密になったところで、すぐに薄くなったりもしますので、若者を応援する状況を作り上げて置く事が大事だと思います。
すごく演劇環境にかかわる部分なのですが、どうしようもないものでもあるので、△をつけておきます。

・演劇以外の文化状況について

演劇以外の文化活動も、演劇にとっては全く関係ないわけではなく、かなり相互作用を持っていると思います。ミュージシャンが出演したり、劇伴を作ったり、役者は自主映画にも出たりしますし、ダンスをするシーンに振り付けが必要な事もあるでしょう。また、地域性や同時代性を追求するうえで、他文化領域はかなり作品制作の参考にもなりえます。

演劇以外の文化状況を良くするためには
これはどうしようもない気がします。良くするとは違いますが、地域の多文化の情報にアンテナを張って、興味があるものに足を運ぶだけで、狭い地域の新しい広い世界が見えるかもしれません。

演劇以外の文化状況はよい方がいいのか?
演劇に関係あるかどうかは置いておいて、他の文化活動も活発なほうが地域にとってはいい状況だと思います。文化活動自体が地域で活発になれば、必然と演劇の活動も活発になる可能性が高くなります。地域にもよると思いますが、文化活動よりもスポーツ関係の方が、行政とのコネクションが強く、文化関係は弱い所が多い印象があります。そうなると必然的に予算は偏っていきます。そうなると、一劇団ではどうしようもない問題にもなってきますが、一つ上にも書きましたが、まず「知る」努力はすべきです。もし、地域の文化環境に不満があるなら、他の努力を知ってから言うべきかなと思います。とはいえ、状況を良くするためにできることは、限られ過ぎており、そもそも演劇に興味を持つべきだと思うので、これは△としておきます。

・メディアの強さについて

大きく言うと、演劇もメディアの一つではあったのですが、現代では、テレビやネットにその役割を渡して、あまりそういう面は残っていません。演劇をするうえで、宣伝活動において、メディアの力は非常に強く影響してくると思います。特に大都市圏と、非大都市圏の大きな差は、「劇評家」の存在があるかないかだと思います。
おそらくですが、非大都市圏にまで興味を持っている劇評家は少ないのではないでしょうか。(というか、きいたことすらありません)。また、メディアの話とは少しずれますが、地域の演劇史の保存は、どちらかといえば、演劇の研究家の領域だと思うのですが、今現在は、地域の文化史研究家が担っているのが現状だと思います。そして、比較的歴史の浅い、近代演劇は、あまり研究対象になっていないというのが残念です。

メディアの強さを良くするためには
特にできる事はないと思うのですが、思い切って、自分でメディアを作るという事もできる時代かなと思います。このNOTEもその一つですが、SNSや、ネットを使った発信、もしくは昔ながらの自主雑誌の発行(最近はZINEっていうのかな?)ただ、かなり手間がかかるという問題点が1つ。もう一つは、「やった気になる」という問題。特にSNS系は、宣伝をした気になりがちですが、結構実際の届いてなさは、想像以上だと思います。やらないよりはやったほうがもちろんいいのですが、宣伝は「興味のない人に情報を届ける方法」をまず考えたほうがいいと思います。どこかでまたやると思いますが、一口に宣伝といっても、どういう層をターゲットにするか? そのためにどういう方法をとるか?が非常に重要です。

メディアの強さはよい方がいいのか?
強いに越したことはないと思いますが、現在の状況ではテレビや新聞・雑誌系はそこまで強いのか?と言われると疑問が残ります。SNSやネット系統に比べて、新規の興味の掘り起こしに強い部分があるのですが、そもそも、そこにこちら側がなにかアプローチをかけて状況を改善できるものではなく、地域の状況や劇団の戦略によって変わってくるので、△とします。

・役者としての仕事について

役者を志す人が一度は考えるのは、役者を仕事にしたいという事だと思います。地方都市では大変な事ですが、そもそも、大都市圏でもかなり難しい事だと思います。ただ、演劇環境のためには、役者としての仕事があれば、状況が良くなることは間違いありません。

役者としての仕事を良くするためには
役者という職能は「あるテキストを映像や舞台上で演技によって、三次元的に立ち上げる」と定義できると思います。その技術を使ってできる仕事は、映像系・舞台系、最近はネットメディアだと思います。また、副次的に役者である経験を使った仕事。教える系の仕事・ライター系など、さまざまです。ただ、非大都市圏という地域環境で考えると仕事はかなり少なく、自分で掘り起こしていかないとならないと思います。また、そこに落ちているお金も少ないので、地域にこだわらず、他地域へ行ったり、ネットを介して地域を超えた仕事を作るという事も考えられると思います。
ただ、そこまでして、仕事になりうるか?というと、かなりレアケースかなと思います。もし、それが仕事となりうるなら、単純に非大都市圏にこだわらないほうが、簡単な気がします。

役者としての仕事はよい方がいいのか?
役者の仕事があれば、劇団運営も楽になりますし、演劇環境も劇的に良くなると思います。ただ、逆説的に演劇環境がかなりよくないと役者としての仕事は発生しづらいと思います。昔は、映像メディアの力が強く、役者としての仕事があったようですが、現在ではかなり激減して、0という所も多いでしょう。ただ、それでも演劇をやってみたいという人は多いでしょうし、あまり関係ないと思うので、△とします。

・大学数について

非大都市圏の都市構造として、18歳以上の若者の流出率・就職時の流出率に、大学の数がかなり関係してきます。つまり都市人口の問題でもありますが、演劇はかなりそこに影響を受けます。大学数が多ければ、劇団数も増加の傾向があり、やはり大学演劇もかなり劇団数の過多に影響を及ぼします。

大学数を良くするためには
これは、本当にどうしようもないかなと思います。

大学数はよい方がいいのか?
上記にあるように、地域の劇団数のかなりの影響がある部分で、良い方がいいと思います。ですが、地域の劇団、演劇人にはどうしようもない問題なので、△とします。

・地域の経済状況について

演劇が仕事としても、趣味として、景気の良さによって、演劇を楽しめる余裕が左右されます。特に都市部では演劇を鑑賞する趣味というのは、結構高額なチケットを毎回見るのはかなり経済的に負担を強いられます。また、演劇をやる側としても、公演にかかる負担は金銭的にも時間的にも、そこそこあります。趣味として楽しむためにも、経済状況はかなり大事な面があります。

地域の経済状況を良くするためには
政治面が強いので、特に何もできないかと思うのですが、問題意識ぐらいは持ってもよいかなと思います。

地域の経済状況はよい方がいいのか?
地域の経済状況が良いに越したことはないですが、それをどうにかしようというよりも、それを踏まえて、どういう活動をしていけばいいのか?を考えたほうが楽かなと思います。いろんなところで役者のスケジュール問題や稽古場問題、劇場問題の原因にもなっていますし、これを経済状況などを観ずにただ不満をいっていても、意味がない事が多いです。地域の経済状況は、そもそも社会人として気にしたほうがいいとは思うのですが、そこまで演劇活動に支障をきたすほどではないかなと思う・どうしようもないので、△とします。

アンケートをうけて、間接的要因のその他について

全体的に、一個人・一劇団ではどうしようもない問題が多く、しょうもない回になってしまったなと思います。ただ、ほとんどが、直接的な問題の隠れた要因的な感じで、大きな目で見ればこれを考えることは無駄ではないと思います。支援体制などにも関係ありますし、劇団数にも多きく関係ある問題でもあります。ただ、これをどうにかしようという事ではなく、じゃあ、この状況の中で、なにができるのか?を考える時に、対策を立てやすくなるかと思います。
また、もしこういった問題に意見ができる機会があれば、こういった問題について、劇団の立場を明確にするきっかけになると思います。小さな声も、集まれば一つの大きな声になります。諦めるのではなく、きちんと考える事。それは大事かなと思います。

つづきます。
番外編 その7はコチラ

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきぼう)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita


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