ヤギの本屋さん・テンガイ

リアル書店で10年店長をやってました。お店はなくなってしまいましたが、読みたい本を探す…

ヤギの本屋さん・テンガイ

リアル書店で10年店長をやってました。お店はなくなってしまいましたが、読みたい本を探すお手伝いがしたくてとりあえず書評というには拙い個人的感想文を書いていこうと思います。あなたの読みたい本が見つかりますようにーーー

最近の記事

読書感想『本屋さんのダイアナ』柚木 麻子

世界一ラッキーな子になるように…大きな穴と書いてダイアナと名付けられた矢島ダイアナは自分の名前が大っ嫌いだ。 父親はおらずキャバクラ勤めの母親に髪を金色に染められていたダイアナは、自分の名前も周りと違うすべてが大嫌いだった。 小学校三年生になり、彩子と出会うまでは…。 自然なことを好み、本物を求める両親から大切に育てられた綾子は、まるで小説の世界から出てきたような女の子ダイアナに強烈に惹かれていた。 全く正反対だった二人なのだが、実は本を読むことが好きで話せば話すほどお互いに

    • 読書感想『俺たちの箱根駅伝』池井戸 潤

      古豪・明誠学院大学陸上競技部。 箱根駅伝の本選を2年連続で逃し、4年生の主将・青葉隼斗はラストチャンスを掴むため予選会へ挑んだ。 今年こそはいける、それだけの実力で挑んだ予選会だったが、まさかの隼人の失速で結果は振るわなかった。 大学としての箱根駅伝は逃した隼人に、学連選抜としての出場のチャンスが巡ってくるが… 一方、箱根駅伝の中継を担う大日テレビ、プロデューサーの徳重は頭を抱えていた。 例年通りの硬派な中継をしている徳重に対し、新しい上司である黒石は変革を指示してきたからだ

      • 読書感想『二人目の私が夜歩く』辻堂 ゆめ

        幼い時、両親の運転する車で事故にあい、一人生き残った茜はそのトラウマで睡眠障害を抱えていた。 入眠がうまくできず、一度眠ると夢も見ない…朝起きることが苦手な高校生の茜は、ある時『おしゃべりボランティア』に半ば強引に参加させられる。 そこで出会ったのは、交通事故で脊髄を損傷し首から下が動かせない、自発呼吸もできない少し年上の女性・咲子だった。 交通事故の後遺症を抱える咲子にシンパシーを感じた茜は、少しでも彼女の役に立ちたいとボランティアを続けることにする。 咲子と出会った直後か

        • 読書感想『敗者の告白』深木 章子

          とある山荘で会社経営者の妻と8歳の息子が転落死し、殺人の容疑で夫が逮捕された。 その逮捕を後押ししたのは、妻が残した『夫に殺される』と記された手記だった…。 死んだ妻の残した手記、息子が祖母に送ったメール、彼らに関わった人々の証言が裁判を通じて事件を紐解いていく。 果たして夫は本当に妻子を殺したのか? 裁判所の出す結論とは? それぞれの証言だけで構成されるミステリー。 食い違う証言を整理し、真実をあぶりだすミステリーであり、その証言者のうち二人がすでになくなっているというな

        読書感想『本屋さんのダイアナ』柚木 麻子

          読書感想『レーエンデ国物語 夜明け前』多崎 礼

          本屋大賞にもノミネートしたファンタジー巨編「レーエンデ国物語」第四弾 建国の始祖の預言書通り、神の御子が誕生した第一巻よりすでに370年の時が流れたイジョルニ帝国。 レーエンデ人を迫害し、反逆の目をつぶしながら進んできた帝国は西の司祭長ヴァスコ・ペスタロッチが時期王に即位しようとしていた。 ヴァスコは正妻と嫡男・レオナルドがありながら略奪してきた愛妾を皇后に据えた。 残虐で自分本位なヴァスコとは違い良き人間へと育っていたレオナルドのもとに、異母妹にあたる少女ルクレィツィアが預

          読書感想『レーエンデ国物語 夜明け前』多崎 礼

          読書感想『フェスタ』馳星周

          北海道浦河町で競走馬の生産牧場を親子で営む三上収、三上徹。 祖父の時代はそれなりに強い馬を生み出せていたが、最近では目立った戦歴の馬はいない。 その理由の一つに、父・収の夢がかかわっていた。 『凱旋門賞を獲れる馬を作る』…そのために収はかつて凱旋門賞で二着となったナカヤマフェスタの仔馬を生み出し続けていた。 そうして収が作り出した仔馬は調教師・児玉健司の目に留まり、将来の可能性を信じた馬主の小森達之助に引き取られることに。 調教師泣かせで有名だったナカヤマフェスタ、その血を受

          読書感想『フェスタ』馳星周

          読書感想『家族解散まで千キロメートル』浅倉 秋成

          結婚するまで実家を出てはならない、という暗黙のルールを守ってきた喜佐周(きさ・めぐる)とその兄姉。 兄はすでに結婚して家を出ており、姉と周の結婚が決まったことをきっかけに古びた実家を解体することになった。 実家の荷物を整理していた時、庭にある倉庫から誰にも見覚えのない仏像が発見される。 青森の神社で盗まれたというご神体に瓜二つなそれに周たちは凍り付いた。 「また親父が馬鹿な事をしでかした…」 いつも家にいない父は過去にも謎の窃盗品を倉庫に隠した過去があり… 今日中にご神体を返

          読書感想『家族解散まで千キロメートル』浅倉 秋成

          読書感想『あなたの大事な人に殺人の過去があったらどうしますか 』天祢涼

          横浜に本社を置くオオクニフーズの相模原支社に勤務する藤沢彩。 引っ込み思案な彩は自分の感情を表現するのが苦手で、人付き合いもうまくできない。 仕事のことで悩んでいた彩だったが、そんな彩を気遣い言葉を待ってくれる一年先輩の田中心葉のおかげで徐々に職場になじんでいく。 心葉と同期の佐藤千暁とも気安く接するようになり、日々が楽しくなる中で徐々に心葉に惹かれていく彩だったのだが、ある日の心葉の告白に職場の空気が一変してしまう。 『僕は過去に人を殺したことがあります』 誰も予想していな

          読書感想『あなたの大事な人に殺人の過去があったらどうしますか 』天祢涼

          読書感想『〈本の姫〉は謳う③』多崎 礼

          二つの月が浮かぶ、熱砂に覆われたソリディアス大陸を舞台に、自分ではない誰かの記憶を持つ少年・アンガスと本に宿る歌姫が旅をするシリーズ3冊目。 前巻で歌姫としての記憶と声を取り戻したセラ、彼女の無事を知らせるためにアンガスたちはカネレクラビスを訪れる。 ところが、そこでも邪悪な『文字〈スペル〉』による災いが起きており…。 文字を回収するたびによみがえる記憶に悩まされる本の姫、そして世界の破滅を見るようになったアンガス…それでも彼らは文字の回収を続ける。 全四巻のシリーズもいよ

          読書感想『〈本の姫〉は謳う③』多崎 礼

          読書感想『神様の裏の顔』藤崎 翔

          清廉潔白で評判の元教師・坪井誠造が逝去した。 その通夜には子供から大人まで様々な人が参列し、悲しみの涙であふれていた。 坪井の娘、元教え子、同僚の教師、近所の主婦、アパートの店子…それぞれが坪井を思いその思い出を語りだしたとき、その思い出が疑惑の糸でつながっていく…。 本当に坪井は神様のような善人だったのか…それとも、その裏で巧妙に事件を繰り替えす犯罪者だったのか――― なくなった故人を偲ぶお通夜の席で、その故人が実は犯罪者だったのではないか?そんな疑惑に取りつかれた参列者

          読書感想『神様の裏の顔』藤崎 翔

          読書感想『白鳥とコウモリ』東野圭吾

          善良だと評判の弁護士・白石が刺殺体で見つかった。 捜査本部は最近の電話履歴から愛知県に住む一人の男・倉木達郎に目を付ける。 捜査を担当する五代が倉木に接触したところ、倉木は自供を始めた。 事件は解決かと思われたが、倉木の自供は新たな波紋を呼ぶ。 「すべて私がやりました。すべての事件の犯人は私です。」 倉木のいうすべての事件には、1984年に被疑者が留置所で自殺した殺人事件が含まれていた――― すでに被疑者死亡で確定した過去の冤罪事件と、現代で起きた殺人事件…そこには誰にも予想

          読書感想『白鳥とコウモリ』東野圭吾

          読書感想『兎は薄氷に駆ける』貴志 祐介

          資産家の男性が自宅で一酸化炭素中毒で亡くなった。 原因は愛車である古い外車のエンジンが不完全燃焼を起こしたことだった…。 警察は容疑者として、自動車修理工場で働く被害者の甥・日高英之を逮捕する。 英之を執拗に追い詰め無理やり自白を引き出した警察だったが、その最中に英之はずっと思っていた『自分の父親の冤罪はこうして生まれた』のだと…。 かつて英之の父は殺人犯として獄中死をとげていた―ー― 父親は冤罪だったと確信している英之は、自分も冤罪で罰せられそうになっていると父親の弁護を担

          読書感想『兎は薄氷に駆ける』貴志 祐介

          読書感想『彼女がそれも愛と呼ぶなら』一木 けい

          高校生になったばかりの千夏には、周りに言えない秘密がある。 それは、父親はおらず、結婚していない母親・伊麻と、伊麻の恋人3人が一緒に暮らしているということだった。 美容オタクでバイセクシャルの亜夫、イタリアンのシェフでいつも落ち着いている到、そして、最近新しく家にやって来た博識な大学院生・氷雨。 それぞれ父親ではないが千夏にとっては千夏を守ってくれる保護者であり、大事な家族なのだが、その複雑すぎる家族構成を誰にも打ち明けられなかった。 そんな自分を守るためにできるだけ目立たな

          読書感想『彼女がそれも愛と呼ぶなら』一木 けい

          読書感想『殺める女神の島』秋吉 理香子

          ミスコンのファイナリストとしてリゾートアイランドの招待された女子高生モデル、経営者、小説家、医師、シェフ、インフルエンサー、大学院生の七人。 外面と内面を競う彼女たちは、これからの二週間をこの島で互いを支えあい、共同生活を送りながらグランプリの審査の時を待つはずだった。 ところが二日目に主催者のクリスが瀕死の状態で発見され…。 次々に参加者が殺されていく中で、それぞれのウソがじわじわとあぶりだされて行く。 この中で一番のウソつき、殺人者は一体誰だ? 所謂クローズドミステリー…

          読書感想『殺める女神の島』秋吉 理香子

          読書感想『こまどりたちが歌うなら』寺地 はるな

          前職で職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾に自分が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に入社して欲しいと頼まれる。 父の跡を継いで社長に就任した伸吾だったが、父からの監視が厳しく社員にも頼りがないと囁かれており、茉子に味方になって欲しいと言う。 誰よりも業務を知っているのに訳あってパートの亀田、やたらと声が大きく態度も大きい江島、その部下でいつも怒られてばかりの正置などの働く事務所は、今時にはありえない独自ルールが強い旧態依然とした場所だった。 茉子はそのルールのお

          読書感想『こまどりたちが歌うなら』寺地 はるな

          読書感想『BUTTER』柚木麻子

          男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された結婚詐欺師・梶井真奈子ことカジマナ。 多くの男を魅了したこのカジマナは、若くもなく、たっぷりと脂肪を蓄えていたことで世間に衝撃を与えた。 週刊誌の記者である町田里佳は親友の伶子の助言をもとに裁判を待つカジマナとの面会にこぎつけた。 フェミニストとマーガリンを嫌悪するカジマナは、里佳に高級バターを食べろと言い出し… 欲望に忠実で自分に正直なカジマナに会うたび、里佳はどんどんそのペースに飲み込まれていく――― 内面も外見も変化していく里

          読書感想『BUTTER』柚木麻子