読書感想『〈本の姫〉は謳う③』多崎 礼

二つの月が浮かぶ、熱砂に覆われたソリディアス大陸を舞台に、自分ではない誰かの記憶を持つ少年・アンガスと本に宿る歌姫が旅をするシリーズ3冊目。
前巻で歌姫としての記憶と声を取り戻したセラ、彼女の無事を知らせるためにアンガスたちはカネレクラビスを訪れる。
ところが、そこでも邪悪な『文字〈スペル〉』による災いが起きており…。
文字を回収するたびによみがえる記憶に悩まされる本の姫、そして世界の破滅を見るようになったアンガス…それでも彼らは文字の回収を続ける。

全四巻のシリーズもいよいよ折り返し、ソリディアス大陸にはどんどん不穏な空気が漂っている。
同時にすすむ、過去の物語も大地の人と楽園の天使たちによる戦が本格化しており、じわじわと物語が確信に攻めってることが伺える。
若干セラの口調が気になってしまうのだが、まぁもともと刊行されてたレーベルを考えると…ラノベ的にはまぁあるあるなのか??と流すこととしまして…
最初は命に投げやりなアンガスと本の姫だけで進んでいた物語も話が進むにつれ仲間が増え、だいぶにぎやかになってきた。
その中でアンガスがじわりじわりと文字を回収し終わった後の未来に目を向けだしたことが、読者としても嬉しい。
なのに、状況はどんどん悪く複雑になっていく一方だ。
結構ページ数のある本だし、一冊一冊で繰り広げられている紆余曲折は読みごたえもある。
その割に文章が読みやすく、書かれるべきことの取捨選択がうまいんだろうね、読みごたえはあるのにさっくり読める印象が強い。
希望をもって仲間を増やしながら世界を救いに向かう王道ストーリーと、破滅の決まっている過去のストーリーがうまく交錯していると思う。
ただどっちもどんどん人が増えてきたので間が空くと多分忘れちゃうぞ…と個人的には4巻刊行されてから一気読みしたほうが良かったかも、と自分の記憶力に怯えながら読んでいたり…。
呪われた文字、その威力に引っ張られてしまう人たち、世界を壊してしまいたい意志ーーー
さぁ、あと一冊…どんな幕引きになるのかめちゃくちゃ楽しみ…!!!!


・多崎礼『レーエンデ国物語』シリーズ

・上橋 菜穂子 「香君」


・貴志 祐介「新世界より」


もともとあんまり文章でファンタジーを読むの好きじゃないというか…むしろ苦手なんだが、そんな僕でものめりこんで楽しめたのはこのあたり。
結構本読んでるつもりなんだけど、ファンタジーで読んだ本っていうと結局いっつも同じタイトル上げてる気がする…。

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