読書感想『レーエンデ国物語 夜明け前』多崎 礼

本屋大賞にもノミネートしたファンタジー巨編「レーエンデ国物語」第四弾
建国の始祖の預言書通り、神の御子が誕生した第一巻よりすでに370年の時が流れたイジョルニ帝国。
レーエンデ人を迫害し、反逆の目をつぶしながら進んできた帝国は西の司祭長ヴァスコ・ペスタロッチが時期王に即位しようとしていた。
ヴァスコは正妻と嫡男・レオナルドがありながら略奪してきた愛妾を皇后に据えた。
残虐で自分本位なヴァスコとは違い良き人間へと育っていたレオナルドのもとに、異母妹にあたる少女ルクレィツィアが預けられる。
片足をなくしたその少女は美しく、誰よりも聡明だった…
やがてレーエンデを愛する兄と妹は、それぞれのやり方でレーエンデに革命をもたらそうとする。
レーエンデに自由を…希望の夜明けに向け、最も暗い時代が幕を開ける―――


ついに四巻…苦難のレーエンデは巻を進むごとに病んでおり、革命を起こす気力すら残っていない。
帝国に支配され理不尽を強いられることが当たり前であり、その意識はイジョルニ人だけではなくレーエンデ人にも卑屈に根付いてしまっているという状況である。
絶望のレーエンデを救うため奮起を促すレオナルドと、いい加減目を覚ませとあえてレーエンデ人を窮地に追い込むルクレィツィアが描かれるのだが…
毎度毎度…切なくてつらいぃ~
そしてユリアが生んだ御子、失敗したテッサの革命、人々に愛される劇『月と太陽』と、それぞれの時代の物語のつながりがより強固に感じる一冊だった。
シリーズ物って圧倒的に固定のキャラクターがいてどんどんそのキャラクターを中心に物語が動いていくパターンが多いと思うのだが、このレーエンデ国物語に関しては物語の中心は常にレーエンデ、という土地なのだ。
美しい自然と同時に危険な風土病を抱え、満月の夜は幻魚に蹂躙されるその土地を、支配し利用しようとする人間の手によってもともと住んでいた人々が迫害されるという…ファンタジーでありながらもどこまでもリアリティのある理不尽な物語なのだ。
何度もその支配から逃れようと立ち上がったのに、そのたびに力で抑え込まれてきた辛い歴史の物語なのだ。
四巻目ではついに、そもそもなぜ最初の預言書を残したのかにも触れられ、今の状況に陥ってしまうそもそもの理由も明かされた。
あーあと一冊で終わるの?
凄い楽しみで同時にめちゃくちゃさみしい…。
何か月かに一回続き読むの楽しみだったんだが…。
果たしてあと一冊、どんな幕引きを見せるのか…
これは完結したら改めて読み直したいシリーズになるだろう予感しかないわ…。

・多崎礼『レーエンデ国物語』

・多崎礼『〈本の姫〉は歌う』シリーズ

・高殿 円「忘らるる物語」

すっかり多崎先生のファンと化してる…たまにはファンタジーもいいもんだ…。

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