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宇宙視点から経営を語る|ユニバーサル視野で観るメタ認知と意識の獲得

ウエイクアップでは、「宇宙視点からの意識の進化」というプロジェクトを進めています。その中で、「宇宙視点で経営を語る」をテーマに、実際に組織の経営に携わっている島村 仗志(ジョージ)、山田 博(ひろし)に、岡本 直子(なおこ)が加わる、という形で対話を行いました。
島村は、(株)ウエイクアップの代表取締役社長であり、山田は、(株)森への代表取締役かつウエイクアップのメンバーです。

※本記事内に登場する人物の所属・役職等は動画撮影当時のものです。

~ 宇宙的な視野とは ~

島村:「宇宙視点」といえば、先日(2019年7月)、国立天文台准教授の、縣(あがた)秀彦先生にお出で頂いて、素晴らしいイベントになりましたね。

山田:縣先生の話の中で、オッと思ったのは、SDGs経営に言及されたときです。
SDGsでは、いろいろな目標を設定して進んでいるわけだけれど、その中の達成基準の1つに「宇宙の中の地球というユニバーサルな視野の獲得」というものがある、と。これが目標だ、と言われましたね。

島村:SDGsという大きな枠組みが、ちゃんとこういう言葉を与えてくれている、というのは、うれしいですね。これからの企業経営がこの問いと向き合う、というのは、すごく楽しみです。

山田:この中には、「宇宙の中の地球」と「ユニバーサルな視野」という、2つのポイントが入っているけど、まず、「ユニバーサルな視野」、つまり「宇宙的な視野」って何だ?ということを話してみたいと思います。
「宇宙的な視野」っていうけど、我々、宇宙に行ったことないですよね、あんまり。

島村、岡本:残念ながら、ないです。

山田: 実は、ぼくは、あるんですよ。といっても、もちろん現実ではなく、瞑想のときとかに、「宇宙にいるんじゃないか」っていう感覚があったりする。「行ったこともないのに、宇宙的な視野って獲得できるんですか?」といわれるかもしれないけど。
まず、思うところを出してみましょうか。「宇宙的な視野」って、何ですかね?

島村:ぼくも、この身が実際に宇宙空間に飛び出たことはないけど、でも実は、この空間自体も「宇宙」なので、ぼくたちのすぐそばに宇宙があると思った方がいい、とある方に言われたことがあります。もう1つは、宇宙視点から自分を眺めたときに、自分という存在が、本当にはかないものだ、ということ。でも、それは決して、価値がないという意味ではなくて、全体の中の一部なんだ、ととらえる視点。「宇宙・ユニバーサルな視野」というと、そんな感覚を持っています。

山田:そうですよね、全体の中の一部。例えば、石垣島なんかに行って、真っ暗な空に天の川がある。我々は、その天の川銀河の端っこにいるわけ。天の川銀河の中に、数千個の太陽、恒星があって、その中の、わずか1個の太陽系の中の惑星に、我々は住んでいる。で、天の川が肉眼で見えちゃうと、あ、宇宙の中に浮いているな、という感覚を持ったりする。そのとき、自分と宇宙が分かれていない、一体というか、その中に実際属していて、分けることのできない一部になっている、という感覚を持つことがよくあるんですよ。

岡本:分けることのない一部だ、というのは、このプロジェクトをやりだしてから、あ、本当にそうなんだ、ということを感じている最中です。宇宙と私とか、宇宙とつながる、というと、宇宙と自分は別物というか、距離があいてしまうけど、そうではなくて、そもそも自分も宇宙の中の一部だ、って感覚が最近わかってきた感じです。

~ 思考とは「分けること」 ~

山田: そうですね、今、すごくいいことを言ってくれましたね。
何々と私、って言った瞬間に、もう分かれちゃうんですよ。人間は、何かを分けていかないと思考ができないので、認知的にも、分ける必要があるんです。何かと何かを分けて、その関係はどうなっているのか、というふうに考え始める。我々は、生まれて物心ついたころから、何かを分ける、というのが当たり前として生きていますよね。
毎日、そうやって生きているのだから、自分たちは何かを分けてしまっているんだ、という認識を持つことからスタートする、ということでしょう。

島村: 分けているということと、でも実は自分自身もその全体の一部なんだ、ということが、矛盾なく、一人の存在の中にあればいいんでしょうね。
でも、自分を振り返ると、「私」というものの認識を確立していくプロセスには、なんかこう、すごく力が入っていたな、と感じる。昭和の時代から平成を生きてきた人たち、ぼくだけではなく、一般にそうだったのではないかと。
「責任感」という言葉がすごく大切で、小学校の通知表にも、「責任感がある」って欄に、〇とか△とかつけられたり……。責任感がある方がいいんだ、という教育を受けてきた。もちろんそれは良いことだし、そうやってずっとやってきたのだけれど、そのことと、宇宙と一体になるとか、全体の中の一部という、一気に脱力していく感覚との、その狭間に、今ぼくたちはいる、という感じがあるよね。

~ 「分断」から生ずるひずみ ~

山田:話を「経営」に戻すと、じゃあ、分けていくと、経営ってどうなるんだろうか。例えば、うちの会社とあっちの会社、うちの部署と別の部署、同じ部署でも私とあなた、と分ける。基本的に分業でしょう、ほとんどの仕事が。それによって生み出されている効果的な面と、効果的ではない面が、今、経営の中であらわになってきた。昭和の時代は、疑問もなく、分業、分業。それが効果的だと思われてきたわけです。今は、それが生み出したひずみが結構大きいように感じるんですよ。

岡本;立場によって見えているものが違ったり、お互いよかれと思ってやっていることが行き違ったり、とかいうことは、よくありますね。

山田:よく起きるよね、利害の対立。で、お互いが理解し合えないと、距離をおいたりとか、激しく対立・衝突したりとか、まあ効率的じゃなくなりますよね。

島村:部分最適と全体最適みたいな話かな。開発部門なら開発部門の最適解があって、営業部門には営業部門の最適解があって、それが矛盾することがある。本当は一個の生き物なのに、それぞれが最適解を追及すると、矛盾と衝突が生じてしまう。
分かれた個体それぞれのまとまりが、それぞれ次のステージを目指す、そのこと自体はいいことなのだけれど、それが合わさったときの軋轢が、弊害になる。そこが解消されるようなうまい仕組みなり、視点なりが、経営の現場で獲得されると、きっと新しいステージが待っているのではないかな、という気がします。

山田:分けたことによるメリットもあるのだけれど、それによって起きているデメリットもある。それを包含して次のレベルに行くには、それを超える、我々の思考の枠組みを超えたとらえ方が必要なのではないか、と日々思ってますね。
ビジネスやっていると、よく、「ウチの会社」って言うでしょう。「ウチ」ってどこですか?ここに見えない壁があって、ここからこっちが「ウチ」、というのが刷り込まれているじゃないですか。例えば、どこかと一緒に協業していきましょう、パートナーシップ組みましょう、っていって、形の上では組んでいるのだけれど、結局、その中には、自分の家を守りたい、ウチを守りたい、という気持ちがあって、何か利害が対立すると、「いやあ、それは」みたいになる場面によく出会います。これって、ものすごいロスを生んでいると思うんですよ。

岡本:意見の食い違いとか、対立とか衝突が起きている、そのエネルギーをもっと違うことに使えばいいのに、と思います。話してみると、本当はお互い思っていることは同じで、もっと良いところにいきたい、こんなふうに良くしたいと思ってやっている。だから、対立するのではなくて、そこに一緒に向かうことにエネルギーを使えるといいな、と思うときがよくありますね。

島村:自分だけが良ければいい、ということの延長線上に、ウチの部署が良ければ、ウチの会社が良ければ、もっと規模を大きくすると、ウチの国だけが良ければいい、という話になる。でも、実は、みんなで発展していった方が、全体として、最終的には自分たちにとっても、ウチにとっても良いことがある、という視点を獲得できると、たぶん、もっと楽になり、もっと無駄が減るんでしょうね。

~ 「銀河系人」という視点 ~

山田:もっと全体を意識することで、もっと効果的になる、ということですね。歴史的にみると、いろんな局面で、ぼくらは大きなシステムの一部なんだ、と視野を広げてきているとは思う。
例えば、幕末のころ、〇〇藩や△△藩が「ウチの国」だったところに黒船が来て、あら世界があったのね、大きいわね、と。じゃあ、藩ではなくて、日本だ、というシステムになった。今は、日本として他の国との外交、安全保障、というシステムの中にいるけど、先日の縣先生の話でも、近い将来、知的生命体が宇宙で発見される可能性が高まっているそうですね。もしそうなったら、ぼくたちは、にわかに、「その星の人と、私たち地球人」ということになる。そうすると、ようやく、日本人から地球人というパラダイム、枠組みに行くと思うんです。
さらにいくと、我々、銀河系人ですね、と。隣にアンドロメダ星雲があるので、「アンドロメダの皆さ~ん、我々は銀河系人です」みたいなところまでいっても、おかしくない。そういう意味でいうと、人間の意識っていい加減だな、と思いますね。

岡本:何かを創り出している、幻。

山田:そうそう、幻的、イリュージョン的。ある枠組みでみたらこう見えるけど、別の枠組みをとった瞬間に、全く違うとらえ方ができるわけだから。いい加減、という言い方がいいかどうかわからないけれど、曖昧ですよね。そういうところで、我々は「人間やってる」という自覚があるといいのかな、と。

島村:「自覚があるといい」というのは、まさにそのとおり。銀河系人なんだよという感覚と、今この目の前の伝票を丁寧に書く、というのが、矛盾なく統合できているといい、と思うんですよ。自分が意識できる範囲で目の前のことに力を注いでいくことの大切さとともに、「全体の一部である」という認識が両方あると、いいんじゃないか。

~ 「分断」を超えた先にあるもの ~

山田:今、話してて思ったんだけど、銀河系人って言っている時点で、また分けてるじゃない、アンドロメダの皆さんと私たちとをね。宇宙の果てまで行ったって、マルチバースっていわれているから、ウチの宇宙とそちらの宇宙いかがですか~、みたいな話をやってたら、どこまでいっても止まらない。
人間の脳が創り出す、この分断の機能というのは、止められない。これを止めるんじゃなくて、超える、とはどういうことなのか?これこそ、ユニバーサルな視野じゃないか。

島村:今の問いに対する、ぼくなりの到達点は、「答なんてないよ」。実は、私は誰でもない、というか、何か言った瞬間にその分断が起きるので、だからもう「あなた誰なの?」と問われたら、「実は、誰でもないんだよね」というところにいる。本日現在は。

山田:すごいところに到達してるんだね。

島村:いやいや、だって、その分断の果てには、何か言った瞬間に分断が起きちゃうわけだから、もうそういうふうにした。

山田:した?自分の中で?

島村:うん、自分で「した」。そうしておくと、逆に、何にでもなれるというか、自由になったかな。

~ 経営とは、相反するところに立つこと ~

山田:確かに、それは自由ですね。「何か」になっていなければいけないのではなくて、何者でもある、と。で、何者でもない。禅問答みたいな境地に入っていく。
でも、そうね、その両立ができたら、素晴らしいよね。経営って、要するに、矛盾したものをずーっと持ち続けることじゃないですか。現実的にこうしたらよい、というのは理屈上わかるけど、そうできないんだよ、という状態があって、それを、「いやそうなんだけど、どうしたらいいの?」って迫られるわけじゃない、経営者って。
多分、経営をしている人たちは、その相反するような何かを統合し、「まあ、ここで行こう」みたいに決めて進むことをしているんです。

そのとき使っている感覚は、「何でもあって、何でもない」というような、自分の直感。いろんな経営者の方もそういう感覚を持っておられるようだし、ぼくも会社の経営やっていて、似た感覚がある。ただ、それは大っぴらに言えない、「いやあ、勘なんだよ」とは言えないので、困っちゃって、後付けで「それは、こうこうこういう理由で」と理屈をつけて言っている気がします。

逆にいうと、いろいろなものを積み重ねた上で、よくよく塾考した上で、でも決められないから、最後は、自分の中にある感覚、直感、ひらめき、洞察、なんかで決めている。しかし、「それで決めたんです」と言えないので、「いろいろこう考えて、データはこうで」って言って、周囲を納得させている気がする。

~ 「手放す」経営 ~

島村: そういうパターン、つまり、さっきの責任感の話とつながる気もするのだけれど、その組織で最も優秀な人が経営者をやって、最後はその人が肚決める、みたいなことは、これからも、もちろん、すごく大事だと思う。
でも、一方で、これから先、もしかしたらある可能性として、「オレにはわからないから、みんなどう思う?」と経営者が周りに訊いちゃう、昔からある言葉でいうと「周知を集める」というのも、ありかなと思っている。

岡本: ジョージは、もう、そうやってますよね(笑)。
「オレ、わかんない。オレ、決める権利ないからさ、どう思う?」ってしょっちゅう言っている気がします。

島村:正確に言うと、権利はあるのかもしれないけれど、力がない(笑)。

山田:決めても、動かないってことね(笑)。

島村:そうそう、自分が決めた通りにはならないし、でも同時に、どうしたらよいかわからない、ということに正直でいる。その方が、スペースが生まれる気がする。

山田:これは素晴らしく大事なことだと思いますよ。ジョージも、以前は、もっと縛られていたというか、なんとかしなきゃ、とそんな話ばかりしてたね。
「それ、手放したらいいんじゃない」と、オレが無責任に言うもんだから、最近、すごく手放している気がする。素晴らしい進化を遂げたんですよ。宇宙的視野を手に入れたんじゃない?

島村:う~ん、そうかもしれない。その、宇宙視点を手に入れたということと、ほぼ同時並行で起きるのは、「(以前は)やっぱり力入っていたなあ」と、体感覚でしみじみわかること。だから、昔のことが恥ずかしくてしょうがない、というか、必要なプロセスとしていとおしくもあるんだけれど、昔は力入ってたよね……。

山田:なんで力入っちゃうかというと、「全部、やらなきゃいけない」とか、「自分がコントロールしなければ、全体がうまくいかない」「自分が全部知っていなければいけない」とかいう、その考え方が、バックグラウンドにすごくあると思うんですよ。

島村:さすがに、コーチングを皆で共有している会社だから、「コントロールする」って意図はなかった。だけど、力が入っていた、ということの正体を深く見ると、「最終責任を自分が取る」ということに力が入っていたな、と思う。通常の社会通念でいうと、すごくいい話だと今でも思うけれど(笑)。

~ 「責任」とは ~

山田:じゃあ、その「責任」ということを考えてみましょうか。「なぜ、責任を取らなければいけないか」ということ。
 経営者が、なんで責任をとらなきゃいけないんですか?

島村:ほんと、そうだよね。それは、小学校の頃に、通信簿に「責任感がある」に〇つけられたから……(笑)。

山田:それ、引きずってるのか、まだ(笑)。

島村:自分なりに内省をして、「どこから、ぼくの責任感がはぐくまれてきたのか」を考えると、あの通知表だったんだよね。親の言うこと、言いつけを守るとか、まじめな子ども、まあ、良い子だったんだよ。だから、周囲の期待に応えるとか、普通に、真っ当に素直に育っていくと、そんなふうになるんじゃないかな。

岡本:そうなるように教育されてきた気はします、確かに。

島村:だから、ご縁をいただいた先生たちには、みんな感謝なんだけれど、その行きつく先は、わけのわからないことに全責任を負わなければいけない、という、ある種の窮地に自分で自分を勝手に追い込んで、全身の力を入れて、なんとかしよう、ということになる。
 コントロールはできないんだけど、責任だけはある、という、今思うと、ちょっと笑っちゃうような状態に陥っていた、という気はする。

~ 「守らなくていい」 ~

山田:それを聞いて浮かぶのは、「守る」という感覚に近い何かがあるのではないか、ということ。何か、綿々と伝わっているもの、「家を守る」とか。何かを守る存在であるから、責任を取る、ということがある気がする。
 でも、宇宙的視野、ユニバーサルにバーッと広げてみると、守らなくていい、と思うのですよ。というのは、地球がなんで動いているのか、誰も知らないじゃない? 地球がなんで銀河系を、太陽系の中で旅しているのか、わからないでしょ?
たぶん、学者の皆さんが研究はされているのだけれど、本当のところはわからないと思うんですよ。わかった気がして、錯覚した中で、我々はやっているんだから、守るものなんて、何もないんじゃないの?
だって、もしかして隕石が落下してくるかもしれないけれど、そんなこと予測できないんだよ。ついこの間も、すれ違ったんでしょ、隕石と。で、予測できないし、隕石がぶつかってもおかしくない中で、我々は生きている。恐竜が絶滅したときも、ユカタン半島に、直径10㎞の隕石が、ボーンとぶつかったわけでしょう。それが来たら、避けられないじゃない。

岡本:守ろうとしてもね。

山田: 守ろうとしたってね。で、このユニバーサルな視野を獲得したら、守るよりも、まあ、今、せいいっぱいやる。なんか、それでいいんじゃない?

島村:ほんとに、そのとおり。

山田:こんなこと言うと、いいかげんな奴だなあ、って今の常識でいうと、思われるだろうね。でも今日は、宇宙的な視野の話をしているので、いいんじゃないの、って思うんですよ(笑)。

~ どうやって「宇宙的視野」に行きついたか ~

岡本:その、守ろうとしていたところから、「いいんじゃないの?」という宇宙的視野に、どのようにして行ったのか、聞きたいです。

島村:それは、こういう素晴らしい仲間に恵まれたというのが一番だと思うし、やっぱり、ベースにコーチングというものがあったというのが、ラッキーだった。
ただ、初めは、この会社の代表として、ここを潰さない、というのが、ポーンと入っちゃっていたね。絶対に潰さない、倒産させない、ということを強く意図していたことが、「守る」とか、責任につながっているかな。
それが、変わったのは、数年前に、ある種の無力感を感じたのが、一番のきっかけだと思う。ウエイクアップの傘下にあった4つの会社を統合して、1つの会社にしたよね。そのとき、ちょっと会社らしくしようとして、意思決定権限表を作ったり、会議体を、経営会議から部門長会議とかにカスケードダウンしたり、というふうにしたけれど、はっきり言って、うまくいかなかった。
 これは、ぼくたちが日ごろ標榜している、コーアクティブ®な世界観とはちょっと違うよね、ということになって、それを手放して、「全員に意思決定権がある」ということにした。それが、ぼくにとっては、変容のきっかけになった。ただ、その瞬間に、「でも、責任だけはオレにある」という視点に立ってしまった、というのはある。

岡本:一時期、そう言っていらしたときがありましたね。「ぼく、これ決められないんだけどさ、責任はあるんだよお」って。

~ システムが個人を超えて変容する ~

島村:あれが、ぼくにとっては一番いい機会だった。逆に言うと、その当時の自分を超えた形態に、組織が先に行ってくれたのが、ぼくにとってはすごくラッキーだった、今思うと。

山田:ああ、自分を超えた形態が先にやってきた、システムとして。そういう形もあるわけね。

島村:あるわけですよ。あの、ケン・ウィルバーの4象限モデル*1がありますよね。僕の場合は、内面が先に進化したのではなくて、外形が先に進化したわけですよ。そして、それに引っ張られるように、「あ、この形態の中で、このままの自分でいても、たぶんダメだ」と思った。

岡本:じゃあ、今は、「決められないし、責任もない」と思っているのかな?

島村:ああ、いい問いだね(笑)。ここ、絶妙なポイントで。
 これは、ぼく個人というよりは、僕が持っているこの役割が、今後どういうふうになっていくかということのポイントになると思う。もちろん、一般社会通念上の責任は引き続きある、それは間違いないし、しようがない。

岡本:社長という名前だから。

島村:社長というよりは、商法上の代表取締役を個人が担うという、今の仕組み上においては、引き続き責任はあるけれど、でも、起きる結果そのものは、宇宙の流れに乗っていれば、どんな結果になっても大したことない、っていう感じ。

~ 「宇宙の流れ」にのる ~

山田:宇宙の流れ、出ましたね。宇宙視点ですからね、戻しますよ、話を。

島村:そうだね、ごめんごめん。

山田:いや、でも冗談じゃなくて、宇宙の流れって、ぼくもあると思うんですよ。宇宙の物理法則とか、いろいろあるじゃないですか。地球は太陽の周りを回っているし、何百年に1回彗星が来るとか。何かよくわからないのに、何かあるものの中で、ぼくらは生きている。「摂理」って、ぼくは言うんだけれど、摂理の中で動かされているという感覚は、多くの人にあるんじゃないでしょうか。
ただ、「経営って、摂理なんだよ」って言っても、まあ相手にされませんよね。「それで、結果でるの?」とか言われてね(笑)。

岡本:お金、もうかるの?とか。

山田:もうかるの、摂理で?とか。ただね、今期どうする、とか中期計画3年でどうする、とかいう話をしても、時間軸を1万年とかにしたら、何が拠り所かといったら、摂理しかないんじゃないか。そんな、細かい戦略がどうこうって組み上げたって、1万年、わかるはずないですよ。宇宙のレベルって、何億光年でしょ。

岡本:宇宙誕生から、138億年ですもんね。

山田:光が1年で進むのが、1光年ですよ。そんな世界の中で、われわれ生きているのに……別にいいじゃん、て。
 で、宇宙のことを思うと、ぼくは摂理に任せた方がよい、と思うわけ。摂理に任せてうまくいっていないのは、人間だけなんですよ。空に風が吹いていて、虫がいて。さっき、蚊に刺されたんだけど、蚊たちは、摂理に任せて生きているじゃない? それでうまくいっている、全体として持続しているじゃない、命が。
ぼくは、森のこともやっているけど、森の中にいると、そのことがもうダイレクトにわかる。摂理が働いていて、みなさん、木も草も虫も石も、それに身を任せてそこにいる、っていうだけで、全体がうまくいっている。
全体が相互依存しあって持続している。持続的発展を遂げているっていうかね。で、人間としてそこにポツンといると、余計なことばっかり考えているんだな。自分の状態を、メタ認知して、ちょっと引いて見ると、自分だけがなんか、この自然の摂理の中で、浮いているな、と。溶け込んでいない、異物みたいになっている、っていうことをよく感じる。人間はなぜ摂理から外れているんでしょう、ということをね。

島村:それは、冒頭の話そのままだと思うのだけれど、昆虫も植物も、たぶん、個っていう意識がないんだと思う。でも、ぼくたちは、何の因果か、この「意識」がある。ぼくたちは、大自然の存在物の1つであると同時に、ぼくたちだけが意識を持ってしまった。

岡本:でも、それが武器である、ということもありますね。

島村:もちろん。さっきの部分最適と全体最適の話になるけど、だから、進化できる。
6000年くらいの文明という時代の中で、ものすごく生活が便利になって、さらに、平和の中で、「次の経営のあり方」みたいなことをこうやって自由に話せる。そういうことと、さっきの大自然の中の異物感、その両方を持っているのが、ぼくたちという存在だと思う。
 ここから先は、その、個として獲得した意識を、どこまで進化させていくか、というのが、一人ひとりの責任、いい意味での責任になる。
 もう一度、経営の話に戻ると、そういうことを、ぼくのように体感できる人が、ビジネス現場で一人でも多くなるといいなあ、と思うのですよ。

~ 「宇宙意識」と「目の前のことへの意識」を統合する ~ 

岡本:冒頭の話にもありましたが、宇宙視点の獲得と、目の前のことへの意識、この2つを、どのようにしたら統合できるのか、聞いてみたいです。

山田:まあ、経営者の人って、結構いろいろやっているんですよ。瞑想したり、占い師つけたり、ヨガやったり、座禅行ったり。それで何やっているかといえば、自分の意識状態を、正気に保とうとしている。「正気」というのは、全体を認識できる正気。つまり、幻想によって敵対したり対立を作り出したりとか、分けてしまって効果的でない方向に行かないようにする、という正気。それを保とうとしている。それは、サプリメント飲んでもうまくいかないから、なにか精神的な手段に頼らなきゃいけない。
今挙げたいくつかの例は、全部、内省していく仕組みになっている。ボディワークもするけど、結果的に自分の内面に意識が向くようなメソッドなんですよ、ほとんどが。
そして、これらは、今に始まったものじゃない。数千年も前から開発されてきた、人材開発といわれる分野の、超長く続いているメソッドじゃないですか。

外に意識を向かわせると、分断してしまう。あれとこれとは違うという思考が働いてしまう。だから、意識を内に向けることで、分断していない、元の方へもっていこう、戻っていこうとしているんじゃないかと思う。内側に戻ると、分断が起きていない「何か」がある。ある、というか、あるような気がするから、そっちに意識を向けていくと、「あ、こんな感じかな、分かれていない感じ」みたいな。自分がやっていて、そう思いますね。

あと1つ、最近はやりの言葉でいうと、メタ認知。つまり、今の状態をもう1つ上の次元から見ていくということ。そうすると、自分の今の状態、今なにやっているかということが、俯瞰して見えて、「あ、こうじゃない方がいいんじゃない?」とか、自分でわかる。たとえば、誰かと対立しているとき、バアーっとやり合うんじゃなくて、この人の位置に立ってみたら、なんだ、言ってること一緒じゃないか、と気づく。
で、これをメタ認知①として、その状態をメタ認知②でさらに俯瞰していくと、どんどん、どんどん、メタが進むじゃないですか。この練習というか、習慣をつけると、比較的、分断でない意識レベルに近づいていくんじゃないのかな、という気が最近しています。

島村:ぼくらのやっているコーアクティブ・コーチング®自体、自分のことを誰かに話すという体験が、メタ認知の獲得のスタートですね。相手から、「反映」もしてもらうからね。
もう1つ、システムコーチング®*2というアプローチは、まさにそれをリアルに体験できる感覚があって、そういうアプローチを日常的に使えるようになったのは、自分たちにとっての進化だと思う。
そして、組織でいうと、これまでのようなヒエラルキー型の上意下達ではない組織、上司にお伺いを立てるのではなくて「自分で考えなさい」という環境に身を置くだけでも、意識の進化の機会になるかもしれない。

山田:さっきの「それでお金はもうかるの?」ってことだけど、いろんなところで話をしていると、よく「その“宇宙意識経営”をしてみて、結果、出るんですか?」って訊かれる。でも、やらなきゃわからないよね、まず。
結果が出ている組織もありますよ。最近いろんな本がでていて、コントロールしない方がうまくいくとか、管理しない方がいいとか、そういうトライをしている経営者の方が書いておられる。
宇宙の摂理にしたがっていると、結果は必然的に出ると思う。出ざるを得ない。ただ、その「結果」というのは、利益を大きくするというだけではない。持続していくために必要な「結果」は、今われわれが結果としてとらえていないものの中にも、たくさんある。人が育つことだったりね。いろいろな、目に見えない、数値化できないところにもたくさんあって、われわれが「それも結果だ」とメタ認知できれば、「結果は出ている」と言える。

島村:それは、さっきの、宇宙の流れ的には、まあ大したことない、って話と、たぶん同じことだね。

山田:まあ、似たことですよ。

岡本: 宇宙視点と経営のお話、どうもありがとうございました。

*1 ケン・ウィルバーの4象限モデル:インテグラル思想で知られるケン・ウィルバーの個人―集団、内面―外面の2軸、4象限によって事象を包括的に認識する視点。
*2 システムコーチング®は、CRR Global Japan 合同会社の登録商標です。https://crrglobaljapan.com

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