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意識の進化 × SDGs|想いと取り組みから生まれる企業のパフォーマンス向上とアイデアの発想

「宇宙視点からの意識の進化プロジェクト」では、「意識の進化×○○」シリーズと題して、いま問われている人の意識の在り方、そのアップデートについてさまざまな角度から探求し、対話をお届けしています。第2回目は「意識の進化×SDGs」をテーマに、ウエイクアップのSDGsプロジェクトのメンバーである小西勝巳(かつみちゃん)、番野智行(ばんばん)、三升谷真秀(えま)、Mete Yazici(Yazici)の4名で語り合いました。

※本記事内に登場する人物の所属・役職等は動画撮影当時のものです。

~本日のテーマ~

小西勝巳:今日は「意識の進化×SDGs」をテーマに、4人で対話をしていきたいと思います。よろしくお願いします。
番野智行・三升谷真秀・Mete Yazici:よろしくお願いします。

小西:最初に、この4人がどんなバックグラウンドを持ってここに集まっているのか、その紹介から始めていきたいと思います。

私から口火を切ってみると、私は元々、国内大手ITメーカーで長く仕事をしていました。主に経営企画や人材育成などを担っていたのですが、そんな中でいろいろと思うところがあり、ウエイクアップにやって来た、と。そんな背景があります。

番野:なんで今このSDGsのチームにいるのか、というのもぜひ聞きたいですね。

小西:そうですね、元々、前職時代からサステナビリティや社会の持続可能性について、何か取り組みたいなと思って、いろいろやってきたということもあり、ウエイクアップでSDGsのプロジェクトが発足するということで、関わりたいなと思って手を挙げました。

では、次はばんばん、自己紹介をお願いできますか。

番野:はい、私を知っている方は、なぜ私がウエイクアップの人としてここにいるのか不思議に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、いくつかのわらじを履いて仕事をしている中で、今はウエイクアップの、特に組織開発の分野のコーチとして、また組織開発チームの運営メンバーとしても、仕事をさせていただいています。

同時に、私のバックグラウンドをお伝えすると、私はずっとNPOに従事しています。私にとって、仕事をする目的は、もちろんお金を稼ぐということもあるんですが、どうやったら良い世の中になっていくんだろうという想いがあります。お金を稼ぐことも幸せへの道の一つかもしれませんが、世の中が良くなっていくことの方が、より自分の幸せにつながるんじゃないかなといったことをずっと想っています。そして、それを仕事にしていこうと思ったときに、大学卒業後にETIC.(エティック)というNPOに就職し、以降は、その運営を担い、またETIC.以外のさまざまなNPOや社会起業家などのサポートを主な仕事としています。

ただ、そういう理念を持っていても、自分でもうまくできなかったり、他の人を支援するといっても思い通りにいかなかったりということが多い中で、コーチングというアプローチに出会いました。自分自身が何か新しいことを創っていくとき、異なる価値観や考えを持つ人たちが協力関係をつくっていくときに、すごく役に立つというか、このアプローチが、社会課題に取り組んでいる人の中にもっともっと広がると世の中変わっていくなあ、と感じました。そんなきっかけでコーチングの勉強を始めて、今に至ります。

最近思っていることは、NPOの人たちだけががんばればいいかというと、そんなことはない。なので、企業の方、行政の方、いろんなところにいらっしゃる一人ひとりが、世の中に貢献したいという気持ちを持って、それがうまく発揮されていくといいなと思いながら、ウエイクアップでも仕事をさせていただいています。

小西:ウエイクアップの中でもSDGsのプロジェクトに関わってくれている、その想いも聞いてみたいなと思いました。

番野:そうですね、私自身もウエイクアップには、コーチングの仕事で来たはずなのに、なんかいつもやっている仕事と同じだな、自分でも、どう関わろうかなと思っていたんですけど。(笑)

でも、ウエイクアップのメンバーの皆さんと話をしたときに、社会とか地球と向き合っていきたいという人がすごくたくさんいて、ここにいるメンバーに限らずですが、そこにうまい形でエネルギーが流れていくと、いいんじゃないかな、と。そんな腹の底も持ちながら(笑)、やっていますね。
だから、このプロジェクトがどこに向かっていくかということは、我々もまだ探求中なんですけども、何かここにある技とか人の想いとかがもっと流れることは大事なことだと思って、探求的に参加しています。

小西:探求的に、いいですね。ありがとうございます。じゃあ、次、えまさんお願いできますか。

三升谷:はい、私自身は、元々、外資系の金融業界に20年くらい勤めていて、企業の中で社会貢献活動のさまざまなプログラムの企画・運営をしていました。ですので、ばんばんのようにNPO側からではなくて、企業の中から、さまざまなNPOのニーズと、社員の皆さんがやりたいこととをつなぐ架け橋のようなお仕事を長くしていました。

そもそもなぜ自分がそんなことに興味があるのかな、というのを考えてみると、私は小学校5年生のときに、父の仕事の関係でアメリカに移ったのですが、そのときに通っていた学校に、ADHDやOCDなどを持っている子どもたちもいたんですね。全校集会などのときも、当たり前にそういった子どもたちもそこにいて、その子たちと常に一緒に過ごすことで、自分と同じ年齢でも全然違う考え方や行動をする子がいるんだ、ということがわかった。
それで、日本に帰って来た時に、そういう子たちがいないということに逆にびっくりして、日本にはそういう子はいないのかな?と思ったくらい。調べてみると、そういった子は全然違う学校に行っていて、その子たちの親もそれをあまり見せないようにしている、という。すごく分離している世界があるんだなあということに、けっこう驚いたんですよね。そこになにか違和感がありました。

それで、大人になってからは、そういう分離のない世界――私はWhole、全体で生きていくという言葉が大好きなんですが――Wholeで生きていく分離のない世界にするには、どういうふうに貢献できるのかなあというところから、自分のやりたいプログラムやチャリティを始めていったということがバックグラウンドにあります。

それと、私自身がコーチングを始めたときに、まずは自分がコーチングを受けたんですけど、自分がいかにたくさん鎧を被っているのかということに気づかされました。本当の自分に出会っていくプロセスの中で、やっぱり人とつながったり、自然とつながったり、私は最近よく地球とか宇宙とかいった話もするんですけど、そういったところとつながって、自分の意識がすごく拡大していって、自分が本当にこの地球の一員として生きているなあ、みたいな。そうやっていろんな肩の力が抜けた時に、初めて自分の強さとか自分らしさというのが発揮されていくなあということを発見しました。今はそれをすごく楽しんでいるプロセスの中にあるという感じです。

なので、ウエイクアップでSDGsのプロジェクトを始めると聞いたときも、自分に何ができるかはわからないんですが、本当に一人ひとりの存在というものは素晴らしく、ギフトなんだ、ということを信じて、参加してみました。
ですので、今日もすごく楽しみにしています。よろしくお願いします。

小西:よろしくお願いします。

Yazici:じゃあ、次は私ですね。私は、国籍はトルコで、日本には26年以上います。大学院の時から日本にいて、社会人になったのも日本で、だいたい金融・保険といった業界で、IT系の製品開発にずっと関わっています。で、そういう仕事をしながら、2005年からHIVウイルスに関するボランティアをやり始めたんですね。2010年からは東京にあるテンプル大学のNPO・NGOプログラムで勉強をして、その間に難民系の団体ともボランティアで仕事をしていたんです。

何のきっかけがあって、そういう社会問題に関わったのかなと考えると、HIVも難民問題もそうですが、世界中で何かニュースになって苦しんでいる人を見ると、何かもっといろいろ、いいやり方があるんじゃないかな、と思ったのです。トルコもそもそも難民がすごく多いし、自分が大人になった90年代は、HIVウイルスはまだ薬がない時代で、アフリカや東南アジアでいろいろな社会問題が出てきて、それに何か貢献できればと思ったのがきっかけです。

ボランティアをやっていると、当事者が目の前にいるので、その人が抱えている問題をよく聴くと、それを通して世界のさまざまな問題が見えてくるんですよね。難民問題は戦争とすごく関係がありますし、エイズはもちろん教育とも関係があったりするし、企業での人の活躍とも関係があったり、すべてと関係している。そういうところを見ると、その関連性、全体がつながっているように見えました。

コーチングは、今は自分でもプロコーチとして活動していますが、人の成長に関わるというのが、楽しい仕事だから。(笑)コーチング以外にも研修講師などいろいろとやっていますが、すべては、人がどういうふうに意識を変えて、もっともっとイキイキしていくのかな、というところに関心があります。
そうなると、次は、進化論的にも、社会問題にも関わっていくとか、もっとアクティブに社会に貢献するようになると思うので、このプロジェクトはそういう意味で、私としてはいいきっかけだなと思いました。何が生まれるかわからないですけど、関わってみると何かいいことが起こるんじゃないかなと思っています。

小西:なるほど、ありがとうございます。

~SDGsについて感じる変化~

小西:こんなメンバーで進めていきたいと思いますが、それぞれ多様なバックグラウンドがあるので、まずはこの10年の中でSDGsという観点から、どんな変化をそれぞれ感じているかを出してみましょうか。

番野:それで言うと、私も、社会を良くしたいという動機はそんなに高く清らかなわけではなくて(笑)、さっきもお話ししたように、どちらかというと自分が幸せな人生を送るために、みたいなところではあるんですが…。

とはいえ、20年前とかですと、社会を良くする仕事をするといっても、それなら公務員になればいいんじゃないの、とか、それをするのは行政の人とか政治家の仕事、みたいな意識がまだまだ強くて、NPOという言葉とかもよく知られていなかったですね。

でもその後、だんだん、社会というものに対して問題意識を持つ人が、20年前と比べると増えてきているなあと思います。1つは、東日本大震災がきっかけでした。あれは原発のこともそうですけど、東北の沿岸地域というのは高齢化や過疎化が進んでいたりというのもあって、単純に地震で人が亡くなったというだけではなく、いろんな社会問題とつながっていたので、大震災を通して、そこにも問題意識を持つ人がすごく増えました。そして、そこで活躍するNPOの姿も知られるようになって。NPOも、企業とかも、社会問題に関わるのが大事だと思う人が増えてきたかなあと思います。

ただ、増えたといっても、世の中の半分の人が関心を抱いているかというと、全然そんなことはなくて、まだ世の中の10%程度くらいで、少ないとは思うのですが。でも、この数年、SDGsといわれ出してから、またさらに広がってきているなあと。それは、SDGsが広がったから増えてきたというよりは、SDGsというものをきっかけに、元々そういう問題意識を持っていた人が、自分も「それ大事だと思う」という感じで、何をすればいいかはまだよくわからないのだけど、声を挙げる、みたいなことが、すごく増えてきているなあと思っています。

それでいうと、私の中では、世の中の社会問題はまだ大変なままなんですが、少しずつ味方が増えてきているというか、援軍がたくさん来ている、と感じていて、もっと来ないかなあ、みたいな(笑)、 そんな感じで…。SDGsとか社会って大事ですよね、と言ったときに、そうですよね、と言ってくださる方の割合は確実に増えたなあと感じています。

三升谷:それに乗せて言うと、昔だと、そういうことをやっている人は余裕のある人だよね、とか、意識高い系という感じで言われていたなと思うんですが。(笑)今は気候変動などもあるからだと思いますが、みんなもう他人事ではいられない、自分たちの生活に関わってきている、というのが大きいのかな、と思います。

意識としても、切羽詰まってはいないけれど、ちょっと何とかしないと、と自分事になってきている。たとえば、イギリスの民家はエアコンもないんですが、その中で冷たいシャワーや冷たい飲み物だけで夏を乗り切る、ということに対する危機感なども、この暑い夏の中で、やっぱり出てきますよね。

そういった変化は大きいなあと思いますし、昔はちょっと良いことをしていると、売名行為じゃないけど、何か良いことをしているのを見せたいんじゃないの、というような感じに見られてしまうところもあったんですが、今は芸能人がチャリティで寄付することも「カッコいいね」という意識に変わっているんですよね。そこはすごく大きな変化だなあと思っていますね。

~どうやってSDGsがスタートしたか?~

Yazici:私も、えまさんが言っていることとも関係があるんですが、2つあります。
まずは、どうやってSDGsが始まったのか、ということを少し調べていたんですが、昔から、世界はこのままだとヤバいぞという人はいたらしいんですが、今は問題がより明確になってきているように思いますね。5、60年前には、世界はこのままだと何となくヤバいぞという感じでした。今は、そのときよりもさらに、こういう次元で何をどこまでやらなければいけない、というのが明確になってきているので、自分が何をやるべきかが具体的に見えやすくなってきているように思います。それは大きい変化だと思います。

もう1つは、私が日本に来た90年代初めは、バブル崩壊の頃ですが、社会はまだかなり余裕があって、どちらかというと日本の成長は続くのでは、という雰囲気があったんですが、2000年代になって震災などもあり、日本社会の問題もだんだん見えるようになってきた。みんなが力を合わせて考えないと、このままいくと日本も明るい未来はないかもしれないという声もどんどん出てきたような気がします。そうなると、一般の人も自分にも関係があるんだとだんだん思い始めてきた…というように思いますね。

えまさんがさっき言っていたように、昔だと、そういうことをやっていると、目立ちたいからじゃないかという感じだったところから、今は、コロナなんかもそうですが、何もやらないよりやった方がいいという雰囲気にだんだんなってきていて、最近の若い人はそういう意識だと思いますし、そういったあたりは、この25年ですごく変わってきているように思います。

~企業における変化~

小西:そうですねえ。私は大企業の中にいましたけど…。元々、和歌山県の自然豊かな田舎の出身なので、自然を大事にしたいなという想いがあり、やっぱり企業や経済界が変わらないと、何も変わらないよなと思って大企業に入ってみたんですね。
でも、入ってみると、やっぱり企業の中だと、そんなことは全く別の世界の話というか、ちゃんと儲けなきゃ!みたいなことが優先されていて。2000年代の初め頃ですかね、これからは持続可能性やサステナビリティが企業戦略の柱になっていくのでは、みたいな話をした時に、それってホント? CSRのごく一部の話じゃないの?という反応が、その時にはあったなと思うんです。

巡り巡って、今だと本当にいろんな会社が、社会的な価値が大事だとか、社会のため、みたいなことを掲げているし、日経新聞を読んでいてもESG投資の記事だとか、そんなことが目につくようになったなと思います。この10年、20年でけっこう変わってきたなというのを、改めてこのSDGsプロジェクトの中で振り返ってみて、感じた次第です。

~若い世代の意識の変化~

小西:それと、若い人の意識が、すごく変わってきているなあと感じます。ジェネレーションZとか、そういう世代の人たちの「社会のため、世の中のために役に立ちたい」というエネルギーがすごいなあ、と。それを受け止めるミドルとか幹部層の方がたじたじ、みたいなこともあったなあということを思い出しました。

番野:そうですよね。私も時々、優秀で想いのある学生たちとも接するんですが、やっぱりそういう人は、そういう目線で会社も選んでいますよね。お給料などではなく、どれだけそういう仕事ができるかということでキャリアや転職先を選んだりしている。そういう傾向は本当に強いなと思います。そういう仕事をやらせてもらえなかったから会社を辞めた、みたいな話も聞くことがありますし。

~金融業界における変化~

小西:この間話していた時に、えまさんから、金融業界でもけっこうそういう流れがあると聞きましたが…。

三升谷:そうですねえ、20年前とか、リーマンショックの前だと、金融業界って、本当に、みんなでたくさんお金を稼いで…みたいな世界があったんですが、今はイケイケどんどんではなくなっていて、やっぱり、多くの人たちがこの働き方でいいのかなと思っている。自分にとっての持続可能な働き方って何だろう、とか。そういうことに向き合うようになってきているように思います。

これはたぶん、コロナによるリモート勤務で自分と向き合う時間も増えたり、会社に行かなくてよくなったりなど、自分の働き方って本当にこのままでいいのかな、と考えているからではないでしょうか。そして、そういったことを考えたり話したりする際に、「持続可能な生き方」という言葉も、キーワードとして出てくることが多くなりましたね。

~新型コロナウイルスと地球~

小西:新型コロナウイルスって、地球上のみんなが強制的に一回ストップ、と考えさせられているみたいな感じもありますよね。

三升谷:そうですよね。昔、Save the planet、地球を救おうという言葉もありましたけど、地球は別に私たち人間に何も求めていないと思うんですよ。私たちにとっては、地球が必要。なのにずっと地球を虐待し続けてきた。けれど地球は何も言わないというか、私たちに求めていない。私たちが、地球の声を聴かずにずっと歩いてきてしまった。今こういうことが起きて、やっと(地球の声に)耳を澄まそうかとなってきている、そういうような感じがありますよね。

やっぱり私たちは、地球に住まわせてもらっているんですよね。私たちが家にこもったことで、ニューヨークでは、空にカモメが飛んでいたり、美しい蝶が飛び始めたり、とか。本当に地球が喜んでいる、自然も喜んでいる。そういうのを見ると、今まで、私たち人間の活動がすごく邪魔していたんだな、とかね。
そうすると、次は、どうやったら地球に寄り添えるような生き方ができるのか、という問いを持てるようになりますよね。

小西:インドからヒマラヤ山脈がすごく綺麗に見えたとか、ありましたよね。
私もコロナで在宅勤務が増えたんですけど、時間のある時に散歩に行くと、自分の身の回りにも美しい景色があったんだなと、その美しさに気づいたり。医療関係の状況は本当に大変なんですけど、このコロナは、そういう今まで見落としていたことに気づくきっかけにもなったな、というようなことも感じますね。

~世界が一つになって共感できる課題~

Yazici:私は、今まではいろいろな問題が起きても、世界中が一つのテーマに共感できるかというと、なかなか難しかったなという気がします。たとえば、難民問題などは、自分が難民でないと、難民の気持ちはわかるわけがないと思うんですね。HIVもそうですよね。自分が関わっていないと、たとえば検査なんかも受けてみないと、検査を受ける人の悩みもわからないし、ポジティブ判定が出た人の悩みもわからない。

でもコロナは誰でもかかるかもしれないし、既に感染しているかもしれないんですよね。そうなると高齢者とのコミュニケーションだったり、自分の親の健康だったり、仕事の心配などは、世界中でみんなが考え始めている。やっと、みんなで共感できる一つのトピックが出てきたなあと思います。今までいろいろな問題を、私は関係ない、貧困も難民も病気の問題も、何も関係ないと思っていた人たちにも、関係のあることになってきているので。

さらに、オンライン化でコミュニケーションもしやすくなっているので、これは本当にいいチャンスだなと思うんですよ。世界共通の課題が見えているし、企業にとっても新しいビジネスチャンスを作るきっかけになるかもしれないですよね。グローバルな悩みですので。

小西:こうやってインターネットでつながっている状態で、共通の課題に向き合ったことって、本当に今までなかったかもしれませんね。

Yazici:そうなんですよね。3月末か4月頭だったと思うんですけど、テレビで、南アフリカでは、そもそも水が足りないという現状があって、その中でどうやって手を洗うか、という問題をやっていたんですよね。
おそらく、以前だったら、水が足りないということに対して、ああ、そういう問題あるよね、くらいだったかもしれないんですが、今だと、みんな、毎日、少なくとも20秒くらい石鹸で手を洗わなきゃいけない、というのをやっていると、水が足りなくて手が洗えなかったら大変だよね、とすごくその悩みに共感できるんですよね。これくらい共感できるのって、本当にこの時期だからこそかなって、そう思いました。

~コロナは私たちに何を問いかけているのか?~

番野:そうですよね。そういう目線で見ると、チャンス、という言い方は、亡くなられた方もいらっしゃるので不謹慎かもしれませんが、全人類が同じ課題に自分事として向き合うということに、本当に転換できるかも、と思いつつ。でも問題がまだ大き過ぎて、コロナは私たちに何を問いかけているのか、など悩んだりもしています。

たとえば、先日、田坂広志さんのお話を伺う機会があったのですが、「コロナはすごく平等だ」ということをおっしゃっていました。それは、誰でも感染しうるという意味での平等さもそうですし、昔ですとお金を持っていれば感染症だとか何かの課題から逃げ切れるみたいなところがあったかもしれないんですが、コロナウイルスはそうじゃない。もし感染が拡大して、コロナウイルスが市中に広がったら、それはお金を持っている人も影響を受ける。コロナウイルスの拡大により、社会を支える労働者の安全が損なわれることで社会システムが止まってしまう、というようなこともある。
「だから、自分だけO.K.ならいい、ということではないんですよ、皆さん」と。そこをどう捉え直してやっていけるかが大事だと問いかけてくるウイルスだ、とおっしゃっていた。まさに今回のテーマである「意識の進化」みたいなものが、すごく問われているなあと感じました。
でもなんか逃げたい、という気持ちと、でもやっぱり大事だなあという気持ちで、最近すごく揺れ動いて悶々としている感じです。

三升谷:それに乗せて言うと、今までは無意識・無自覚でいようと思えばいられたし、逃げることもできた。でも今はやっぱり、一人ひとりが問いかけ続けないといけないところにきた、という感じがしますよね。常に問いかけ続けて行動を起こす。それが正しい、間違っているというのではなくて、とにかく問いかけと行動を繰り返していく。それをやっていかないと、今はもう逃げてはいられない、無意識ではいられない。そういった意味で意識もすごく変化する時期に来ているし、強制的に変化させられているところもある。

~企業でのSDGsの浸透~

Yazici:あとは、我々もよく議論していますが、これまでは一般企業の中で、機能が分離されていた、つまり、CSR部門、SDGs部門があり、他の部門はあまり関係ない、それはその部門でいいことをやっていればいい、といった雰囲気があったと思うんです。
でも今は、一般部門でも、リスク管理として、世界で何が起きているかを気にしていないと、ビジネスモデル自体が大きく変わってリスクを抱えてしまったり、コストパフォーマンスがガラッと変わることなどもあり得ると思うんですよね。サプライチェーンの観点もそうかもしれないし、消費者の観点もそうかもしれない。そうなると生産部門が考えればいいとか、CSR部門が考えればいい、とかではなくて、世界中で皆が、自分が今の生活を維持できるのかな、ということを考えなきゃいけなくなってきている、そんな気がします。

小西:確かに、リスク管理の面でもSDGsや持続可能性を意識していないといけない時代になっていますよね。たとえば、企業の中で、SDGsとかはあまり自分たちには関係ないと言っていたような営業部門なんかでも、いざ、お客様からの提案要件でSDGsが入ってきた、となると、急にうちの会社(のSDGs)はどうなってる?と気にしだしたりする。世の中全体がそういうふうになってきている。自分の組織の事業を守るという観点からも意識をしなきゃいけない、感度を上げておかなきゃいけない時代になっていますよね。

番野:そうなんですよね、もっと小さな具体例もあげてみると、研修をやる時に、お客さんから「ペットボトルで水を出さないでください」と言われたんですよ。で、なるほど、と思ったんですけど、そうすると、そういうことができる研修会場を探さなきゃいけない、ということになる。それで、複数の会場に、訊いたりリクエストしたんですね。「グラスで水を出すことはできますか?」と。その回答がイエスだった会場もあれば、できません、という会場もあったんですけど。結果、そこに対応できない会場は選ばれないし、対応できる会場から選ぶ、みたいなことが起きてくる。

でも、もしそういうことを言う人(お客様)が増えてくると、きっといろんな会場が行動も変え出すだろうな、と思います。意識と行動ってこういうふうに連鎖するんだな。リスク回避や守りだけでなく、攻めで対応していく企業が選ばれていくっていうことでもあるんだなあ、と。身近なことですけど、例としてシェアしたくなりました。

~企業における守りと攻め~

Yazici:今ってもう、大手企業同士のビジネスでは、契約条件としてITセキュリティやコンプライアンス、個人情報の取り扱いなど、いろいろとサインしなきゃいけないことがあるじゃないですか。それがだんだん広がっていく可能性も十分あるかなと思うんですが、もしリスク回避だけではなく、その課題に積極的に関わっているかどうかということも要件に含まれてくるとなると、積極的に関わっていない企業は急に取り引きができなくなる、ということも考えられますよね。

小西:守りと、ビジネスチャンスとしての攻めと、両面ありますよね。

Yazici:たとえば、おたくの製品はこういうような基準で作ることは可能ですか、とか。動物実験はしていないですよね、とか。そういう厳しい制限が出てくると、守りだけでなく攻めも含めて、そういうような基準に製品開発やプロセス開発がフィットしないと、取り引きができないということが出てきますよね。

番野:そうですよね。あるグローバル企業の経営者が、それに対応するのはコストではないか、と聞かれたときに、「短期的にはコストだけど、中長期的にはそういう企業が競争力を持つから、企業の戦略として必要だからやるんだ」とおっしゃっていて、力強いなと思いました。

Yazici:さっき、ばんばんのペットボトルの話も出ましたが、日本はパッケージング(包装)が多いじゃないですか、丁寧に包装されていて。それを、たとえば素材を変えなきゃいけないという議論のときに、それをするにはコストがかかるよね、という反対意見が出がちなんですが。
だけど、ある日突然、政府の方で、その製品が環境にどれくらい負担をかけているか、リサイクルできるかどうか、とか、それによって税金を入れようということがあるかもしれない。コスト削減以前に、税金がかかると、経費の話はそもそも前提が変わってくる。だから積極的に製品開発をしないと、ある日突然、そういうことも出てくるような気がします。

~従業員の持続可能性~

小西:持続可能性の観点では、しばらく環境問題、気候変動などが先行して取り上げられてきていましたけど、最近はいよいよ、社会問題や、企業の中の従業員のリソースの持続可能性にもしっかり気を配って投資して、企業の持続可能性を支えていく人的リソースを作っているか、そんなところにも意識が向いてきている気がしますよね。それが社員の幸せや幸福経営という言葉になっている気もしますけど、そんなところにも光が当たってきているなあ、というのを、最近感じているところです。

番野:加えて、企業の中で社会やSDGsと関わって仕事をしている方たちとお話しするたびに思うのは、皆さん「楽しい」とおっしゃいますよね。これまではこう、四半期の目標達成のために働くとか、それこそ食べるためとか、家のローンが、とか、何のために仕事をしているのかを見失いかけていたんですが。
自分たちの仕事やサービスが届いた先、さらにその先のことまで考えて仕事をしていくということは、難しいんだけど、仕事のやりがいであり、喜びにつながっていくので、っていうようなことをおっしゃる方がすごく増えました。それによってチームがイキイキした、チームメンバーもやらされ感ではなく、ああいうふうにしましょうこういうふうにしましょうと言うふうになった、とか。これは力があるなあと感じます。
SDGsへの取り組みは、人のために仕事をしたいという、誰にでもある気持ちに触れる部分もあるのかなあと思いますし、それによってパフォーマンスが上がれば、新しいアイディアも出て、業績向上にもつながるだろうなあ、と、そんなことをすごく感じています。

小西:それを聞いて思い出したのですが、新事業を検討しているチームがあって、何年後にいくら売上をあげなきゃいけないといってやっていた時は、あんまりパッとしなかったのだけど、「あのおばあちゃんを助けるためにこの事業をやろう!」となった瞬間にチームの雰囲気がガラリと変わって、やっぱり何かやらなきゃ、とスイッチが入ったと聞きました。ばんばんの話もそうですけど、SDGsというテーマがやる気のスイッチにもなるんだなあ、というのを改めて感じたところです。

番野:そうですね、しかも、それが単純な気持ちの問題だけじゃなくて、そうやって本気になると、本気で解決策を考えだすので、結果として、やらされ感で何かを考えるよりも良い解決策につながっていく、ということが本当にあるなと思いますね。

Yazici:そもそも、どの企業も内向きではなく外向きな人材を作ろうと思っているんですよね。外向きというのは、お客さんとのつながりや部署間の問題を積極的に解決するなど、縦割りじゃなくて横断的にものを考えられる人材。リーダーシップってそこを目指しているじゃないですか。そういうふうに社会性の強いリーダーを育てましょう、(一人の)強いリーダーよりも、一人ひとりがそれぞれのリーダーシップを発揮できるような人材づくりをしましょうということになると、求められる人材も変わってくるように思いますね。

~未来に向けて~

小西:最後に、未来に向けて、というところで、SDGsや意識の進化について、それぞれどんな世界を見ているか、見たがっているのか、というところを話したいと思います。どうでしょうか?

番野:そうですね、最後に告白しますが、実は私、SDGsという言葉が嫌いでですね。(笑)急にみんなブームに乗ってるんじゃないよ!と思っていた時期もあったんです。まあ、今は違いますけど。
たとえばさっきのペットボトルの話も、ほんとにどれだけ環境に影響があるかをいってしまうと、他のことをやった方がよいかもしれない、という話にもなっちゃうんです。ただ、一方で、そういうことに関心を持って取り組もうという人に水をかける必要はない。そういうふうに動く人の気持ちを温めて後押しすることが大事だし、そうやって温めて動いていった人は、進んでいく中で、ペットボトルよりももっと違うことをやった方がいいかもしれないと気づいたりすると思うんですよね。これから、そういうことがもっと増えていくのではないでしょうか。

何が正しいかということも大事だけど、動きながら、みんなで、もっとああじゃないかこうじゃないかと話していけるようになってくると、さらに流れが変わってくるんじゃないか。だから今は、SDGsというブームに乗っかって燃える人をたくさん探して増やしたいなと、そんなことを思っています。

Yazici:日本の社会と企業は、これからもっと世界に良い例を出していただけたらいいなと思っています。なぜかというと、そもそも日本は島国で、その島で自然と社会がどうやって生きていくかというのを、皆さん歴史の中でずっとやってきていると思うんですね。そして、これからこの島がどうやって未来に残るかということを考えていらっしゃる方もたぶん多いので。
で、世界も結局大きな一つの島じゃないですか。そうなると、日本での学びや実践、意識の進化を、そのまま海外にも見せられるくらいになると、世界のたくさんの人が日本から学ぶことは多いと思います。宗教観のない八百万の考え方をもっと世界にも見せられれば、日本企業にも絶対メリットがあると思いますし、日本社会ももっともっと変わっていくと思うので、そのビジョンを持って欲しいなと思っています。

三升谷:私は7年くらい前かな、コーチングを学んでいた際に、水筒を持って行って、自分でお茶をいれて飲んでいたら、「変わっているね」と言われことを思い出しました。「なんでもっと楽に、普通にペットボトルで飲まないの?」と言われていた時代から、今はだいぶみんなの意識も変わった時代に来て、それは本当に良かったと思います。

今も個人個人のレベルになると何をすればいいのか、自分に何ができるのかと迷ったりということもあるんですが、やっぱり「問いかけ」ですよね。今どうしたら地球に貢献できる?喜んでくれる?と問いを常に持つことで、気づきを得て行動していくというパターンが大切なんじゃないかなと思っています。

そして、企業の中でやりたいなという想いはあるけれど、まだ活動を起こせていないという人は、自分の中にある想いの火を大切にして欲しいと思います。今ここでできないのならどこでできるのか、とか、できないからやらないというのではなくて、本当に自分の火を大事にして欲しいなあと思います。

それと、私、苔玉とか、苔がすごく好きなんですが、世界にもけっこう、苔好きな人がいて人気があるんです。日本人は自然が持っている声に耳を傾けることが、本来、得意だと思うのですが、でもそれを忘れてきてしまったところもあるので、本当にそこに還っていく時期が来ているのではないかなあと思っています。そういった部分で、日本人って実はリーダーになれるのではないかなと密かに思っていて…。

一方で、世界的な動きの中で、ガバメント的には、国単位として動く傾向、分離の方に流れてきている動きもあるので、その中で私たち一人ひとりが地球人として、どんなスタンスで行動して生きていくのかが、今、問われているんじゃないかなあと改めて思います。

小西:企業の中で、いろんなお客様と接していると、ふだんは何か蓋をしている感じがあるけれど、一人ひとり聞いていくと、その底には何か共通の想いがある。いろんな観点の違いはあるけど、社会のためにとか地球のためにという思いが、何か底の方に眠っているなあというふうに感じています。それを開くようなお手伝いがしたいなとすごく思いますし、何か日本がリードできる部分もあるんだろうなとすごく感じるので、SDGsをいいきっかけにして、さらにその先の世界を見たいなと、皆さんの話を聴いていて改めて感じました。

小西:それでは、今日の対話はこれくらいにしたいと思います。この対話シリーズでは、これからも、今問われている人の意識の在り方やそのアップデートについて、「意識の進化×○○」という形でさまざまな角度から探求して、いろんな方々との対話をお届けしていく予定です。よろしければぜひ、ウエイクアップのメールマガジンやFacebookページなどで最新情報もご確認ください。

というわけで、今日はありがとうございました!

番野・三升谷・Yazici:ありがとうございました!

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