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【キネマ救急箱#14】ピーター・セラーズの愛し方/ライフ・イズ・コメディ 〜ジェフリー・ラッシュの衝撃的なイタコっぷりを目撃せよ!〜

こんにちは。
ニク・ジャガスです。

♫ドドゥン、ドドゥン…チッチチー チッチチー チッチチー
 ドドゥン、ドドゥン…チッチチー チッチチー チッチチー

突然ですが皆様、このメロディーが何か分かりますか?
超有名な「ある映画」のテーマ曲を文字で表現してみました。


ヒント

ピンクの…ヒョウ…?

そうです!かの有名な映画、アニメシリーズ『ピンクパンサー』テーマ曲byヘンリー・マンシーニのイントロ部分でございました。

♫ドドゥン、ドドゥン…チッチチー チッチチー チッチチー
 ドドゥン、ドドゥン…チッチチー チッチチー チッチチー

分かってしまうと、頭の中でメロディーを流しながら読んでしまいますね。

さて、本日ご紹介したい作品は、映画『ピンクパンサー』シリーズの立役者である俳優の半生を描いた『ピーター・セラーズの愛し方/ライフ・イズ・コメディ』です。


ピーター・セラーズとは

ご存じの方も多いかと思いますが、簡単にピーター・セラーズのご紹介です。

ピーター・セラーズは、イギリス出身の喜劇俳優。
代表作に、『ピンクパンサー』シリーズ、キューブリック監督作品『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』などがあります。

ピーター・セラーズ
(1925-1980)

鑑賞後、まず思ったことは「ピーター・セラーズが、こんなに自己中心的で面倒臭いヤツだったとは!」ということ。

学生時代、『ピンクの豹』を見て一気にピンクパンサーのファンになった私。
USJでピンクパンサーのブームが起こりつつあった時期と重なり、映画やアニメのDVDボックス、キャラクターグッズなどを必死に集めました。

そんな『ピンクパンサー』で魅せるピーター・セラーズの演技が大好きだったのに、クズと分かって少しショック。

そうは言えど、やはり才能溢れる人に惹かれてしまう凡人の性。
セラーズの危なっかしい人生を描いた本作は非常に興味深く、見応えがありました。

ジェフリー・ラッシュの演技が、もはやイタコのレベル

ピーター・セラーズを演じるのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、『鑑定士と顔のない依頼人』のジェフリー・ラッシュ。

ジェフリー・ラッシュ

彼の演技が、もはや人工的な“演技”という枠を超越し、イタコでピーター・セラーズをおろしているのでは?というほど本人そっくりなんです。

本編中、「ピーター・セラーズが実際に出演した映画のワンシーン」を再現する場面が多々あります。
そこでのジェフリー・ラッシュの演技が、自分の記憶に残るセラーズの動きと全く一緒だったため、卒倒しそうになりました。

面白おかしい立ち振る舞い、癖のある喋り方、とぼけた表情。

生前のセラーズと(嫌々ながら)何度もタッグを組んだブレイク・エドワーズ監督も「ジェフリーの演技は完璧だった」と驚嘆していました。

ピーター・セラーズが自分で自伝映画を撮ったならば…という演出

「ピーター・セラーズが自分で自伝映画を撮ったならば、自分が主役を演じてコメディ風にするだろう」という見立ての元、本編は一貫してセラーズがセラーズ自身を演じている体で演出されています。

冒頭、撮影スタジオにポツンと置かれたテレビの画面。
そこには『ピーター・セラーズの愛し方/ライフ・イズ・コメディ』と映画の題名が映っており、再生ボタンをセラーズが自分で押す場面からスタート。

その後、人生に悲劇が訪れるたび、セラーズは両親や元妻など第三者になりきって、言い訳のごとくハッピーエンドなB面を観客に語り聞かせます。

また、裕福な家庭だったのか、スターになる前からホームムービーとして8mmフィルムを多用しており、時折本編で上映される8mmフィルムの映像は、セラーズが自省するシーンで効果的に使用されていました。

『ピンクパンサー』シリーズが、まさかATM代わりだったとは

スターになるにつれ私生活が荒れていったセラーズは、よく金欠にもなったようです。

お金がなくなる度に、『ピンクパンサー』シリーズの成功にあやかり、ブレイク・エドワーズに続編制作を持ちかけます。
ただ、役者としてのセラーズは『ピンクパンサー』での自分の演技が大嫌いだったそうで、作品のことを金を引き出すATMとしか見ていませんでした。

これが地味に一番ショックだったんですよね…。笑

精神的にも不安定なところがあり、重要な決断は母親か怪しい占い師に頼りっきり。
気に食わないことがあると、相手が子供であろうがドン引きするほど暴れ散らします。

この映画が、忠実に作られたものであるならばピーター・セラーズはどうしようもなく子供で、数々の成功を手にしながら孤独な人生を歩んだ、少し気の毒な人物のように思います。

世界からコミカルな演技で評価され、コメディアンとしてのセラーズを期待される一方、死ぬまでアイデンティティに悩み、本当の自分を押し出したシリアスな演技を欲していた。

誰もが羨む大スターでも、幸せな人生を辿っているとは限らないんだな。

真のピーター・セラーズの姿を知ったところで、改めて『ピンクパンサー』シリーズを見て大笑いしようと思いました。


ちなみに、セラーズの2番目の妻としてシャーリーズ・セロンが出演しています。
出演時間は短いですが、美しく可愛いセロン様は観客の荒んだ心を癒してくれました…。

♫ドドゥン、ドドゥン…チッチチー チッチチー チッチチー
 ドドゥン、ドドゥン…チッチチー チッチチー チッチチー

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊

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