國分功一郎

【特別対談】國分功一郎×宇野常寛「哲学の先生と民主主義の話をしよう」前編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)

今朝のメルマガでは、政治論集『民主主義を直感するために』(晶文社)を刊行したばかりの哲学者・國分功一郎さんと本誌編集長・宇野常寛の対談をお届けします。今回配信する前編では「保育園落ちた日本死ね」ブログ問題や、反原発・反安保運動について語りました。

毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。

※本記事は、4月26日に放送されたニコ生の内容に加筆修正を加えたものです。

【発売中!】國分功一郎『民主主義を直感するために (犀の教室)』晶文社

▼プロフィール

國分功一郎(こくぶん・こういちろう)
1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。高崎経済大学経済学部准教授。専攻は哲学。著書に『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『統治新論』(共著、太田出版)、『来るべき民主主義──小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎新書)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波書店)など。英国キングストン大学での留学を経て今年4月に帰国し、政治論集『民主主義を直感するために』(晶文社)を刊行。

◎構成:中野慧

國分功一郎さんには、こちらの対談にもご登場いただいています。
國分功一郎×宇野常寛 特別対談「哲学の先生と未来の話をしよう」前編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
國分功一郎×宇野常寛 特別対談「哲学の先生と未来の話をしよう」後編(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)


■民主主義を根付かせるためのキーワードは「直感」

宇野 今回は、1年ぶりにイギリスから帰国した哲学者の國分功一郎さんをお招きして、現在の日本の政治・社会状況について語っていこうと思います。國分さんが、まあ一言で言えば「悪い場所」になりつつある日本から遠く離れているあいだ、僕のほうもこの1年、いわゆる「論壇」的なものとは距離をおいて、毎週木曜朝の「スッキリ!!」以外はほとんど引きこもって自分のメディアからの発信に注力してきたつもりでいます。と、いうことで今回は、そんな二人がこの1年考えてきたことを率直にぶつけあう対談にできたらと思います。
 とりあえずはまず、國分さんの新著『民主主義を直感するために』(晶文社)が発売されたわけですけど、その話からしたいなと。

國分 『民主主義を直感するために』で言いたかったことは、本当にタイトルそのままですね。巻末に、辺野古に行ったときのことを書いた「辺野古を直感するために」というルポが載っているんだけど、その「直感」という言葉がキーワードだと思って本のタイトルにも使うことにしたんです。俺は哲学をやっているから理論的なことをよく話すし、理論はもちろん大切だと思っているけど、「現場を通じて具体的に『直感』する」というのもそれと同じぐらい大切だと思っているんだよね。これまでに色んな場所で書いた文章をまとめた本ですが、結果的にとてもいいものになったと思ってます。
「直感」という言葉にはちょっとしたこだわりが込めてあって、まず、「直感」と「直観」という同じ読みの2つの言葉がありますよね。哲学では「直観」のほうを使うことが多いけれど、こちらは非常に理知的なイメージの単語ですね。それに対し「直感」は感覚的です。多くの場合、英語で言う"intuition"は「直観」の方に対応すると思うんですね。すると、「直感」は英語には翻訳不可能だということになる。こう考えると、この言葉は特殊な身体性が織り込まれているというか、「具体的に体で感じ取る」というイメージのとてもいい日本語じゃないかと思うんです。そういう感覚が民主主義をやっていく上で大事なんじゃないかということをこのタイトルに込めました。

宇野 このタイトルに関して僕もいろいろ思うところがあるんですけど、結論から先に言うと「今のこの2016年の日本では民主主義を直感させないほうがいい」と思っています。

國分 いきなり直球が来たね(笑)。さっそく話をはじめましょうか。

ここから先は

13,144字 / 1画像

¥ 540

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?