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香港の未来のため、岐路に立つ民主派|周庭

香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常——香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。3月11日の補欠選挙出馬無効を言い渡された周庭さんでしたが、急遽民主派の代表として立候補した区諾軒(アウ・ノックヒン)氏の応援活動をすることになりました。同氏の当選、楽観視できない香港の政治状況について、選挙戦を振り返りながら解説します。(翻訳:伯川星矢)

御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第15回 香港の未来のため、岐路に立つ民主派

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数日前に立法会の補欠選挙が終了しました。4つの議席のうち、民主派が勝ち取ることができたのはわずか2席でした。「悪くない結果ではないか」と思われる方もいるかもしれません。そこで、今回の補欠選挙の背景について改めてご説明したいと思います。

1年前、民主派議員6人が全人代の基本法解釈と政府の司法審査により、議員資格剥奪となりました。今回の選挙は、このうちの4つの空席を埋めるために行われました。つまり、これらの議席は本来民主派が2年前の立法会選挙で勝ち取っていたはずのものだったのです。政権が市民の選択を無視して強引な資格剥奪が行ったりしなければ、この6人の議員は今も議事堂の中で政府を観察し、政策の審議に携わっているはずでした。

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政権による圧迫と弾圧はこれだけでは終わりませんでした。禁固刑を課せられたために補欠選挙に出馬できなくなった元立法会議員ネイサン・ローの代わりに、わたしは香港島選挙区に出馬し、民主派を代表して議席を取り返したいと考えていました。1月に立候補したものの、わたしが「政治的なつながり」をもつ香港衆志が提唱している「民主自決」が、基本法の「一国二制度」に相違があることを理由に、選挙管理主任はわたしの立候補を見送りました。わたしだけではなく、他にも2人の候補者が香港独立を主張しているとの理由で、選挙に出馬することができませんでした。

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わたしの立候補が否決された後、無所属の区諾軒(アウ・ノックヒン)氏が急遽民主派の代表となり、香港島選挙区の立候補者として出馬しました。わたしとジョシュアを含む民主派の皆が彼の選挙活動を全力で応援しました。毎日約20もの街宣スポットの運営、選挙会議、事務と行政の作業……ジョシュアはいつも「1回の選挙で5年は寿命が縮む」といつも言っているほどです。少し大げさかも知れませんが、確かに選挙活動は心身共に疲れ果てます。

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選挙期間中、区諾軒とその選挙団に対して、親中派による中傷と攻撃が相次ぎました。一番酷かったのは、投票当日の朝に車で巡回する前、スタート地点で簡単な記者会見を行おうとしたときのことでした。わたしたちは自称4番候補(わたしたちの主要な対戦候補、親中派のジュディ・チャン)の支持者に囲まれ、罵声を浴びせられ、さらに暴力を振るわれました。更に恥じるべきだと感じたのは、ジュディ・チャンがこの件について、襲撃者を批判することなく、この出来事は民主派の自作自演ではないかとまでコメントしたことです。親中派とは言え、選挙を目前にしてここまで理不尽に態度をとるなんて、とても悲しむべきことだと思います。

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区諾軒の選挙活動の開始はわたしの立候補が否決された後からのわずか1ヶ月半でした。半年前から大掛かりな宣伝活動を行っている親中派に比べて、わたしたちは資源も少なく、宣伝に掛けられる時間も全く足りません。しかし、その短い期間お選挙活動で、区諾軒は最終的に約13万票で当選を果たしました。わたしたちの主要な対立候補との差は約1万票と、そこまでの大差ではありませんでした。その他の民主派候補者は新界東区で18万票を獲得し当選しましたが、九龍西区と建築・測量・都市計画・景観設計の民主派候補は僅差で落選しました。九龍西区の直接選挙で民主派が落選するのは初めてのことです。過去の補欠選挙に比べると、香港島区のみではなく、他の選挙区においても民主派と親中派の支持率が縮まってきているようです。分析によると、親中派の情報伝達方法が変化したことが、民主派が支持者を減らしている主要な理由なのではないかと言われています。

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今後は香港衆志を含め、民主派陣営全体が未来へ向かうべき方向性や、情報伝達の方法について真剣に考えなければなりません。このまま親中派に議会を私物化させる訳にはいかないのですから。

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(続く)


▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)

1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政党「香港衆志」の副秘書長を務める。

前回:第14回 認められなかった立候補
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