見出し画像

キラキラとした「地方創生」よりも「生き残りかた」を考えるほうが先なのではと思った話

僕はいま、熊本空港でこの文章を書いている。僕はいろいろあって地方創生の類を取材したり、視察に行くことが多く、あまりこの表に出ていない仕事の一つのまとめが先日発売になった『2020年代のまちづくり: 震災復興から地方創生へ、オリンピックからアフターコロナへ』だったりするのだけれど、この熊本での仕事は来年からはじまるある動画番組の取材だった。

取材したのは熊本県宇城市戸馳島で活動する「農家ハンター」だ。中心人物であり、僕たちを案内してくれた宮川将人さんは『情熱大陸』などにも取り上げられたことがあるので、知っている人も多いと思う。

1泊2日の、割と過密スケジュールの取材だったのだけれど、宮川さんの案内で島の取り組みをいろいろと見せてもらい、食べたものもおいしくとても楽しい経験だった。

「農家ハンター」は、近年急増したイノシシによる農業被害を抑制するため、地元の農家たちが立ち上がり自主的にイノシシの捕獲をはじめた運動だ。そのITCを駆使した現代的な手法と、とらえたイノシシをジビエなどに利用し、経済的にも倫理的にも、地球環境的にも優れたシステムを構築したことで注目を集めている。詳しいことは、来月アップされる動画を見てほしいのでここでは詳しく触れない。今日はこの取材を通して、僕が考えたことを簡単にまとめておきたいと思う。

この「農家ハンター」を中心とした宮川さんたちの取り組みのポイントは、端的に言えば経済的に持続可能な仕組みを、スモールスタートで徐々に拡大していることだ。と、書くといささかオブラートに包みすぎているような気がするので、もう少しはっきり書くとスーパー公務員や地元出身の代議士先生やイケてる首長が、国から大予算を取ってきて住民一人あたり、何百万円の年間予算を使ってテーマパークのようにスローフード系施設や意識高い系イベントを企画するような「地方創生の成功例」や、それ以下のただの補助金ビジネスたちと違って圧倒的に「自立」度が高く、そして現代日本の地方に広く観られる植民地根性からも距離を取っている運動であることだ。

そして

ここから先は

1,145字
僕はもはやFacebookやTwitterは意見を表明する場所としては相応しくないと考えています。日々考えていることを、半分だけ閉じたこうした場所で発信していけたらと思っています。

宇野常寛がこっそりはじめたひとりマガジン。社会時評と文化批評、あと個人的に日々のことを綴ったエッセイを書いていきます。いま書いている本の草…

僕と僕のメディア「PLANETS」は読者のみなさんの直接的なサポートで支えられています。このノートもそのうちの一つです。面白かったなと思ってくれた分だけサポートしてもらえるとより長く、続けられるしそれ以上にちゃんと読者に届いているんだなと思えて、なんというかやる気がでます。