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スタートアップ・ベンチャー揃えておきたい三種の人事制度

直近で少なくとも自分の周りの界隈で課題として上がることが多く、一度自分も今までの事を振り返るいい機会なので、人事制度という部分にフォーカスして、大企業からスタートアップに在籍し、感じた事を書きたいなと思います。

結論から入りますが、制度が良くても「運用」出来なければただの紙(データ)です。
ロジカルで、非の打ち所がない制度でも、それを実際に使用するのはメンバーであり、管理者であり、自分です。
制度ドリブンではなく、あくまでも組織や事業が成長するかという点を忘れないようにしたいですね。

今回の対象となる企業

・スタートアップ・ベンチャーで人事制度がまだない企業
・あるけど一般的な(オーソドックス)制度を知りたい企業
・人事制度について基本を学びたい人事(管理部)

を対象として記載します。ので、玄人な方、もっと突っ込んだ話が聞きたい!という方はすっと閉じてください。
そして、作り方まで突っ込んでしまうととんでもないボリュームになりますので、別記事にて作成します。
あくまでも「なんでこの3つなの?」「必要なの?」というところにターゲティングを絞ります。

人事制度の定義

まず人事制度は広義にも狭義にも使っている用語です。

【ヨミ】ジンジセイド 人事制度
人事制度とは、広義には労務管理を含めた従業員の「処遇」に関するしくみ全般(人事上のさまざまな施策の集合体)を指します。近年では、従業員の処遇を決定する基本的な枠組みである「等級制度」「評価制度」「報酬制度」に絞り込んで、「人事制度」ということが多くなっています。
【引用】日本の人事部

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今回はこちらの狭義の意味である、「等級制度」、「評価制度」、「報酬制度」を人事制度として定義します。

ただし、人事制度はどれも密接に関わっているので、この3つだけ抑えれば問題ないですが、全体像として位置づけや今後のを踏まえると他の項目との整合性を取っていくという事も必要ですが、今回はまずは基本を押さえたいと思います。(下記図参考です)

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1.等級制度

【ヨミ】トウキュウセイド 等級制度
「等級制度」とは、従業員をその能力・職務・役割などによって区分・序列化し、業務を遂行する際の権限や責任、さらには処遇などの根拠となる制度です。また、その組織がどのような人材を必要としているのかというモデルにもなります。いわば人事制度の骨組みともいえるでしょう。

ほとんどの企業が何らかの等級制度を導入しています。
年功序列、成果主義、外資のUp or Out、グレード・・・・
色々な呼び方がありますが実は大きく3つの類型を抑えれば、他は派生しているというイメージになります。

まず、なぜ等級制度が必要なのか?
この疑問については、大きく以下にまとめることが出来ます。

会社:
・期待(役割、能力、職務・・・)を明示出来る
・期待に応じた評価や報酬との設計が出来る
・管理職との違いなど、労務的な観点をクリアーに出来る
従業員:
・キャリアイメージが出来る
・自身もしくは他の人に求められる期待が分かる

評価・報酬とも関わってくるので、等級制度だけで有用性を立証するのは難しいのですが、少しラフにかみ砕くとこう感じています。

自分が何を会社に期待されているかが分かり、チーム連携する際に他の人がどんな期待がされているか分かるので、コミュニケーションがとりやすい。そして、自分自身が如何に会社内で役割を上げれるかが明示されているので、期待値合わせがとりやすい。

悪い見え方をされてしまうと、社内の序列分け、そのカテゴリの中でしか仕事しなくてよいという負の側面ももちろんあります。それを押し切ってまで導入する理由はもちろんあります。

少し前のデータですが、人事評価制度のアンケートの結果が公表されています。

〈調査内容サマリー〉
1.6割以上が、勤務先の人事評価制度に不満をもち、その理由は「評価基準が不明確」が最多
2.約8割が、勤務先の人事評価制度の見直しが必要と考えている
3.評価者(上司)の約8割が、自分の評価は適切と自負している
4.自身の評価行為に自信がない評価者(上司)の半数が、「数値化しにくい業務」に難しさを感じている
【引用】アデコ

その際に不満に感じている理由です。

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人事評価制度への不満の理由は、「評価基準が不明確」がもっとも多く(62.8%)、それ以外の項目を大きく上回っている。
次いで「評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる」(45.2%)、「評価結果のフィードバック、説明が不十分、もしくはそれらの仕組みがない」(28.1%)となった。

つまり、人事評価に対して「不透明・不明確」が一番の原因になっています。
制度の不透明さ、評価の不明確さの根本としては、評価制度に紐づく等級制度がしっかり整備されていない可能性が多いです。
人事制度の透明性や明確さ・公平性の一つを担うのが、「等級制度」であり、基本的には設定しておきたいです。
注意点としては、スタートアップは環境変化が大きいのでがちがちにすると運用に柔軟さが無くなってしまうので、ある程度のざっくり感があると良いです。

2.評価制度

一定期間の従業員の行動や成果を評価する仕組みを定めた制度です。
何を評価するか(評価項目)、どう評価するか(評価基準)を明示することで、従業員の成果を出すための方向が間違えないように目印(旗)を立てる役割でもあります。
評価の結果は等級や報酬に反映され、一般的には等級が変わることで評価の項目や基準も変化します。

評価制度については、本当に多種多様な議論がなされていて、
「評価するなんて出来ない」
「評価イケテナイ」
「上司の機嫌取りじゃないのか!」
「相対評価なんだから、評価通り(等級や報酬が)にならない」
etc.....

今までの経験で一番課題になるのも、問題になるのもやはり評価というものについてが多かったです。
ただ、一人ひとりの顔が見えない大企業の評価運営とスタートアップの評価運営は全く違うものの、考えの根本は全く同じという事というのに気づきました。

「評価は結果ではなく、その結果に至った説明のが大事」

当たり前だろとか色々聞こえてきそうですが、考えてみてください。
自分が評価に対して、どのような感情や感想を持っているか。
評価は当然良い方が良いです。
ただ、先ほどのデータで申し上げましたが、「不明確・不公平」が最大の評価に対する不満要素です。
この「不明確・不公平」の反対語は「明確・公平」です。
つまり、明確・公平化され何を求めているのかというと「納得感」です。

では、納得感とは何か?

仕事ではないですが非常に興味深い研究があります。(下記図を参照)

成果=「満足感」(アウトプット)
行動=「納得感」(インプット)

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引用:納得感とは何か

少し強引な解釈してますが、「納得感」とは、成果ではなく、仕事で日々学んだことやフィードバックを受けたことを自身にインプットし、考える際に生じる感覚との事です。

こうも考えられるのではないでしょうか?
評価の際に「納得感」が無いのは、評価結果に対してというよりは、その結果に至った行動(プロセス)に対してについて「納得感」が無いと感じるのでは?
評価の時には、結果とプロセスを分けて語られるべきですが、どうしても評価結果のインパクトが強く、評価結果に対してなのか、その結果に至ったプロセス(理由)がうまく切離せてないなと感じています。

評価結果が良い場合は、満足感に繋がり、良い評価の時はプロセスに対しても納得感が高いため、評価の「納得感」も高い。
※一方で良い評価を受け続けている人のエンゲージメントが低い時も往々にしてあり、このパターンが満足と納得が違うために起きていると予想しています。

「納得感」を高めるためには、なぜその評価なのかをしっかりと被評価者に対して、フィードバックをする(行動や考えについて)という事が大事です。
※リアルタイムフィードバックとかは正にいい事例です。

まとめますと、評価制度を入れるべき理由として、評価をすることと、その評価に至った理由が説明をするという仕組みが導入出来る事。
この2点において従業員の満足感と納得感に対して相当な因果関係があるため、明確かつ公平な評価制度はやはり入れておくべきと思います。

こちらも等級制度と同じくがちがちにしてしまうと運用に柔軟さが無くなるので、半期に1回は見直すつもりで入れるべきです。

3.報酬制度

給与や賞与といった報酬の仕組みです。一般的に給与は、上記、等級制度に定められた一定のレンジ(上限と下限)が定められており、評価によってレンジ内での昇給や賞与などが決まるシステムになっています。また、退職金制度や福利厚生などもこの報酬制度の一部に含めて考えられます。

つまり、等級制度でレンジを決めて、評価制度にて評価が決められ、報酬が決まる。
このような仕組みになっているため、3つの制度が必要ということになります。

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引用:経理COMPASS

報酬制度で大事な事が、評価制度をどのようにどこまで反映させるのかです。スタートアップではSOもあるので、SOを含めたトータルでの報酬制度を設計し、大企業にも負けない年収が条件が整っているようになりました。

一般的には、

ベースアップ(通称ベア):賃金テーブルの改定
昇給(通称給与改定):評価を反映した金額の上下

があり、スタートアップは給与改定が多いです。
(給与テーブルを用意している会社はスタートアップに少なく、レンジも広いこと、成果評価に近く、年功的要素がないため、ベアがしにくい等)

報酬制度の肝は、何を給与とし、手当とし、SO、賞与とするかの配分です。
配分内容が会社の考え方を表しているとも言えます。

例えば、外資は年俸制で賞与、手当はなく、給与だけです。成果によって、激増・激減があります。
日系大手は、年功要素が強いため、給与+手当+賞与で構成されており、勤続を重ねれば上がっていきます。
スタートアップでも多いのが、給与に固定残業手当がセットになり、毎月ある程度の残業時間を見込んだ給与体系です。
(残業時間を除く額面で勝負が出来ないという側面もありますし、実際に労働時間が多いという場合もあります)

報酬制度は本当に色々ありますが、1番は「明確かつ公平で納得感が高い」報酬制度を設定する事が大事です。

成果重視とした評価制度なのに、昇給幅が少ない。
評価制度の何が報酬制度に反映されているか分からない。
瞬間の成果に対しての報酬制度への反映がない。

等、等級制度や評価制度との整合性が一番如実に出るのも報酬制度です。

そのため、等級制度と評価制度とのバランスを考えどのような配分にするかが大事であり、かつ、一番の注意点として労務リスクが非常に高い項目でもあります。
安易な設定や法律を遵守しない給与体系、手当がまだまだ散見され、未払い賃金等に発展している重要な分野でもあります。

ここが整備されているかいないかで、IPOの労務リスクは左右されますので、報酬制度の整備は必須と言えます。

良くある話で、コロナ過で「リモートワーク手当」の支給が目立ちましたが給与規定に反映している会社様の少なさ・・・。
給与の項目をいきなり増やす減らすは出来ないので、本当に要注意です。

参考までに、「リモートワーク手当」を出すにはここまで検証する必要があるぞ!

まとめ

なぜ必要なのかだけをまとめるのに物凄い文字数になりました・・。
本当は作成方法Tipsも入れ込みたかったですが膨大になりますので、今回は一般的に言われる三種の人事制度の必要性に絞りました。
本記事を見て頂いた企業もしくは人が人事制度について考えれるきっかけになれば幸いです。

さいごに・・・

こんな活動してます。上記のような話の続きを!ということであればいつでもご連絡ください。


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