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スラスラと最後まで読める“わかりやすい”文章を書くための10の視点

ビジネスシーンでも日常でも、文章を書く機会は生きているとたくさんあります。そして誰でも発信できる昨今なので、「文章力」を上げたいと思っている人も増えています。

私が書く文章はよく「わかりやすい」と言っていただけます。感動したとか笑えたとかはあまり言われないのですが、わかりやすさには少し自信があります。

わかりやすい文章とは、読んでいる途中で引っかかるところがなく、気づいたら最後まで集中して読めてしまう文章。「長文なのにスラスラ読めた」と言ってもらえることも多いです(最高の褒め言葉)。書き手と読み手の頭がシームレスにシンクロした状態で最後までいけたとき、読み手は「わかりやすい」と感じます。

こういう「わかりやすい文章」は、ポイントさえ押さえれば誰でも書けるようになります。しかし世の文章力のノウハウは、文法の正しい用法を解説するものばかり。小学校の国語からやり直せばいいの?と思ってしまいますね。

文法知識が必要なのはたしかですが、もっと手前のことで文章力は上がります。私はプレスリリースも、イベントレポートも、インタビュー記事も、コラム的なものも、お店や商品のレビューブログも幅広く書くのですが、このシンクロさせる技術さえあればどんな文章も離脱せずに読んでもらえるので便利です。

主にnoteなどでWeb記事を書くことを想定して、書くときの思考ステップになんとなく沿いながら、気にするといい10の視点をまとめてみました。


ビジネスにおいては“わかりやすい”文章が一番

はじめに、「わかりやすい文章」をもう少し定義したいと思います。

文章力がある、文章が上手い、といった評価がありますが、文章には日記からエッセイ、メディアの記事、論文や批評まで、ありとあらゆるタイプがあります。ひとくちに文章力といっても求められる能力は全然違い、スポーツでいう野球と棒高跳びとアイススケートエキシビションくらいの違いがあります(例えがいいのかは置いといて)。

ただ多くの人が上達させたいのは、ビジネスで使う文章ではないかと思います。ビジネスで使うのは「何かを伝えるための文章」です。noteで書く記事なども、究極的にはそこが目的。何かを伝えたければ、捻った表現や気の利いた描写は必要なく、シンプルで万人に理解してもらえることが大事です。

だからわかりやすい文章とは、簡単な言葉ばかり使っていることが多いです。ある程度の語彙力は必要だけど、小難しい言葉は使わなくていいし、むしろ中学生でも読めるくらいのほうが“わかりやすい”文章といえます。

そういう文章には目に見えない気遣いというか、表面の文字づらだけを見て分析しても気づけない、もっと奥の段階での工夫があります。解説するのでぜひビジネスに役立ててみてください。

1. 読みやすさの8割は文章構成にかかっている

わかりやすい、読みやすい文章の秘訣は「文章力」にあると思ってしまいがちですが、実はそれよりも「構成力」のほうが大切です。構成というのは、全体の話の流れのこと。もっと大きな枠組みのことです。

どんな記事や文章を書くときも、私は書きだす前にまず見出しだけを羅列するようにしています。この「見出しの羅列」と同時に、それぞれの見出しの中身も箇条書きで出していく。この作業にかなり時間をかけています。

構成ができたら、記事はもう半分は完成したようなものです。それくらいの気持ちで構成に向き合うことが一番のポイント。

2. 見出しをツマミ読みしても流れがつかめるように

構成力が大事と言いましたが、それと同時に見出しのワーディング(言葉選び)がかなり読みやすさを左右します。

見出しだけツマミ読みしたとしても、この記事には何が書いてあるのかがわかる見出しがベスト。本文を読まなくても見出しをホッピングしていけば大枠がつかめる、というのが良い文章といわれるものの特徴です。

見出しの言葉は、誰もが意味を理解できるものでありながら、キャッチーで目を引く言葉である必要があります。ここは少し語彙力とテクニックが必要かも。見出しを考えるだけで1日が終わりそうなくらい考えましょう。

3. 何について書くのか、全体像をリード文で示す

ようやく執筆に入れる……!と思ったら、最初に「リード文」がありますよね。タイトルのすぐ下にくる、本題に入る前置きのところです。

私はここに総執筆時間の3割ほどを費やしているかもしれません。リード文はかなり大事で、冒頭で「面白そう」と直感的に思い読み進めたくならなかったら、即離脱だからです。

リード文には、この記事は誰に向けた記事で、どんなことが書いてあり、読むと何が得られるのかという全体像を示します。5W1Hで。掴めたら、あとはこっちのもの。

4. 知識ゼロの読み手になりきり「?」を徹底排除

ようやく本文のライティングに入っていくとき、書きながら常に想像し続けるのは「読み手の気持ち」です。気持ちというか、誰かひとり読んでほしい実在の人物を想像して、頭も心も含めてその人になりきって読み返してみる。

文章のテーマとターゲットがどんなものだったとしても、必ず共通していることがあります。それは、①読み手はその事柄についてある程度の前提知識を持っている、ということと、②その知識量は人それぞれ異なる、ということです。

読み進めて「なんだ?よくわからないぞ?」となったときが、一番の離脱ポイント。皆さんも経験があると思います。一度つまづいたらイエローカード、三度つまづいたらレッドカードで退場(離脱)です。

読み手の知識量を想像して、ギャップを埋めてあげるパートを文章内のところどころで設けます。つまり“解説を挟む”のですが、「さてここから解説です!」といかにもな感じにならないように文章内で自然に補足してあげたり、インタビュー記事であれば会話の中に織り交ぜるのがポイント。読者がつまづかないように、先回りして道を整備しておいてあげる感じです。

5. 専門用語や業界内スラングを使わない

私がPRやプレスリリース出身なので、これは一番気をつけているところ。

専門用語というと「ヘモグロビンA1c」とか「電磁的記録式投票特例法」みたいなものを想像するかもしれませんが、意外と専門用語というのは日常の中に潜んでいます。そして、それが専門用語・業界特有の表現であると気づかずに使っていることのほうが圧倒的に多いのです。

専門用語でなくても、業界内で当たり前のように使われている言葉というのがあります。広告業界やスタートアップ界隈ではカタカナ用語を使いがちだし、誰にでも通じると思った言葉が若者言葉やスラングであるかもしれない。

「普通にみんなわかると思って使っているけど意外と認知度の低い言葉」というのは実は多いです。それが出てくると読者はつまづいてしまい、何度かつまづくと離脱となります。

それって小学生でもおじいちゃんでも知ってる言葉?と、ひとつずつ問い続けましょう。

6. 文章全体を目で見たときの濃淡を気にする

ちょっと意外なポイントかもしれませんが、書いた文章を目で見たときの「濃淡」を気にしています。日本語って、世界中で唯一「濃淡のある言語」といわれているんですよ。

濃淡とはつまり、漢字・ひらがな・カタカナ・数字などのバランスのことです。「濃」という字は濃いけど、「ひ」という字は淡いですよね。この視覚的なバランス。

漢字だらけの文章だと読む気をなくすのはなんとなくわかると思うのですが、文章全体から放たれるオーラって、読みやすさにけっこう影響を与えるんです。ひらがなから受け取るやわらかさ、カタカナから受け取るスタイリッシュな雰囲気など、文字の種類によって受け取るイメージが異なるのが日本語です。

この濃淡のバランスをいい感じにデザインしてあげて、素敵なバランスの濃度になっている文章を、人は「読みやすい」と感じ読了率が上がります。漢字が続きすぎていたら「道具」を「ツール」にしてみるとか、日本語をカタカナで言い換えてもさほど意味が変わらない部分は、前後のバランスを見て調整してあげます。

7. 文章を音にしたときのリズムを意識する

またまた感覚的な話が続きますが、音楽的な「リズム」も気にしています。

5・7・5・7・7のように、日本語にはリズムのいい音数というのが存在します。これが5・8・5・9・7とかになってしまうと、絶妙なずれなのだけど、音にしたときになーんか気持ちわるく感じる。長い文章でも同じことが起こります。

文章を書くときに、自分が書いたものを脳内再生してみてください。実際に声に出してみるのもいいです。音として再生してみてリズムがよくないなと感じたら、それは読んでいても引っかかってしまう箇所になりがちです。

このリズムは感覚的なことなので、音楽センスに自信がない人にとっては残念ながらハンデになってしまうかもしれません。ただ、リズムのいい文章をたくさん読み聞きすることで鍛えられるので、プロが書いた書籍を音読したりオーディオブックを流しまくったりしてみるといいかもしれません。

8. キャッチーな言い回しや比喩、口語や感情を挟む

このあたりでようやく、一般的に「文章力」といわれるときに人が想像する力が出てきます。

いくら構成がよく見出しもいい感じで平易な言葉で濃淡やリズムもよくても、それだけだと飽きてしまいます。文章表現に幅をもたせて緩急をつけることで、最後までスラスラ読み進めてもらうことができます。

先ほどのリズムの話が一文一文のことだとしたら、ここでいう表現力は記事まるごと全体のリズムを左右します。喩えやエピソードを挟んでみたり、たまに話し言葉や個人的な感情を混ぜ込んでみたり。読者が「ハッとして集中し直す」部分を意識的につくる、という感じ。

これに関しては幼少期からの読書量や、そもそも人生経験の豊富さ(ネタをもっているか)、ベースとなる語彙量が影響するので、むずかしいところ。要は「うまい表現をしろ」ってことなので。私もまだまだ他人の文章に嫉妬することが多いです。

ただし、7までのポイントで十分わかりやすい文章は書けるので、これはさらに読者を掴んで離さないための応用ポイントくらいに思ってもらえれば大丈夫です。

9. オーソドックスに文法を守り、正しい日本語で

当たり前のことすぎて終盤になってしまいました。普通に日本語としての完成度が高いことは「わかりやすい」「読みやすい」の必須条件となります。

日本語の正しい文法を守り、 “てにをは”がおかしかったりしないこと。一文が長すぎたりもせず、適切な位置に句読点が入っていること。主語と述語と目的語など、正しく言葉が並んでいること。

「文章力」などと検索すると出てくるブログ記事には、だいたいこういうことが書いてあります。まずはここができていないとだめなので、手っ取り早く改善するには文法を見直すのが一番。ここはひねりを利かせる必要はなく、オーソドックスでOKです。

10. マクロ(鳥の目)とミクロ(虫の目)で全体を見る

最後に、だいたい書けてからのブラッシュアップの部分です。人によってやりやすい方法があるかもしれませんが、私はざっくり書き上げてからの最後の見直しにもかなり時間をかけます。

ポイントはマクロ(鳥の目)とミクロ(虫の目)を交互に行き来しながら、両方の視点で全体を見ること。これは「編集者」の視点と「ライター」の視点とも言い換えられます。全体の構成や流れがわかりやすいかどうかを意識しつつ、隅々の細かい文章表現がもっとよくできないか、よりわかりやすい表現や言い換えはないかと探っていきます。

要はプロフェッショナルな記事作成の現場と同じことをやれ、という意味なのですが、自分ひとりで書く場合は編集者もライターも校正さんも兼ねなければいけないので、オールスタッフを一人芝居でみんな登場させましょうということです(忙しい)。

これができれば、完成です。微調整に時間をかけすぎてなかなか公開できないのが私の悪い癖なので、この記事もそろそろ公開しようと思います!

おわりです。よく褒めてもらえる“わかりやすい”は、分解するとこのようになっていました。

「スラスラ最後まで読めました!」という感想は一番の褒め言葉でモチベーションが上がるので、何度でも言ってあげると社会貢献に繋がります。

参考になったらどんどんシェアしていただけると嬉しいです。ありがとうございました。


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