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春スキーの打ち出し方が惜しいから突破口を考えてみる

季節もあっという間に移ろい、「春スキー」に関する発信を見かけるようになりました。

「春スキー」とは文字通り春にやるスキーのことで、具体的には3月下旬〜GW頃の季節にできるスキー・スノーボードのことを指しています。

あまりスノースポーツを嗜まない人にはなじみがないかもしれませんが、春スキーはただ単に「雪があるうちはまだまだ諦めないぞ!」ということではなく、ある日を境にリフト券などの料金が値下がったり、春ならではのアクティビティやプランが出てきたりと、また違う楽しみ方を各スキー場が打ち出してきます。業界的には「春スキー」と銘打って新しいシーズンに突入するようなものなのです。

冬よりはお客さんも少なくのびのび滑れたり、装備も軽くて済むので行きやすかったり。雪はシャバシャバだったりしますが、引き換えにメリットもたくさんあります(あとで詳しく)。

ただ、最近ちらほらと出てきた各リゾートのPRの仕方を見ていると、ちょっともったいない……というか「春スキー」は“伝え方”ひとつで大きく化けるポテンシャルがあるのでは?と思ったりします。

題材を「春スキー」としながらもPRやマーケティングの話なので、幅広く読んでいただけたらと思います。

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春にスキー・スノボなんて、本当に好きな人たちがやることでしょ?

前段でも少し触れたように、春のスキー・スノーボードの一般認知はこんな感じだと思います。

「新しく雪が降らなくても、残雪をギリギリまで楽しみたい。そんなコアなファンたちがGWくらいまで諦め悪く楽しむもの」

……というのは言いすぎかもしれませんが、ほとんどのレジャー客は3月末でスキー・スノーボードのことは頭からすっかり消えてしまいます。年に何度かスノボに行くという先日話した友人は、「え?まだスキー場ってやってるの?」と言っていました。

よく、スキー・スノーボードファンにとってのウィンターシーズンは「10月下旬〜GW」だけど、一般レジャー層にとってのウィンターシーズンは「1〜3月」の3ヶ月間だけ、なんて言われたりしますね。

もちろん春休みやGWを利用してスキー場に行く子連れファミリーなどもいると思いますが、総数は減ってきます。「春スキー」はどうしても“冬のおまけ”みたいなイメージがついています。

だからこそ、意識変容を起こして「熱烈なウィンタースポーツファンではない人たちにこそ春スキーがぴったり」といったイメージをもってもらえると、冬以上に集客するポテンシャルに満ちているはず。

そのために「情報開発」や「見せ方」の力が助けになる部分も大きいと思います。

「春スキー」の価値を再発見してもらうには

・新規性
・時事性(季節性)
・社会性

2021年に「春スキー」を打ち出していくにあたっては、PRに大切といわれることのなかでも、この3つが特に効きやすい要素です。

新規性】
今シーズンはコロナもあって、例年以上に価格を下げたプランや、お買い得なパッケージが出ているようです。これから出そうとしているプランがあるなら、「なにがどういう点で新しいのか」を具体的に示すだけでも変化が期待できます。これから新しく企画ができるなら、チャレンジは応援される空気です。

【時事性(季節性)】
「春スキー」という言葉を押し出すだけでもインパクトがあります。幸いなことに、首都圏の緊急事態宣言解除と春スキーのシーズンインが見事に重なっているのが今年です。PR的には「なぜ今なのか?」がとても重要なので、春にスキー場を訪れることの価値を再発見してもらえるようなコピーやワーディングは効果を発揮します。

ちなみに、SEO的にも「春スキー」「春 スキー」というキーワードはけっこう空いています。リスティング広告を打っているリゾートもありますが、ニュースに加えて記事コンテンツ的なものを出すだけでも、上位表示はそこまで難しくないと思います。今年はもうSEOは間に合いませんが、SNSで需要がある情報にも共通性があります。

【社会性】
時事性とも重なってくる要素ですが、特に首都圏の人は「外出できない冬」が続いていたため、春スキーというレジャーコンテンツに社会的意義を付与できる機運が高まっています。GoToトラベルも遠い記憶となり、旅行不足・運動不足も深刻なことでしょう。スキー場側としても、そこそこ集客はできたとはいえ、外国人観光客もいない中で厳しいシーズンを強いられ、経営的にもダメージが大きかったことと思います。

こうした両者のフラストレーション、改め、わりと深刻な社会課題を解消してくれるものとして、「春スキー」がうまい具合に位置づけられる土壌ができあがっています。もはや社会情勢が味方しまくっているので、この文脈に乗せていかない手はないですね。


これらの3つの要素が盛り込まれたニュースは、ソーシャルメディアでの反応が得やすいだけでなく、テレビなどマスメディアでも取り上げられることが想像できます。

「約3ヶ月ぶりに緊急事態宣言が解除された春、首都圏の人がどう動くか?」は各局も注目しているところ。タイムリーな話でいうと、お花見報道なんかも増えてきています。宣言が明けてスキー場に来るお客さんが増えています!となれば取材の可能性もあります。

お客さんコメントとして、

「冬は結局どこにも行けなかったので、来ちゃいました」
「ずっと家にいて運動不足で〜。初めて春にスキーをしましたが、寒くないしアリですね」
「子どもたちも遊びに行きたくてうずうずしてたみたいで。いろんなアクティビティがあって驚きました!」
「大学の授業はオンラインで、コロナでバイトも減っちゃったので。料金が冬より安くて助かります」

みたいなものが取れる画がイメージできます。ちなみに、実際には春スキーのお客さんがそんなに増えていなかったり、シーズンインしたばかりだったとしても、そのあたりは見せ方でいかようにもできるのでご安心を。

去年までは年に数回スキーに行っていたけど、今シーズンは一度も行かなかったな……。という人たちにも「あれ、春からシーズンインっていうのも、今年は意外とありだったりして?」と思わせられるかもしれません。

そこに「実利」と「導線」があれば人は動かせる

そうして少し注目してもらえたところに、「実利」をしっかり示し、「導線」を敷いて案内すると人を動かすことができます。

「実利」とは、実際に春スキーのメリットとして何があるのか。上のお客さんコメントでも触れましたが、こうした実際の行動心理に影響する要素は、プレスリリースなどに盛り込んでもいいと思います。

・価格が安くなる
・服の装備が軽くてすむ
・寒くないから辛さがない
・冬よりは少し感染リスクも低そう
・滑る以外の楽しみ方も増えてくる
・雪が降らないから移動もラクラク
・なんならノーマルタイヤで行けちゃう

このあたりが「実利」です。きちんと伝われば、腰が重かったレジャー層にも、キャンプ感覚で行ってもよさそうだと思ってもらえます。

そして、行きたいと思った人がアクションできるよう、プランやら申込みやらの「導線」を敷いてあげることです。「スキーもいいなー行きたいかもなー」くらいの心の動きだと、なかなか能動的な情報収集まではいきません。意外と行く方法がわからない人も多いので、自分たちの常識を常識と思わずに、丁寧すぎるくらい導線を敷くほうがいいと思います。

お得なプランです!と金額を示すだけでは、ふーんで終わってしまいます。

今年は「災害級の大雪」「雪崩に巻き込まれ」「コース外での遭難」など物騒なニュースも多かったので、実は一般生活者のスノーレジャーへの心理的ハードルが例年以上に上がっています。「怖い」というイメージが先行している若い人などに、大雪の危険がない春スキーを入り口にしてもらうと、カスタマージャーニー的にも良い画が描けそうですよね。

業界の未来のためには、既存ファンだけをターゲットにせず、裾野を広げていくことが必須です。もちろん、感染対策は万全に、安全と健康には十分お気をつけて!

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新たな価値を見出し、それを伝える言葉とクリエイティブに少し力をかけることで、これまであったものが急に輝いて見えたりするよ、というお話でした。

言うのは簡単でもやるのが難しいんだよ、という感じだと思うのですが、プレスリリースの書き方やWebサイトの見せ方などを工夫するのは予算がなくてもすぐにできることなので、おすすめです。

ちなみに、「まだまだ滑れる!」「まだ間に合う!」などのコピーが散見されるのですが、これは行動心理学的には「数が限られるものや入手困難なもの」を売るときのセールスライティングに使うと効果がある文言です。溶けないかぎり誰でも享受できる「雪」という商材においては、逆に「今って遅いのか」と思わせてしまい逆効果なことがあるので気をつけましょう。

自然資源である雪をめいっぱい活用させていただき、明るく楽しいグリーンシーズンへとつなげていけるといいですね。

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