「なかなか休みが取れない」人生なんて
また、航空券を取った。
ようやく近場のアジア圏から脱し、今後は中南米カリブ海へ。このまえ「もうしばらく行けないだろうな」と慌ててシンガポールに行ったばかりなのに、2ヶ月経たずに次の行き先が決まってしまうなんて。
私にとって、旅はライフワークみたいなもの。18歳くらいから、最低でも半年に1回は海外に行く生活を続けている。
最初は、アジアから。次に南国に行って、聖地インドに行って、またアジアを周って、ヨーロッパへ。それから北米に住んで、またアジアやヨーロッパを転々と。
いつも短いし、たいして何もせずふらふらしているだけだし、変な国にはまだ行っていないのだけど。
定期的にどこかに行かないと、生活が淀んできてしまう。だからもう、航空券を取ることは、自分を生かしておくための薬を買うような感覚に近い。
実は、こういうライフスタイルはずいぶん小さい頃から決めていた。小学校で必ず書かされる「将来の夢」には、「海外にいっぱい行く」と書いていたくらいだ。
逆に言えば、とくに夢、つまりなりたい職業はなかった。私を育てるためにキャリアを諦めた母の影響か、ぼんやりと将来はバリバリ働くオフィスワーカーになるんだろうと思っていたからだ。本気で「サッカー選手」とか「歌手」とか書いているクラスメイトが、なんだかうらやましかった。
そんな私にとってのリアルな夢は、ふつうにやりたい仕事をしながら、いつでも気の向くままに好きな場所に行ける生活。なんだか最近流行りのノマドワーカーみたいで癪だけど、小学生から考えていたことなので大目に見てほしい。
だけど現実は甘くない。最初に入った会社はわりと激務で、年に1回どこかに行ければいいほうだった。世の連休とくっつけて取れる4日程度の休みでは、どこかに行く気にもなれず、だんだんストレスが溜まっていった。
だからフリーランスになって、それからちょっと変わった会社に入った。まだ何も成し遂げていないのに「いいよいいよ、好きなだけ休みな!休まないとダメだよ!」なんて言ってくれるので、お言葉に甘えさせていただきます。というわけで、また効果抜群の薬をゲットした。
この国では、みんな口を揃えて「休みが取れない」と言う。
私も前の仕事では、よく「なかなか休み取れなくて……」と誘いを断ったりしていた。認めたくないけど、忙しい。なんで私にばっかりこんなに仕事が降ってくるんだ。代わりにやってくれる人もいないし。あああああ。
そんなふうになっていたとき、同僚が言っていた「あの人は休みを取るのがうまい」という言葉が引っかかった。毎年必ず丸1週間くらい休んで、海外旅行をしている先輩。しかもその間、一切連絡が取れないらしい。いつも入念に根回しして、休み中に何も発生しないよう完璧にコントロールしていた。
そうか、日本社会では、休むのにもスキルがいるんだな。
それに気づいて以来、うまく休むことを意識しはじめた。自分がいない間に何も起きないようすべて片付け、発生してしまった場合の対応方法をマニュアル化しておく。そういうスキルも磨いてはじめて、仕事ができる人なのかもしれないなーと思ったから。
とはいえ海外ナイズドな働き方も見てきた経験から、「休む」だけでそんなややこしいのは日本くらいということも知っている。
彼らは逆に全然根回しも準備もしないで、いきなり休む。もちろん仕事は回らなくなるし、いろんなことがスタックしてしまうのだけど、みんながそれを許容する空気がある。返信が遅れたくらいでカリカリする人はひとりもいない。
本来は、365日毎日休みのはずじゃない?誰のものでもない、自分の“毎日”。いつ休んでいつ働くかなんて、自分で決めればいい。
そんな価値観が浸透するためにも、もっとみんな海外に出たほうがいいよ、たぶん。
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