父が人生で本当に投げたかったもの
わたしの父親は怒り狂うと何でも投げた。何度か引っ越したそれぞれの家での荒れ果てた部屋の場面を今でも覚えている。
ちょっとイメージがわかないという方、大地震で部屋の家具、家電とか全部ひっくり返るイメージでしょうか。机や椅子の脚が折れて食器がすべて割れて足の踏み場がないのです。
大地震のエネルギーもすごいけど、あの父親の破壊力、これを人のチカラでやってしまうとは、父親のなかの癒されていない感情のエネルギーもすごいものだった。
その日は外で事故でも起きたのかと思うほどの大きな音が聞こえてきた。それは投げたらアカンやつ。お仏壇をまるごと2階の窓から庭に投げ落としたのです。
人間あまりの驚きと恐怖のときは声も涙も出ないのかも。母親と庭に出てバラバラになった仏壇やら飛び散った位牌をただただ無言で片付けました。
投げたらアカン投げたらアカン、人生投げずにコレ投げて。
父親にはできれば他のモノを投げてほしかった。愛とか匙とか砲丸とか。
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