【ぶんぶくちゃいな】「インターネット安全法」施行日に個人情報争奪戦勃発

「【ぶんぶくちゃいな】『安全』という名の『規制』 インターネット安全法成立」で触れた「インターネット安全法」が6月1日から施行された。その前日の5月31日から西洋メディアでは、同法施行を前にした外国企業の不安の声が伝えられた。

一方、日本メディアはというと、わたしがいつも目を通しているニュースサイトにもこの話題が上がってこなかったので、インターネットで検索したところ、各新聞社もそれなりに触れてはいる。しかし、ビジネスシーン全体の注目度は薄く、わたしも各紙の紙面を広げて見ていないので断言はできないものの、記事の長さからして、新聞社の一押し記事には位置づけられていなかったのだろう。

「中国で起きているインターネット規制の報道を、日本の大メディアが一押し記事にする必要がありますか?」きっと、こんな質問が出てくるだろう。それが「たかが中国(外国)のニュース」という意識ではなかったとしても、「どうせ中国だし」という思った人もいるかもしれない。

でも、違う。「インターネットを規制している中国だもん、なにを今さら」と他人事だと思うのは大変な間違いなのだ。

見たところ日本のメディアで最も文字数多く「インターネット安全法」を報道しているのは日経新聞のようなので、その記事を参照していただきたい。

中国、ビッグデータ統制 持ち出し規制の新法施行

これを読めばわかるが、この「インターネット安全法」では中国に進出した外国企業も対象にされ、そうした企業が営業活動を通じて中国国内で手に入れたデータはすべて、中国国内に置かれたサーバーに保存しなければならないと規定しているのである。

「サーバーが中国国内に置かれている」ということはつまり、そのサーバーは中国の法律で管理されることになる。そしてそのサーバー管理についても同法では当局による開示請求には応じることを義務付けており、つまりそれによって企業の情報データはすべてご開陳される手はずになっている(こう考えると、中国国内にサーバーを置かなかったことにより、中国市場から締め出されたグーグルは先見の明があったといえる)。

そして、この「インターネット安全法」は昨年11月にこの施行が決まったわけだが、その内容にぎょっとした外国企業がデータを持ち出そうにも「関連政府機関の認可」が必要で、その認可の過程において情報を開示する必要があるとされる。

中国メディアも含めたメディアのほとんどが、「持ち出せない」と判断している。もちろん、高いコストとエネルギーをかければ持ち出せるかもしれないが、中国で営業したい企業がそこまでして中国政府が定めた法律を回避しようとすれば、その後の営業活動に支障をきたすのは見えている。

手にしたデータの機密性を重視する企業にとっては後にも先にも引けない状態であり、同時にその企業に機密を預けている取引先にとってもにっちもさっちもいかない状態となってしまった。さらにうまく事前にデータを国外に持ち出せた企業にとっても、今後は海外と中国を2つの世界に切り分けて相互乗り入れせずにデータ運用をしていかなければならない。そこに多大なコストがかかる点も、中国企業のように中国国内だけで活動する会社ならともかく、多国籍企業にとってはネガティブポイントだろう。

当然のことながら、中国に進出している日本企業も同様の問題に直面する。確か、ひところ大連あたりに「安いから」とデータを大量に移した日本企業があったはずだ。彼らは今頃どうしていることやら。

その一方で、日経新聞の別の記事では、中国で営業活動をしている日本企業の9割が「ネット安全法の内容を知らない」と答えたと伝えており、あまりの危機感のなさに呆れるしかない。

●国内で強調されるのは「安全管理」

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