【ぶんぶくちゃいな】若者たちの春節今昔物語

今週の中華圏は旧暦正月(春節)ウィーク。いつものように、ニュースメディアからは活きの良い情報は枯渇し、新年用に書き溜めておいたらしい記事が並ぶ。とはいえ、今年は春節初日に「国内No.2メーカー製の血液製剤からエイズ陽性検出」というニュースが流れて大騒ぎになり、国家機関もその騒ぎに慌てたように声明を出すなどの動きはあったけれど。

中国人観光客が日本に大量に流れ込むようになって、初めて日本人一般でも認識するようになった「春節」あるいは「旧暦正月」。実際はまだまだ多くの中国人にとっては、「ふるさとで家族揃って過ごす祭日」である。

だが、「里帰り」「ふるさと」と言っても、日本のお正月やお盆とはこれまた違う。核家族化が定着して久しい日本では「家族」は親子を一単位、あるいは親のまたその親くらいを指す程度だが、中国人が一般にいう「家族」とは、それに加えておじおば、いとこ、はとこ、さらには祖父母の血筋の親族をすべて含めることが多い。同じ村で一緒に力を合わせて農耕に精を出した時代をそのまま踏襲しており、一人っ子のはずの人が「お兄ちゃん/お姉ちゃんが」などと言う場合、往々にしていとこのお兄ちゃん/お姉ちゃんを指し、あるいはやはり同じように年下のいとこを弟/妹と呼ぶ。

だから、日頃は家族の元を離れて違う場所で暮らす人たちにとって「里帰り」とは、こうした大家族の元へと帰っていくのと同義語で、大家族内の関係が良ければ良いほど故郷は恋しいものだし、逆にその関係が微妙だと帰っていくにもハードルがある。

昨今では都会に家を持つようになってさらっと親だけを引き取って、ふるさとと縁を切る若い世代も少なくない。住み慣れ、付き合い慣れたふるさとを離れて見知らぬ都会に暮らすのは年老いた両親にとってはそう簡単なことではないのは日本も中国も同じはずだが、中国の人は割と親も子もそのへんを割り切れる人が多いような気がする。やはりそれだけ家族の関係が密接、あるいは濃厚だからだろうか。そういう意味で、中国人の「家族」観念にはいつも考えさせられる。

とはいえ、現代社会ではそうしたふるさととの関係や伝統に対する概念も変わりつつあり、2014年春に北京を離れたわたしが知る春節とは、わずか5年の間にまた変化してきていることを感じている。今回はそうした、今年の春節風景を報道からピックアップした。

●「家に帰れない」その理由は

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